第七話 かじの
コトハたちは来た道を戻り、大阪メトロの梅田駅へと向かってゆく。最初は大阪に慣れていなかったコトハも、一日を過ごしてかなり慣れてきた様子を見せている。
「着いたー! じゃあ早速時刻表を確認しようじゃないか」
「えっと…あと5分後だ。」
「ちょうどいい時間だ。ところで少年、IRに行ったらせっかくだしギャンブルしてかないか?人生で一回はポーカーとかしてみたかったんだよ」
「いいですけど、僕ポーカーとかロイヤルストレートフラッシュぐらいか知らないですよ。」
「まあまあ、やってみたら何とかなるだろう。他の賭け事もたくさんあるだろうし」
「ま、そうですね。こんな世界になったんだし、やりたいことやらなきゃね」
コトハたちが話している間に5分は過ぎ、あっという間に夢洲いきの電車は到着する。
「おー! もう着いたか。やはり5分というのは何事にもちょうどいい時間だ」
「ですね! さあ、乗ったら5分ぐらいで着きますよ。」
「前乗ったやつよりも速くないか?!」
「この電車はIRで増えた観光客用に、半ば新幹線のような形で作られていますからね」
「また5分、やはり設計する人間も私と同じ考えのようだ」
「大半の人コトハさんと一緒の考えだと思いますけどね」
「ははっ、それもそうだな」
コトハたちそんな事を喋っている間に、もう電車は夢洲駅へと到着した。5分というのは2人にとってはちょうどイイを超え、短すぎる時間かもしれない。
「着きました。やっぱここは潮風が来て気持ちいいですね」
「ああ、久々に海をみたよ…あの大っきい木のリングは?」
「ああ、アレは40年くらい前にあった万博の名残ですよ。もうほぼ残ってないけど、アレだけは記念に残したんです」
「なんだか、エモいね」
エモい、って確かエモーション…だったっけ。
そもそもエモーショナルの意味がわからないけど、
言葉の雰囲気はなんとなくわかる。
「そうですね。っというかかなり前の言葉使いますね」
「そうなのか?最近は流行が変わるのが早くてね…」
「なんでその年で年寄りみたいなこといってるんですか。そんな事言わずにカジノいきますよ。人がいるかも知れないし」
「よっし! ルーレットやろう!」
「はいはい。まあ、2人対戦ですけどね」
そんな会話をしながら、IRの2階、カジノへとついた。
まあ、うすうすわかってはいたけど人の気配は全くしなかった。もうこの状況にもなれてしまったが。
「おー。カジノなんて初めてみたよ」
カジノは前にテレビで見た綺麗な状態を保っていた。だが、チップやら、お金やらがところどころで散らばっいる。
「日本じゃここにしかないからな。それじゃ、散らばってチップを集めよう」
「集めて早くやろう! ちょうどあっちにルーレットがある」
「オキャクサマ、ルーレットヲプレイシマスカ?」
「ああ、もちろん!」
「ドコニカケマスカ?」
「僕は赤の3.32.21に100ベット」
「ふん、おびえているな、少年。私は黒の5に1000ベット」
「1000?コトハさんこそ、ルーレットはロマンだけじゃ勝てないよ」
「ルーレットヲカイシシマス」
「黒の5! 黒の5!」
2人の間に一瞬、コレまでにないようなピリッとした空気が流れた。
「…クロノゴデ、コトハサンノカチデス」
「なっ…」
「ふっふん、私運はつよい方だからね」
「マグレですよ。まだまだチップはあるんだ。勝負はこれからですよ」
それから二人は、とったり取られたりを繰り返し、互角の勝負を繰り広げた。
「はあはあ、次で終わりにしよう、少年。」
「で、ですね…」
「赤の12にオールインだ」
「それじゃあ僕は、黒の25にオールイン」
「ルーレットヲカイシシマス」
ルーレット上の白い玉は、黒の25に見る見るうちに吸い込まれている。
「よしっ勝った!」
と、思いきや白い玉は黒の25を通り過ぎ、赤の12に入った。
「な…」
「やっぱ私は運がよいだろう、チップはすべて私がいただきだ!」
「うう…しょ、所詮こんなのただの運ゲーですよ!」
「おやあ?さっきロマンだけじゃ勝てないよとかとか言ってたじゃないか」
「っていうか人を探しますよ。お金も拾ったことですし」
「えー、もっとやらないか。チップたくさんあるよ?」
「だいたい、二人だったら二人でずっとチップを回しているだけじゃないか…」
「無駄と言いたいのかい?君たち人間はこういう無駄なことに意味を見いだしたんじゃないのかい?」
「それは…そうですけど」
「じゃ、次はポーカーをやろう!」
「だから、ルールわかんないですって」
二人は、なんだかんだでカジノにある遊戯をあらかた楽しんだ。
「はあはあ、やりすぎました…」
「でも、楽しかっただろう?」
「ま、それは否定しないですけどね…」
お金をかけない賭け事という意味のないものでも、人はそのなかに楽しみを見つけ意味を見出すものた。




