41. ドラゴン姫、再び
…えーっと、これはどういうこと?
小さな可愛らしいドラゴンが、何故に私と同じベッドで寝ているの!?
うん。だが、この色、この大きさ。
やっぱり、このドラゴンって、ライザ…だよね??
確か、前に見たのは7年も前だというのに、全く姿が変わっていない。
7年経っても、枕と同じ大きさ! 小さいままだよ!? 可愛いな!
私が10歳の時、アンデッド王国初となる飛翔船発着場の工事現場で、1度だけ会ったことがある。
このドラゴンは、あの時出会った、ドラッフェン王国の第二王女でエドゥー王子の妹、ライザ姫にそっくりだ。
あの時の事は、ドラゴンを見るのは初めてだったし、かなり衝撃的な出来事だったから、今でもしっかりと覚えている。
エルフの…『ルルさん』だったかな? 当時のライザ姫はテイマーである彼女にテイムされていて、竜人族の王女であることを隠して、低級のドラゴンの振りをして、追手に見つからないよう、身を潜めていたんだったな。
はて? どうしてここに、ライザ姫が!?
指でツンツンとつつくが、起きる気配はない。
調子に乗ってそうっと撫でてみると、ドラゴンの肌はザラっとした硬い鱗が全身覆っていて堅そうだが、押すとグニッと凹んで、弾力があるのが分かった。
顔の周り、首から上は、白地に青の模様が入った小さな鱗が、体部分よりも細かくびっしりと並んでいる。
小さく輝く鱗の緻密な羅列は、精巧に作られた芸術品のようだ。
「うわあ、綺麗ねぇ…」
首の鱗を撫でていると、ドラゴンはムニャムニャと口を動かした。
「フーン、グリュングニュ…(うーん、もっと食べたーい…)」
ドラゴンは口をもぐもぐさせながら、よだれを垂らす。
枕がよだれまみれになった。
お腹が空いているのか、枕をガシガシとかじり始めた。
それでも、まだ起きない。
起きないのをいいことに、ここぞとばかり、背中についた羽を広げては、しげしげと眺め、小さな足を持ち上げて足の裏の感触を確かめる。
アンデッド王国に生息していないドラゴンにお目にかかれるなんて、滅多にないこと。
目の前の無防備なこの子は、絶好の観賞対象だ。
興味津々で鼻息荒く触りまくる。
はあ、可愛いわねぇ。癒されるぅ。
ここ神樹レスポート王国に来てからは油断の出来ないストレスの溜まることばかりで、癒しが足りていなかった。
元々、私は大の動物好きで、前世の実家では犬を飼っていて、よく世話をして可愛がっていた。
だが残念なことに、この世界の動物や魔獣は、魔力の少ない者にはあまり懐かない。
理由は分からないが、そういう仕様なのだ。
アンデッドは全員、魔法を使えるほどの魔力を持っていないので、どうしても必要な馬くらいしか家畜を飼っていないし、ペットとして動物を飼う習慣がないのだ。残念なことに…
ほうほう、なるほど…、こんな感触なのね。
足の裏には肉球はなくて、鳥の足のように、硬くて節がある。
今度は尻尾を持ち上げて、付け根をにぎにぎと握った。
おおっ、暖かくって弾力がある!
「ピッ! ピグリュリューーー!?」
「わあっ!」
ドラゴンは女の子っぽいけたたましい叫び声を上げると、ガバッと起き上がってキョロキョロと周りを見回した。
私と目が合うと、ジロリと睨む。
体が眩く光出して、眩しさに目を瞑っている間に、さあっと姿を変えた。
頭に2本の角を生やした、美しい青と白が入り混じったサラサラのストレートヘアーの美少女が、裸でベットの上に座っている。
「ちょっとー! 人が気持ちよく寝てるってのに、勝手にベタベタ触らないでくれる!?」
ムッとふくれっ面で睨みつけてくる金色の瞳は…やっぱり、ライザだ!
昔見た時より成長して、大人の女性に近づいている。
「ご、ごめんなさい、つい…。ライザ、久しぶりね。…でも、どうしてここに?」
「ふふん、イザメリーラ、元気そうじゃない。あなたの匂いがしたから、窓から会いに来てあげたのよ。そしたらぐっすり眠ってたから、私もついつい寝ちゃったのよ」
その時、部屋の扉が勢いよく開いた。
エミリが血相を変えて部屋に飛び込んでくる。
「姫様…!? 先程の叫び声は!」
そして、ライザを見て固まった。
「あ、あなたは…ドラッフェン王国の!?」
美少女の裸は目のやり場に困るので、シーツを巻き付けてから、ライザから事情を聞いた。
宿屋の階下には数人の男性の声がしている。
ドラッフェン王国の第二王女で、竜人族であるライザは、相変わらず、エルフのルルさんの元で低級ドラゴンの振りをずっと続けているらしい。
ルルさんはテイマーとしてドワーフらと共に世界のあちらこちらに呼ばれて、建築の仕事をしている。
たまたま今回、神樹レスポート王国から依頼を受けて、迎賓館の改装工事や新たな施設の建設に携わっていたようだ。
本日のメインイベントの花火も、彼らが設営したらしい。
終わり次第、至急この宿屋の修繕と改築に取り掛かって欲しいと、3日前に依頼を受け、今朝、彼らと共にやって来た、ということだった。
ここ神樹レスポート王国は魔道具の持ち込みが禁止されているが、それは彼らも例外ではない。
だから、昔ながらの人海戦術で地元の人達と協力しながら、魔道具を使わず、すべて手作業で行わなければならなかった。
せっかくグノーの技術で進化した魔道具も持ち込みが許されず、人の手と動物や魔獣を使っての大変な作業だったようだ。
「もう、か弱い私でさえも、こき使われて大変だったんだから! ほんと、ルルったら竜使いが荒いよねー」
口を尖らせて文句を言うも、口調がどこか甘えている。
ルルさんとは、今も仲良くやっているようだ。
黙って聞いているエミリの顔をふと見ると、なんだか顔色が悪い。
あのゲームの通りなら、まさに今夜、ライザの兄エドゥーの身に災難が降りかかる。
そんな時に彼の妹がちょうど現れるなんて、タイミングが良すぎてちょっと気味が悪いくらいだもんね。
あまりにタイミング良すぎて、警戒してる?
もしかして、ライザは何か知っているのだろうか…?
気になったから、それとなく尋ねてみることにした。
「…ねえライザ、話は変わるけど、あれから追手は大丈夫だったの?」
「ああ、うん! 大丈夫だったわ。あなたからもらった守りの魔石も使わずに済んでるしね」
「そうなの…。あ、あの、国王から命を狙われてるのよね? それは、ご兄弟からも…なの?」
ライザはフルフルと首を横に振った。
「ああ、でも確かに、姉さまは私が邪魔だと思う。もし見つかったら、やられるだろうね。でも、兄さまは違うわ。私が国外に逃げ出せたのは、兄さまのお蔭なの。兄さまと兄さまの従者のパッチが手引きしてくれたから、なんとか脱出できたのよ。二人がいなかったら、私は今ここにはいなかったでしょうね!」
なぜか誇らしげに胸を張り、うんうんと頷く。
チラリとエミリを見ると、相変わらず顔色は悪い。
ライザは今、この国にお兄さんが来ていることを知っているのだろうか?
聞こうと思ったその時、階下から女性の声がした。
「あ、ルルが呼んでる! 行かなくちゃ! じゃあ、またね、イザメリーラ!」
ライザは笑顔で手を振ると、ドラゴンの姿に戻り、パタパタと羽ばたいて下へ降りて行った。
見送るエミリの表情は、相変わらず暗い。
「ねえ、どうやら今日、被害に会うのは、パッチさんって人のようね、昔と従者が変わってなければ、だけど。…で、どうなの? 上手く助けられそう?」
エミリはハッとして振り向くと、ドン!と胸を叩いた。
「ええ、ええ、もちろんですとも! 万事順調に事は運んでおります! 姫様は全くご心配無用ですからね! すべて私どもにお任せください!」
いやいや、エミリ? いつもと様子が違うよ?
普段はもっとおしとやかに、私の前では上品な振る舞いをしているのに、今日はやけに元気がいいな!
不自然過ぎて気になるよ!?
ジイッと見やると、「あらあら、朝食はまだかしら?」なんて言いながら、私の世話をほったらかして下へ降りて行ってしまった。
エミリは意外と演技力がないのかな?
いや、突然のライザの登場に気が動転して、上手く隠せなかったのかもしれないけれど。
ゲームの中でエドゥー王子は、なかなか気難しい性格をしていた。
彼の性格上、格下と思っているアンデッドの言う事なんて聞いてくれそうにないんだよねぇ。
レンバートやエミリがそれとなく声掛けしてくれたんだと思うのだけど、多分、全く聞く耳を持たなかったんじゃないかなぁ。
ライザとは少しだけど知り合えたし、お兄さんのエドゥーの事は嫌いじゃないみたいだし、悲しい結末は避けたいんだけどね。
私はハァとため息をつくと、エミリが用意してくれた衣装に着替え始めた。
髪を整え身支度を済ませて下へ降りると、ドワーフら数人とエルフのルルさんが、揃ってザザッと一斉に頭を下げた。
ライザはルルさんの肩に乗っている。
彼らのリーダーらしき年配のドワーフが朗々と挨拶を述べ、私達の邪魔にならないように、速やかに工事を行うと約束してくれた。
私はそれに頷いて、彼らにすべて任せるからよろしく頼むと微笑んだ。
ドワーフらは顔を赤らめてホワッと表情を緩めたが、ルルさんだけは驚いたように目を丸くしている。
「昔、アンデッド王国でお会いしましたね」
それに気付いて私が声を掛けると、ルルさんは驚いてピョンと飛び上がった。
「は、はい、やっぱりそうでしたか! ま、まさか王女様だったなんて…。あ、あの時は失礼しましたー!」
急に体をくの字に曲げたので、肩に乗っていたライザが落ちそうになって、肩にぶら下がった。
「あの時は、その可愛らしいドラゴンと遊べて、大変楽しかったわ。どうもありがとう」
私がドラゴンを見ながら微笑んで言うと、ルルさんは頭を深々と下げ、ドラゴンを掴んで目の前に差し出した。
「こ、こんなものでよろしければ、いくらでも遊んでやってください! どうぞ!」
えっ!?
ドラゴンはびっくりした顔を一瞬見せた後、不機嫌そうにルルさんを振り返った。
頭を下げたまま両腕をピンと前に伸ばし、ドラゴンを差し出した状態のまま固まってしまったルルさんに困って、渋々、私はドラゴンを受け取ると、両手で抱えた。
「あ、ありがとう。では、少しお借りするわね」
「はい、はい、どうぞ! 少しと言わず、たっぷりとお借りください!」
ルルさんの言葉がおかしいのはスルーした。
私達が出かけた後に工事を始めるという事で、いったん、ドワーフらとルルさんは宿屋から出てどこかへ行ってしまった。
ライザを残して…
私はライザを膝に乗せ、一緒に朝食を頂いて、馬車に乗って迎賓館へと向かった。
あれ?
連れて来ちゃったけど、良かったのかな?
ドラゴンを抱いたまま馬車から降りると、遠くから男性の怒鳴り声が聞こえてきた。
「フン、貴様、世界樹の巫女だと思えばこそ下手に出ているというのに、調子に乗るなよ!!」
興奮した、可愛らしい女性の声も聞こえる。
「まぁ! 私は調子になど乗っておりません! 何度もご説明申し上げておりますでしょう!? すでに他の方と花火を見るお約束をしているのです!」
「フン、くだらぬ他の男との約束を優先して、私の誘いを断る行為が、調子に乗っているというのだ!!」
痴話喧嘩でもしているのかな?
犬も食わない喧嘩には巻き込まれたくないので関わりたくないのだが、生憎、2人は私の進行方向の先にいる。
迎賓館入口へ向かうには、この道をまっすぐ進むしかない。
喧々轟々と言い合いを続ける男女に近づいてみると、なんとそれはオリアナ姫と竜人族の王子エドゥーだった。
それを見たライザが、けたたましい叫び声を上げた。
「ピギャーーーー!! ピ? ビジュルルッギュ!? バギュギュザジー!? ビジュルバギュギュザジー!!(は? なんで兄様がここに!? 聞いてないしー!? 兄様がいるなんて聞いてないしー!?)」
ドラゴンの姿のライザは私の手の中から飛び出すと、たちまちどこかに飛んでいって姿を消してしまった。
「あっ!」
呼び止める暇もなかった。
お兄さんとの仲は悪くないようだし、隠れる必要はないのかなぁと思ってたけど、そういえば彼の護衛らも一緒だから、彼らに見つかりたくないのかもしれない。
あれ? そういえば、オリアナ姫の周りにいるいつものメンバーは?
キョロキョロと周りを見回すと、2人から少し離れたところで遠巻きに見ているマテウス、リパーフ、ギュレス、フローという、いつもの王子らの姿があった。
怒ったエドゥーがオリアナ姫に掴み掛かろうとしたところで、見ているだけだった王子らがエドゥーの体を捕まえて止めた。
エドゥーは不満そうに大きな声を上げると、腕を大きく振り回して王子らを振り払った。
そして、やっと諦めたのか、ずんずんと大股で歩き去る。
怒りの表情でこちらへと向かってきた。
プライドの高い彼は、誘いを断られた事に、相当怒りを覚えたらしい。
彼の横を通り過ぎる者達は、少し脇へ避け、目が合わないようになんとなく明後日の方へ目をさ迷わせている。
エドゥーはライザと同じ白地に青色が混ざったサラサラヘアーの、大変な美丈夫だ。
瞳の色も金色で、ライザと色合いは同じなのに、受けるイメージは全く違う。
ライザのクリッとした愛らしい瞳とは違い、エドゥーの瞳は何者かを射殺そうとしているのかと思うほどの、鋭い眼光を放っている。
「うん? 何だ!?」
こちらに近づいてきたエドゥーが、何かに気づいたように足を止める。
そして、ギロリと私に目を向けた。
「この匂いは…!?」
彼に付き従っていた、従者らしき若い男も、あれ?という顔でこちらを見た。
気付かないふりで明後日の方を向いて通り過ぎようとしていたのに、エドゥーは遮るように私の目の前に立ち、前方を塞いだ。
知らない振りで通り過ぎるのは不可能のようだ。
恐る恐る顔を上げると、鋭い金色の瞳が私を見下ろしていた。
端正な顔の眉間に深いシワを寄せ、少し戸惑った表情を浮かべている。
こういう人を見下すような威圧的な雰囲気を持つ男性は、苦手だ。
大声で怒鳴られようものなら、トラウマになって夢に見て、うなされそう。
ああ、もう~~!!
さっきまで腕の中にライザを抱いていたから、何か気配を察知されてしまったのだろうか!?
内心焦って冷や汗かきまくりなのだが、そんな心の中は微塵も表に出さず、私は胸を張り、堂々とした態度でエドゥーを見返す。
国の代表なんだから、精一杯の矜恃を示さなくちゃね!
「…貴様は、アンデッドの王女か?」
「はい、ご挨拶が遅れ申し訳ありません殿下。イザメリーラと申します。どうぞお見知り置きを」
私は目を伏せ、淑女の礼をとった。
エドゥーは何かを考えるように眉間にしわを寄せたまま、黙ってイザメリーラを見下ろしている。
「どうかなさいましたか?」
頭頂部に視線を感じ、恐る恐る聞いてみる。
ああ、どうか気づかれませんように…!
「…いや、何でもない。私はエドゥー・ドラッフェンだ」
エドゥーは諦めたように首を振り、ため息をつくと、そのまま通り過ぎようとして立ち止まる。
そして、まじまじと私の上から下までをじっくりと眺めた。
「…何か?」
僅かに口角を上げたエドゥーの顔に嫌な予感がして、薄ら寒いものを感じた。
「フン。オリアナ姫の相手とやらは、どうせお前の婚約者なのだろう。捨てられるとは哀れな女だ。貴様のような女はどうせ誰からも誘いを受けてはおるまい。夕刻迎えを出す。ありがたく思え」
んん? 迎え? なんのこと?
困惑の表情で見上げる私に、エドゥーは横を向いて、どうでもよさそうに告げた。
「醜女が私と並ぶのを許そうというのだ! 頭の悪い女め!」
なんと返していいか分からず、ますます困惑を深めた私に、エドゥーの後ろに控えていた彼の従者がズイッと出てきて、こうべを垂れた。
エドゥーほどの美男子ではないものの、ニコッと笑顔を向ける従者は、純朴そうな明るい印象の、エドゥーとは正反対の好感が持てる青年だった。
この人が、パッチさん?
「我が主は美しいアンデッド王国王女様とご一緒に、花火をご覧になりたいと、そう申しております」
「…はい?」
私の眉間に皺がよったのを見て、従者はさらにニッコリ微笑むと、私の手を手袋をした手でそっと取った。
「お心細い思いをしておられます王女様に、差し出がましいとは存じますが、夕刻、馬車を用意させますので、ぜひ、こちらにお越しいただきたいのです。花火が上がる短いひと時ではありますが、麗しい姫君と共に過ごせるなら大変に嬉しく思う…と主は申しております」
そして、綺麗なお辞儀。
はあ!? いやいや! そんなこと、さっき、ひとっ言も言ってないよね!?
エドゥーを見ると、従者の言葉は耳に入っていないかのように、ツンとそっぽを向いている。
しかし、この距離で聞こえないわけないし、否定をしないということは、彼の言っている通りってこと?
いやいや、マジか!?!?
従者の慣れた様子からすると、いつもこの2人はこんなやり取りをしているのだろうか?
王子の横柄な態度で外交軋轢を生まないように、従者はいっつもこうして彼のフォローをしてるってこと?
いやいや、そんなことはどうでもよくって、ちょっと待ってよ!?
今、花火を一緒に見ようって誘われたんだよね!?
待て待て! その場に私がいたら、モロに事件に巻き込まれてしまうじゃないか!
ゲームの通り、怒りで我を忘れたエドゥーの暴走に巻き込まれて死亡!って道を辿るんじゃないかな!?
ここは、しっかりキッパリお断りしなければ!!
「お誘いは大変嬉しく思います、ですが…」
悲しげな表情を作りながら断りの文句を告げようとすると、ギリリ…!と大きな歯ぎしりの音が聞こえた。
ハッ!と見上げると、恐ろしいお顔が私を見下ろしていた!
ひいっ! こ、殺されるーーーっ!!!
「まさかとは思うが、アンデッドの王女よ。私の誘いを断るのではあるまいな?」
静かに怒りの表情で告げられた言葉に、心臓がギュッて掴まれた気がした。
目を合わせていられなくて、私は震えながら、ぎゅっと目をつぶる。
「あっ、あの、いえ、あの、そのですね…………………謹んで、お受けいたします」
震えながら言った自分の言葉に、私自身が驚いてしまう。
うわ、ちょっと何言ってるの!? 今のなしー!!
恐怖で思わず誘いを受けてしまったー!!
………って、何やってんだよ、私。