路地裏で
連れてこられたのは、さっき聞きに回っていたバルの一つ、の店の裏だった。
裏道はどん詰まりになっていて、ここで何かされるのかと思って、一層警戒した。しかしそれは意味がなかった。
「なぁ、俺ってそんなに人相悪いか?」
チンピラ風の男が仲間内に言っている。そして仲間たちからは、「今更?」「人相良いと思っているなら家の鏡がゆがんでいるな」と散々なことを言われている。
「好き勝手言いやがって……さてお二人さん、ソフィアさんを探してるってことだったが?」
「えぇ、探しているわ」
「だったら、ここで店が終わるのを待っていると良い」
「どういうこと?」
「そんなすぐに種明かしされてもつまんないでしょ?」
何を意味しているのだろうか意図がわからない。この男は悪いやつなのかどうなのか。俺たちが警戒を解かないところを見て、それはすぐに伝えられた。
「ふぅ……あまり言いたくはないけど、知らない街で目立つようなことをしていると、犯罪に巻き込まれちゃうぜ?」
「あなたのように?」
こういう時に気丈にふるまえるエルフリーデに頼ってしまう俺、かっこわるい。
「いやいや、俺は良い人だ」
「自分で良い人って言う人は、だいたい良い人ではないよ?」
「いや、良い人なんだよ。ほれ」
男がそう言って見せてきたのは、街のガーディアンである証拠のワッペンだった。
「……この街の?」
俺は目を疑ってワッペンと男の顔をなんどか往復して見た。正義の味方には見えない。
「ふぅ……」
また男は深いため息をついた。
「君たちが色々と探っているというのを聞いたんだよ――」
俺たちが重要な人の名前を知っていて、聞きまわっているという情報がガーディアンに入ったと。そしてこのバルの店員からの依頼で探して確保してほしいと。
ガーディアンは街からの依頼で犯罪を未然に防ぐ活動をしているとのこと。首都で賑やかだと犯罪も増える。だが、深夜でも酔っ払いが路上で寝たり、子供も出歩けるのは、彼らガーディアンがいるからとのことだ。
つまり、俺たちは守られたとのことだった。
「でも何で俺たちはこんな裏道に?」
「お嬢さんがいると聞いたら、できるだけ守りやすいところにいてもらたほうが俺たちも楽なんだよ」
つまりどん詰まりの裏路地なので、警戒すべきは1方向で済むということらしい。
「まぁ、そういうことなので、あと少しで店が終わるはずだから、もうちょっと大人しくしててもらって良いかい?」
このチンピラ風の男が言うのは筋が通っている。たぶん大丈夫だろうと思うしかない。鍵はこの店の店員が持っているのは間違いなさそうだ。
エルフリーデに、警戒しつつ待とうということで結論が出た。
「一応、お礼を言っておくわ」
「それはなにより。それじゃあ俺は行かせてもらうけど、逢引するには悪くない場所だから。だけど、部下を二人置いておくから、そのあたりは加減をしてもらえるとありがたいね。部下が悶々としない程度に」
余計なことを一言二言言って、その男はその場を去っていった。
「え~っと、もうちょっと俺は強くならないとね」
「あ、いや、大丈夫よ。私も頑張るから」
「……」
「……」
裏路地出口で警戒してくれているガーディアン二人がクスクス笑い、気まずさだけ残った。




