第九話 遊園地?
電車は大阪湾を通り過ぎながら、目的地へと向かってゆく。そのうちに、ユニバーサルシティの特徴的な建造物が姿を見せる。
「おー、アレがユニバか! 人生…いやロボット生で一度は行ってみたかったんだよー」
ユニバーサルシティは、幼い頃両親と来た時の姿そのままを保っていた。
「はいはい、早く向かいますよ、アトラクションに列ができちゃいます」
「…少年、その心配はないぞ」
なぜだろう。ユニバなんて走っていかないとあっという間に2時間待ちとかに…って
「あっっ…人類ほぼ滅亡してるんだった…」
「まあ今のところ人がいない以外にそのことを実感させるようなことがないからな、無理もないよ。少年」
「で、ですねー」
涼介の耳が少しずつ赤くなってゆくのがわかる。
「まあ、ゆっくりゆこうじゃないか。にしてもはいる前からユニバみたいだな、ここは」
「それ、初めてきた人はみんな言うんですよー。ここで限定グッズとかも色々買えますからね」
「入場せずに買えるとは何と太っ腹な…っと入場ゲートが見えてきたぞ」
「ホントですね!
…あれっなんか様子へんじゃないですか?」
まわりはとてもきれいなのに、入場ゲートだけが錆や苔で凄くボロボロになっている。
「なんでここだけ…」
「待て、アレを見ろ。少年」
コトハが指を差した先には、何かでひっかかれたような大きい傷があるロボットたちが打ち捨てられていた。
…なんだかすごく嫌な予感が襲ってくる。
「な、なんかヤバそうです。逃げましょう、コトハさん」
「だ、だな…」
背中に嫌な気配が襲ってくる。どうやらさっきの嫌な予感は当たったようだ。
「ニンゲン?」
そう言ってきたのは、中肉中背の男のシグマロイド。
だがコトハと違って声色になんだか人間味がないような…
「おおっ、なんだと思ったが私と同じシグマロイドじゃないか。君も私と同じ不良品かい?」
「ちょっと! そいつなんだかヤバそうですよ!」
「せっかく会えたシグマロイドなんだ。少し話を…」
男のシグマロイドは一瞬落ち着いてこう答えた。
「フリョウヒン…」
その後に激怒したような口調に変わり、コトハに襲い掛かる。
「ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?ドウシテ?」
間一髪でコトハは攻撃を避けた。
「なっ…こいつバグってる!」
「だから言ったでしょ! ひとまずユニバのなかに逃げますよ!」
「くそっ少年、私に捕まっておけ!」
そういうとコトハのブーストモードが起動し、ユニバのなかにぐんぐん入ってゆく。
「ニゲル…ナゼ?ナゼ?ナゼ?ナゼ?」
男のシグマロイドもブーストモードを起動した。速度はコトハと五分…いや少し速いくらいであろう。
「どうするんですか? あいつもかなり速いですよ!」
「今考えてる! えっと、えっと、ああ! そうだった! 少年、ここの中に水があるエリアはあるかい?」
「このまま行ったあとに右に行ったらあるはずです!」
「よしっ、そこであいつを倒すぞ!」
「なんだか分かんないですけど、倒す方法分かったんですね!」
「ああ! よく捕まっておけよ!」
二人は追われながらもユニバの中を駆け回りる。
男のシグマロイドはもうあと数メートルの位置まで近づいて来ていた。
「やばいやばい! あいつもうちょいで追いつきますよ」
「大丈夫!もう水は見えた」
「どうするですか!?」
「このまま水へダイブだ!」
二人が水の中へはいると、男のシグマロイドも後を追うように水の中へ飛び込む。
「どうすんですか!? あいつ入ってきましたよ!」
「待て!」
男のシグマロイドが水の中へはいると同時に、身体の中への中へ水が入り込み、身体が決壊していく。
「ミズ…ナンデ? ナンデ? ナンデ?」
「えっ? なんで…シグマロイドは防水仕様のはずじゃ…」
「普通はな。バグったやつは体の中へ入ってゆく水を弾き出すプログラムがイカれてるから、水の中へはいるとああいうふうに決壊するの」
「へ、へえ…シグマロイドにもバグるとかあるんですね…」
「まあ、そんなことはめったにないが…
起動停止したシグマロイドがなにか異常をきたしているのかも」
「そういうことですか…
ちょっとのんびりした旅で気が抜けてましたけど、気を引き締めないと…」
人類が滅亡しても、ロボットのおかげで不自由ない生活を送れていたから少し忘れかけていたが、人類はほぼ滅亡したのだ。僕たちの日常も、いつ壊れてもおかしくない、脆いものだというものが、痛いように突きつけられたような気がした。




