40. エドゥー・ドラッフェン
「これで大丈夫だと思う?」
「まだはっきりとは言い切れませんが、アンデッド王国の危機は脱したとみてよろしいかと思います」
私の問いに、エミリは神妙な顔をして頷く。
宿屋の自室で身支度を整えながら、迎えの馬車を待っていた。
ここ神樹レスポート王国に国賓として招かれた王族は、全員が迎賓館で寝泊まりしているが、部屋数が足りなかったため、私だけ毎日、離れたこのおんぼろ宿屋に泊まり、馬車に乗って迎賓館まで通わされている。
私は初めから冷遇されていた。
大勢の招かれた王族らの中で、アンデッド王国の私達だけが粗末な宿へ移るよう言われた。
宿屋から迎賓館までは、歩くには遠すぎる。
なのに、初日は迎えの馬車さえ来なかった。
自力で馬を調達し、なんとか時間までに迎賓館へ行く事が出来たが、リパーフ王子に絡まれたり、ジェイド王から厳しい対応をされたり、用意された席が隅っこで明かりもなかったりと、散々な目に会った。
だが、悪い事ばかりだったわけではない。
昔と違って今は、アンデッド王国も国民も、大きく様変わりした。
神様からもらったスキルが薬作成能力だったため、美容薬を作って国民に広めた。
薬を使ったアンデッドは見た目が大きく変わり、ゾンビっぽさがなくなった。
特に今回参加したマテウスやレンバート、エミリは、たまたまなんだけど、アンデッドとは思えない、特に優れた美貌の持ち主たちだ。
アンデッドに偏見を抱いていた王らは彼らを見て、少しは認識を改めてくれたのではないかと思っている。
私が作った薬を使ってくれている方達には歓迎されたし、感謝までされて大変嬉しかった。
人の役に立つのは、本当に気持ちがいい。
世界樹のある森で蜂の魔獣に襲われた一行を、私の薬で助けるなんて事件も起きた。
予期せぬトラブルだったけど、薬を使ったことのない方達にも、効き目を知ってもらえたし、いい宣伝になった。
刺されたり怪我をした人たちには申し訳ないけど、私達にとってはラッキーな出来事だったかも?
それから見る目を変えてくれた人もいたようだしね。
そして今回、大変な目に会うのを承知で、この国にやってきた理由、やっかいな王子らからアンデッド王国を守る使命を持って乗り込んで来た私達は、どうやら目的を果たすことが出来たらしい。
まあ、主にマテウスのお蔭なんだけどね。
見事、オリアナ姫のハートをゲットしてくれたマテウスに感謝だ!
私達、そして国に残る協力してくれた貴族らの苦労も報われたってもんだよ。
たとえ、腕の肉をライオンに食われたとしても(これは、オリアナ姫の癒しの魔法で完全に治癒)、現在、ボロボロの大きな穴が何個も開いた風通しの良い宿屋に泊まらされていたとしても、ぜんぜん苦にはならない。
ただでさえ小さくて古くておんぼろなのに、今は2階の6部屋ある客室のうちの2部屋が外壁と廊下側の壁、両方が大きく損壊していた。
昨夜はオリアナ姫やベスティア王国から招かれた二人とマテウスが滞在し、私はエミリと護衛と共に、森の中に立てられた小さなテントの中で過ごした。
慣れないテントでは充分に休むことは出来ない。
たとえ穴開きのボロい宿屋であっても、ここにはベッドがある。
今日はもう一歩も外へ出たくなかった。
だが、むやみに行事をサボるわけにはいかない。
熱を出して、すでに一日欠席しちゃってるし。
国を代表して参加しているのだ。アンデッドによくない感情を持っている国々の王族に、これ以上悪い印象を与えないよう、真面目なところを見せなければ。
寝不足くらいで休むわけにはいかないのだ。
それにしても…朝っぱらから、ぼんやりした頭をフル稼働させねばならぬ事態が連発したけど、対処は大丈夫だったかなぁ…?
もう今朝はまず、リパーフ王子から改めてがっつりプロポーズされて、それをスッパリと切れ味鋭くお断りした。
その後は、何故かガオザン王子からまで、花火大会を一緒に見ようとお誘いを受けた。
こっちも婚約者がいることを理由にやんわりと断ったのだが(リパーフ王子と違って、ガオザン王子は根に持ちそうで怖かったから、ソフトにね)、諦めた様子がなかったから、もしかしたら、また誘われてしまうかもしれない。
なにしろ肝心な私の婚約者様は、花火大会をオリアナ姫と一緒に見る約束を交わしている。きっとすぐに知られてしまうだろうしなぁ。
そうなのだ!
オリアナ姫は花火大会にマテウスを誘ったのだ!
それは、6ルートある内の、マテウスルートに入ったということ!!
神様のゲームの中では、一旦ルートに入ったら、他ルートへの変更は出来なかった。
三日後、オリアナ姫とマテウスが一緒に花火を見るイベントが終了すれば、他の王子と結ばれることはもうないはず!
「この先、竜人族のエドゥー様が暴れられて死者を出してしまったとしても、名誉挽回を狙ってアンデッド王国に宣戦布告するような真似はしないかと。オリアナ姫様の伴侶という強い後ろ盾がない以上、他国に戦争を仕掛けるなどという無謀なことは、なさらないと思いますわ」
「うん、そうよね」
エミリの言葉に、私は期待を込めて頷く。
―――ドラッフェン王国。
古から続く竜人族が住むその国は、そこから逃げ出した王女ライザ姫が言う所、王をはじめ閣僚たちは全員、揃いも揃って脳筋族の集まりらしい。
自国に何かしらの問題が起きれば、すぐに他国へと攻め入り益を得ようと話が盛り上がるのだそうだ。
とにかく何でもかんでも武力で解決しようとするお国柄だそうで、自国の王女でさえ大した理由もなく殺害しようとする凶悪ぶりだ。
強固な肉体と強大な魔力を持つ竜人族に攻め入られれば、弱小国など簡単に彼らの手の中に落ちてしまうだろう。
だが、話に上がったとして、その都度戦争を起こしているわけではない。
むやみやたらに理由もなく攻め入ったりしたら、第三の国々、国際社会が黙っていないからだ。
いくら彼らが強くとも、全世界を敵に回すことは出来ない。
彼ら以上に強大な魔法を操る悪魔が住む国々や、戦闘に優れる獣人、魔道具兵器を持つドワーフ、ドワーフから武器を仕入れ軍備を強化する国々、人間の治める国であっても魔導士の軍を持っていたり、彼らに対抗するだけの高い軍事力を誇る国は他にもあるのだ。
ずうっと昔、アンデッド王国の前身であるメイツ国が滅ぼされた300年前ならいざ知らず、現在のこの世界は、とりあえずはいくつかの強国がお互いを監視するという微妙な均衡の上に平和が長く保たれている。
前世の地球では世界の各地で紛争が絶えなかったことを思えば、こちらの世界の方が現在は平和だ。
魔法が使えず、強靭な肉体も持たないアンデッドの住む国が、300年もの長い間無事でいられたのは運が良かった。
だが、他に理由がある。
悪魔の中でも特に強い魔力を持つ悪魔が住む国、ガオザン王子、キフェル王子の祖国ザータン王国。
この国の悪魔は人の魂を好物としていて、大昔は人間の魂を奪って食っていたため、恐れられる存在であった。
だが、ある代のこの国を治める王が、悪魔と人が共存する道を選び、人から魂を奪う行為を厳しく禁じた。
欲望を押さえこみ、世界の平和と安定を目指す未来へと舵をとったのだ。
他の国々もザータン王国の影響を受け、それにならったせいで世界は安定したと歴史で教わった。
その他の理由として、アンデッドは薄気味悪い見た目とにおい、それに弱者であるゆえに蔑みの対象であったが、戦争ですべてが失われ無となったにもかかわらず、神の力によって奇跡的に復活を果たした国として、一部の人々の間で神聖視されてもいた。
なんとなく気まぐれに手を出せば、神の怒りを買い、恐ろしい目に会うかも? バチが当たるかも? と思われていたようだ。
まあ、そんな理由で、アンデッド王国は300年の間、無事でいられたわけだ。
「オリアナ姫と恋仲っていう事情がなければ、むやみに手は出せないってわけよね?」
「そうですね。オリアナ様は、存在自体が貴重なお方ですから…。あのお方の敵とみなされれば、何をされても文句が言えなくなってしまいます。ですが、ゲームの中と違って、姫様はオリアナ様の敵ではありませんし、エドゥー様はオリアナ様の特別ではありませんからね」
この世界になくてはならない存在。
世界樹を支える、たった一人の貴重な存在。
それが、オリアナ姫なのだ。
ゲームの中で何も理解出来ていなかった、箱入りで愚かなイザメリーラは、彼女を羨み、いじめた。
口汚く罵ったりはしたが、大した嫌がらせではなかった。
王女であるイザメリーラならば、それほど問題にはならない行為。
けれど、アンデッド王国が滅びるのに充分な理由だった。
相手が、オリアナ姫だったから…
アンデッドは世界の害悪。オリアナ姫は世界の最上。
それが世界の常識なのだ。
「…というわけで、今回は大人しくしていてくださいませね」
エミリは可愛らしくニッコリと微笑んだ。
美女の可憐な微笑みだ。
はぁー、かわいい。
なのに、何故だか背筋がゾクッとした。
あれあれ? 笑顔がコ、怖い!
「うっ! で、でもね、エミリ…あの…ごめんなさい? どうしても、その…」
迫力のある微笑みに完全に押されて怖気づいてしまったものの、ここは引き下がるわけにはいかない!
ゴニョゴニョと必死に言い募る私に、エミリは目を閉じて大きなため息をついた。
「…はぁ、もう、いいです、諦めておりますから。誰も彼も、無関係な人たちまでも助けたいのですよね、姫様は。まったく、ほんとうに節操無しのお人好しなんですから。もう、仕方ないですから我々で何とかいたします! ですから、今回はくれぐれもお手を出されず、大人しくしていてくださいませね!?」
「う、うん! ありがとう、エミリ!」
私は呆れている可愛い侍女にぴょんと抱きついた。
一見するとスタイルのいい、華奢な体に見えるのに、大人になった私が飛びついてもビクともしない。
私の侍女は美しくて強いのだ。
最高です!
でも、大丈夫だろうか…?
ゲームの中で、エドゥー王子の暴れっぷりは凄まじかった。
巨大な足で人を踏みつけ、口からは獄炎の炎を吐き逃げ惑う人々を焼き殺し、建物をも破壊し大暴れをして、凶暴な竜は広範囲を廃墟へと変えた。
イザメリーラも犠牲者の一人だ。
それは花火大会の当日、オリアナ姫との待ち合わせ場所に先に着いたエドゥーは、花火開始とオリアナ姫を待っていた。
そんな刹那に起こった。
夕闇の中、大勢の人々が楽し気にそれぞれ花火が見やすい場所へと移動し、今か今かと心躍らせ開始を待ちわびていた。
エドゥーはオリアナ姫が指定した丘の上に従者らと共に立っていた。
この辺りは人払いされているのか、誰の姿もない。
その時、背後に立つ彼の護衛の一人が、腰に差した剣を抜き、エドゥーに襲い掛かった。
横にいた従者が、エドゥーを庇って剣で胸を貫かれる。
とっさのことに反応が遅れたエドゥーは、もう一度突き出された剣をわき腹に受ける。
血を流しながら、自身の護衛として常に一緒に居た男の顔を見た。
長年、彼に仕えてきた馴染みの近衛騎士だ。
信じられない思いで男に問う。
「なぜ…このような事を…?」
「すべては、カルツィ姫様のため!」
「カルツィ…姉上の指示か!」
男はニヤリと笑う。
寡黙で表情が乏しいと思っていた男は、口角を上げ、ギラギラした目をしていた。
足元には幼き頃より傍に仕えてくれ、友と思っていた幼馴染の従者が転がっている。
彼は動かない。
胸から流れる血が大きな血だまりを作り、自身の腹から滴り落ちた血と合わさり、血だまりは大きくなっていく。
「…いつからだ?」
腹の傷を押さえ、怒りに震える声で、エドゥーは問う。
魔力の渦が、エドゥーの頭上にもうもうと立ち昇り始める。
王子から発せられる魔力のオーラに当てられ、対峙する男は全身が震えだした。
だが、グッと手に力を込め、剣を握りこむ。
「そんなのは、初めからだ! 初めから、カルツィ姫が女王になられることは決まっているのだ!」
叫んだ男は勢いよく、もう一度と剣を王子へと突き立てた。
だが、剣先は魔力のオーラと硬い鱗に遮られ、傷をつけることは叶わない。
ガキン!と大きな音を立て、剣は砕けた。
エドゥーの体はいつの間にか、全身、白地に青の模様の入った硬い鱗に覆われていた。
人の姿から5メートルほどの巨大なドラゴンへと、みる間に姿を変えていく。
大きな翼を広げると、さらに3倍もの大きさに見えた。
壊れた剣を放り投げた男も、自身を赤いドラゴンの姿へと変えた。
だが、エドゥーの半分ほどの大きさにしかなれない。
怒りに狂ったエドゥーは大きな咆哮を上げると、長い尾を鞭のように荒々しく振るった。
目の前にいる赤いドラゴンだけでなく、もう一人の護衛、そして倒れている従者をも構わず一度に薙ぎ払う。
怒りに我を忘れた巨大なドラゴンは、ただの暴れる獣と化していた。
起き上がった赤きドラゴンに魔法攻撃を仕掛けられても、王子はそれを軽々と魔法で払う。
魔法攻撃が効かぬとみた男は、今度は巨大な足にガブリと噛みついた。
しかし、無駄な事だった。
王子は赤いドラゴンを掴み上げると、その体を真っ二つに引き裂く。
圧倒的な力の差だ。
だが、易々と男を葬った後も、一度タガが外れてしまった理性は元には戻らなかった。
花火を見るために外へ出ていた大勢の町の住人へ怒りの矛先を変え、逃げ惑う人々を襲い始めた。
その後、待ち合わせ場所に少し遅れて到着したオリアナ姫が騒ぎに気付いて後を追って、なんとか怒りを鎮め、エドゥーを正気に戻すのだ。
けれど今回、オリアナ姫はエドゥーではなくマテウスと花火を見る予定である。
エドゥーを探して彼の後を追う事はない。
マテウスルートの時のエドゥー王子がどうなってしまうのかは、私もエミリも、多分、神ロージスでさえも分かっていない。
その後は、全く出てこなかったんだもん。
何事も起こらず済むのかもしれないけど、その可能性は多分低いと思っている。
恐らくオリアナ姫とは関係ない所で勝手に暴れて、警備隊によって捕らえられるか、もしくは討ち取られるのではないかと考えている。
王子だから殺されない?
いや、この国ならやりそう。
なにしろ、世界の中心、神樹レスポート王国だからね。
逆らう国はないのだ。
それがたとえ、凶悪な竜人族の国、ドラッフェン王国であっても例外ではない。
捕らえられたとして、その後は名誉を挽回するチャンスは与えられず、自国に送り返され処刑されるか、神樹レスポート王国の裁判で罰せられるか、どちらかなのでは?
処刑されるエドゥー王子は自業自得だから仕方ないとして、このまま放っておいたら、王子を庇って命を落とす従者と、暴走に巻き込まれて亡くなってしまう、関係のない人達が可哀そうだ。
大勢の人が死ぬって分かっているのに、放置するなんて出来ない。
偽善者って思われるかもだけど、やっぱり、見て見ぬ振りは無理だよー!
「…ごめんね。私の我儘で」
エミリに抱きついたまま、ポツリと呟く。
エドゥーのような横暴で俺様な男には、関わらないに越したことはない。
エミリやマテウス、レンバート、そして、ついて来てくれた騎士達が心配だ。
他人を助ける為に大切な人が犠牲になるなんて…やっぱり、本末転倒! あり得ない!
「ねえ、やっぱり私が!」と言いかけると、エミリに「めっ!」と叱られた。
「姫様をこれ以上危ない目に会わせたら、私達の首が飛んでしまいます。これは、私達自身のためですわ」
迫力のある笑顔で言われたら、それ以上は言い返せなかった。
首を飛ばすのって、お父様??
お優しいお父様が、そんな事するかなあ?
迎賓館の大きなホールの中央に置かれたテーブルに、いつものように固まって座るオリアナ姫と王子たち。
だけど、昨日オリアナ姫に断られたガオザンだけは、もう一緒のテーブルにはいなかった。
他の国の王族らと挨拶を交わし、席を転々と移動しながら交流を深めている。
私はいつもの後ろの端っこの目立たない席に、シュレイ様と共に座っていた。
本当は私も各テーブルを回ってご挨拶をして、親交を深めた方がいいんだろうけど、アンデッドが近づくとあからさまに嫌な顔をする方々もいるんだよねぇ。
すれ違いざまにハンカチで鼻を押さえたり、顔を背けるお方もいる。
まだまだ偏見を持ったままの人もいるのだ。
本日のお国自慢は楽しいものだった。
大サーカス団を国から呼んで彼らを紹介したのち、午後からはいつの間にか野外に立てられた大きなテントの中でサーカスを見物した。
魔法がある世界なので、前世ではありえない動きをしていて驚いた。
空中で飛び回りながらのジャグリングや、魔法で作り出した光の輪に飛び込んだり、生きた動物を積み上げたり、箱を出現させてそれを次々と昇っていったり、今までに見たことがないサーカスだった。
そんなスペクタクルなショーに観客が夢中になる中、私の視線は知らず知らずに別を向いていた。
あ、マテウスの袖に手をかけた!
オリアナ姫は、興奮して手を叩いたり、周りに座る王子らと会話しては、楽しそうにはしゃいでいる。
彼女が一番に視線を向けるのは、隣に座るマテウスだ。
微笑み合う二人から目が離せない。
二人に気を取られ、ショーを楽しむ余裕がない。
ううーっ! 気になるー!
マテウスから告白されて、こんなにも意識してしまうとは、自分でも思わなかった。
もちろん嬉しかった。ほんと、すっごく嬉しかった。
あんな素敵な人から想われてたなんて、今朝のマテウスを思い出すと、胸がムズムズしてギュッてして、顔に熱が集まってくる。
でも、素直に喜びを表せなかった。
それは、マテウスだって承知していたはずだ。
だってさ、今はダメでしょ? …っていうか、ずっとダメでしょ?
国の為にもだし、美貌も性格も能力も……………私がオリアナ姫に敵うトコなんて、一つもないじゃん!?
――三日後の朝。
花火大会の当日の朝は、今日も晴れ渡っている。
カーテンの隙間から差し込む光が眩しくて、うーん…と寝返りを打った。
この天気なら、今夜の花火大会は問題なく行われるだろう。
大人しくしているように言われているので、今回、私は全く何もしていない。
エミリらにすべて任せっきりである。
ベッドの中で惰眠を貪っていたのだが、ふと横に硬い感触があるのに気付いた。
ペタペタと手で触って確かめる。
ゴツゴツとした硬い塊? 岩? でも、私の体温より温かい。
なんだ、これ?
薄っすらと目を開くと、小さな顔が目の前にあった。
スースーと寝息を立てる小さく可愛らしい物体には見覚えがある。
ああ、なんだ、ドラゴンかー…………………って、ええっ、ドラゴン!?!?
「な、な、なんで? どうして!?!?」
私と同じ枕に頭を乗せた白地に青い模様の入った小さなドラゴンは、気持ち良さそうに丸くなって眠っていた。




