ジョバンニさんに報告
コンツに着いた。今日はジョバンニさんはいるようだった。玄関のドアに不在の札がない。ってか、不在表をつける家ってなかなか無いけど、この人なにやってんだか。
「ジョバンニさんいますかぁ~?」
ノックをすると、しばらくして返事が聞こえた。明かりもついてたのでちゃんと中にいたようだ。
「おう、どうした、タナカ」
出迎えてくれたジョバンニさんは、顔が真っ赤で、すでに出来上がっていた。お酒で。
「酒臭いなぁ……」
言葉と共にアルコールの匂いが吐き出されてくる。俺は今17年間禁酒中である。懐かしいけど、今は17歳だ。飲まない。
「おぉ、すまんすまん……タナカも飲むか?」
手にしているビールジョッキを掲げてニンマリとする。
「いや、俺、まだ未成年なんで」
「未成年とはなんだ?」
あぁ、そういうところか……。産湯がビールとかなのか? とはいえ、酒で失敗している俺なので、飲まないし、17歳の体ではアルコールに抵抗できないのはわかっている。
「……それはさておき、ここを通るついでに、聞かれてた件を伝えに来たのですが」
ジョバンニさんに、首都の様子とか聞かれていたので、その報告に来た。
「あぁ、そうだったな。ちょっと散らかっているが、中に入ってくれ」
思い出すのに、一瞬の時間があったが、忘れてはいなかったみたいだ。ドアを開けて、俺を招き入れてくれた。
「おじゃまします」
と、入ってそうそうに荷物が散らかっている。
「なんですかこれは?」
開いたトランクケースと、あふれ出した着替えや何かの道具。
「あぁ、今日までちょっと出かけてたから、その旅の荷物だよ」
不在の札に書いてたけど、やはり「明日帰る」ってのはだったのだろう。数日出掛けている量が溢れている。
「しかし、すごい量ですね」
開いているスペースを探して、なんとかテーブルまで辿り着いた。ジョバンニさん本人は踏みしめながら歩いていたが、俺はさすがに踏めないし。
「1週間くらいかなぁ。思ったよりも時間がかかってな。馬に乗っての移動だったから禁酒してて、だから帰ってすぐに飲んでるわけだ」
ガハハハハ、と豪快に笑う。確かに、1週間の禁酒がつらいのは知っている。まぁ、帰ってきた時間も遅かったのだろうし、俺が来ることもたまたまだし、明日の朝に洗濯するんだろう。まぁ、これは良いか。
ジョバンニさんはビールを注ぎなおし、俺にはお茶を入れてくれた。ゴクっと一口飲んでから、話はじめた。
「まず、首都に行った俺の感想ですが、結構しっかりとした街だなぁという印象でした。店は夜は遅くまで営業していますが、安全なのか客もしっかりと入ってて、千鳥足で道を歩いている者もいる。自警団みたいな若い人たちもいるのであんしんできるのだろうと」
俺が話始めると、酔っぱらいではなく真剣に耳を傾けている。赤ら顔は変わらないが。
「だけど、住民の貧富の差は激しいのではないかと思いました。しっかりとした屋敷に住んでる人がいる一方、バラックのように環境が悪い人たちも少なくなさそう。戦後、国民のために尽力した、と聞いているが、もう少し広く公平にした方が良いのではないかと。まぁ、屋敷に住んでる人には会ってないんですけど……」
そう、俺が主に会ったのは、エルフリーデの母のソフィアさんと、息子のフィン。その生活をしている人たちの割合がどれだけなのかわからないが、国王はもっと理解たほうが良いと思った。
ジョバンニさんはうつらうつらとしているのか、頷いているのか、話を聞いている……様子はうかがえる。
「今の国王についてですが、ジョバンニさんの言った通り、物足りなさを感じている人がいるなと。みんなに好かれているけど、それはできの悪い息子を持った親みたいな感覚で、王としての器は足りてないと思っている人が多いのかも。ちょっとチャラいって思われてるのかもしれないですね」
「チャラい?」
「あ、え~っと、軽薄な感じっぽいって意味です。俺の故郷の言葉でした」
国が変わったから…じゃないだろうけど、微妙なニュアンスを前の世界の言葉で言ってしまい、伝わらないこともある。メモしておこう。
「ただ、個人的には、好かれているのは良いことだと思いますので、サポートできる、国政について考えるブレインみたいな人がいると、国が上手く回っていくんじゃないかなぁと」
まぁそのブレインが国を乗っ取っても、さすがに俺はそこまで責任は持てないけど、象徴がいて、実働部隊がいて。CEO
やCOOやCFOや、それぞれに専門的な人を配置すればよいのではないかと。国王一人がなんでもやれる、ってのは稀有だろう。代替わりして毎回そんな万能人がでてくることは、世界が変わっても無いだろうし。
また少しうつらうつらしている。
「ジョバンニさん、話続けても大丈夫ですか?」
「あぁ、ああ。大丈夫。聞いているよ」
起きてる、という人はだいたい寝ているのだろうけど、まぁ、信じておこう。




