日本家屋、ハウマッチ?
「もしかして、ここの首都の建物って、この村の職人が手伝ったりしてるんですか?」
色々と話をしてふと思ったので聞いてみた。
「あぁ、過去はね。今は修繕がメインで、新規に作ることは、まず無いかなぁ」
やはりそのあたりは徹底しているのか。先の戦争でかかわることを減らしたという部分だろう。だが、原因が色々わかって腑に落ちた。
「だから和風建築が多いんですね」
「ただ、手入れに金も手間もかかるから、昔の家も建て替えるときは和風にしない家も結構いるな」
首都付近は戦場となっていたはずだから、戦火を逃れて築年数を重ねているのは大変なんだろう。よく残したものだと感心する。同様に建て替えるなら手伝っているとうことだろうが、代替わりすると、その想いだけでは維持しないのだろうか。
「俺からすると、すごく懐かしく感じられたので、できれば維持してほしいですね」
「それは勝手というもんだ。時代時代で流行り廃りはあるもんだからな」
ゴトーさんの言う通りだ。俺のノスタルジーはこの世界にまったく関係ない話だ。だけど、惜しい。
「あ! 俺がもし家を持つことになったら、ゴトーさんに平屋の一軒家をお願いすることってできますか?」
外とのかかわりを減らしているということだったのでダメ元だけど、聞いてみたくなった。
「タナカ、お前さんの家か?」
即決断でダメ、ではなかった。俺をじろじろ品定めをしている。身なりはまだ幼いし、年齢も若い。将来性を見ているのか。だとすると、作ってもらうのも望み無くはないのか?
「う~ん」
悩んでくれているぞ! これは、期待しても良いのか?
「う~ん……いや、やっぱりダメだ」
「え~! ダメなんですか? どうしてですか?」
期待させておいて、そりゃないよ……。
「いや、望郷って意味では理解はできる。だが、気軽に「やる」とは言えないってことだな」
「どういうことですか?」
「……タナカは商人ってことだけど、今の稼ぎはどれくらいなんだ?」
「稼ぎですか?」
「あぁ」
なるほど、金額が高いってことか……。はっきりとはわからないが、旅をしてて食うに困らない程度でしかない。メインで扱っているのは蕎麦、牛乳、タピオカあたりだけど、オイレンブルク国内だけでしか流通してないし。商業ギルドに頼んでる国外の利益もまだまだ見えないから。
「旅をしてて食うに困らない程度は売り上げがある感じです」
「そうか……」
なんだか口頭でローンの審査を受けているようだ。あれ? ゴトーさんの時代の日本ってローン制度はあったのか?
「だとすると、やっぱり作ることを約束はできないな」
「そう、ですか……でも、もし、結構稼いだらまた頼んでも良いですか?」
「かまわんが、払えるのか?」
「え~と、ローン払いってありですか?」
「ろーん?」
「あ、えっと、月々分割払いみたいな?」
「それはこの世界ではやってない制度だな。お前のいた時代ではあるのか?」
「えぇ、家を買う時はだいたい分割払いでしたよ」
「そりゃ貸す方も借りる方も覚悟はいるな」
「ゴトーさんの時代なら、質屋みたいなもんですよ。土地を担保に金を借りて、利子をつけて月々返す。って具合に」
「ふ~む、そうか……だが、この世界では現金一括払いだから、それは無理だな」
「残念です」
そっかぁ……この世界にはローンの制度が無いのか。いやいやいや、金融はさすがにやれる自信がない。ないけど……頭の片隅に入れておこう。たぶんやらないけど。
「ちなみに、現金一括って、おいくらくらいなんですか?」
「今は職人も減ってきているから……最低1000万ベルは必要になると思ってたら良いかな」
「え!? 高……い」
「だろ? だから作ってやると気軽に言えんのだよ」
「ということは、お金があれば作ってくれるってことですか?」
「まぁな、同郷のよしみって考えると、それくらいはやらんわけにもいかんだろう」
グレンツェの領主であるゴトーさんが、自分の考えを曲げてくれる方が貴重かもしれない。お金は、頑張って貯めれば、可能性はゼロではない……かな。
「チャンスはあるってことですね!」
「ちゃんす? タナカは時々わからないことを言うな」
「すみません。ローンとかチャンスってのは、さっき話してた外国語ってやつですよ」
「そうか……覚えることが多くて大変なんだな」
「です……ね。結構大変でした」
ゴトーさんのいた江戸時代は、鎖国政策だったから、中国とオランダくらいしか国交が無かっただろうし、庶民には関係のない世界だったのかもしれない。
情報量で言うと、俺がいたころの日本人1日分は、江戸時代の1年分、平安時代の一生分というのを聞いたことがある。しかし、キャパは変わっていないので、出し入れできる手段が進歩したってことだろうか。もしくは江戸時代に使ってた言葉に置き換わって、外来語を使ってるだけなのだろうか。もう少し歴史も勉強しておけばよかったと後悔している。
「とにかく、わかりました! なんとか1000万ベルを稼ぎます! だからその時は、家、建ててくださいね! 約束ですよ!!」
「お、おう、わかった。だけど、土地はまた自分で用意しろよ」
「そうですね……」
たしかに土地もいるよな……。それは旅をしながら、ゆっくり考えれば良いか。




