完徹
しかし、マジで前の国王とか……諸国漫遊ってのは、ゴトーさんが言ってた行脚みたいなものだったのか? コンツに行ってたのは、たぶん、前の領主がクズだったからだろうな。政治は良かったと報告はあったんだろうけど、実際の現場を見に行ってたのかも。ただ、領主が変わっても町は変わらずだったので、安心してたのだろう。
とにかく、ジョバンニさんの馬が良かったり、悠々と老後を過ごしている感じに合点がいった。
あとは今の国王についてとか、首都の様子とか、客観的に聞きたかったのかと。俺の答えが良かったのかどうかわからないけど。
俺は急ぎグレンツェの入り口まで向かった。「残念だが」といったゴトーさんの言葉から、取引したくないわけではないだろう、という望みがあった。
「連日ごめんな」
マテンロウに囁くと、聞いたのか聞いてないのかわからないが、一層速度が上がった。
*
グレンツェの入り口の門を、リズミカルにノックをしたが、何度か試し、数時間経ってもまったく反応がない。
「パスワードが変更されたのか……」
外部の俺が知ってしまったサインだったし、今のところ俺は拒否されてしまっている。さらに警戒心が強いのだろうから、定期的にノックのリズムを変えているというのは想像できる。
「やっぱりダメか」
工夫を凝らしてみたり、耳を澄ませてみたりしたが、門の向こうに気配がない。たぶん誰かいるだろうし、今の俺の様子をどこかからか監視しているのだろうけど、相変わらず気配を殺している。
「忍耐戦かな……」
誰かが門の向こうか、入ろうとしてる人が通るまで、ここで待つしかないか……。
たぶんそうなるだろうと予測はついたので、リュックも持ってきたしので野営できるセットはある。食料など数日分はある。
体力は、動かなければ完徹3日くらいなら、編集を始めたころの20代にやっていたので、体は17歳の今、余裕だろう。
そう、3日くらい余裕だろうと思っていた。
4日目。
さすがに門からも門の前も、誰も人通りがないと、精神的に疲れてくる。さらに音すらないのは、世の中に一人取り残されているのではないかと思ったりしてしまった。
「う~ん」
自分のため息で、この世に音があることを確認できて安心する。
白い、真っ白い部屋に閉じ込められた人間は、色がないことに恐怖して、壁を殴り、自分の血の色を確認して安心するという話も聞いたことがある。
「それに比べると、全然マシだな」
ネガティブにポジティブ。底辺編集者をしていた俺なら、そこそこ得意なことだろう。もっと不幸な人がいると思うことで、自分をアゲて安心する。卑屈だけど、孤独などの恐怖に勝つのが優先なときもある。
5日目。
周囲は特に代わり映えしない。村の出入り口はここだけって話だったのだけど、本当に他と交流持たないんだなぁ、誰一人行き来がない。
黒い猫や飛脚のキャラのトラックが入るような世界ではないが、物流も無いのか……壁の中で自給自足できるってのは、籠城していると強い。城下町でそういうところもあるよな……あれ、俺、いまどうでも良いこと考えて無くない?
不眠状態もここまで続くと、どうでも良いことを深く考えようとしてしまっている。
食料は昨日切れてしまっているので、満腹で眠くなることはないが、頭がボーっとしているのはしていたり、しなかったり、ほとんどしているような状態だったり、じゃなかったり……あれ? 何の話だったっけ。
意識を振り絞り、門を背中にもたれ掛かった。
「これで、門が開けば自動に目が覚めることができる」
誰か門の向こうで聞いてくれていると願って、呟きながら、様子をうかがっていたが、気を失うように眠りについてしまった。
*
目が覚めたのは、板の間だった。




