第四話 ぷちライブ
「コレが、梅田。すごいな、高い建物でいっぱいだ。京都じゃこんな光景はみれなかったな」
「京都は景観条例のせいで高い建物作れませんですからね。それじゃあ人、探しますか」
「ああ、そうだな。ほんとにいるのだろうか…」
「ここらへんだけでも100万人くらいは住んでたはずです 。僕のような人は1人くらいはいるはずですよ」
「そうだといいけどな。坊や」
「坊やは絶対ちがうでしょ」
「はは! 言う前に私も違うなと思った」
「ですよねー」
早速僕らは探索を始めた。とりあえず人が多い駅周辺をぐるぐると回っていくことにした。
「だれかーいますかー」
「人間ーいたら言ってくれー」
一時間が経過し、隅から隅まで探してもいなかった時、僕らはさっきの考えがとても甘かったことにようやく気がついた。
「…いないな」
「ですね…」
「まあ、そりゃなかなかいないですよねー」
「というか少年、もう歩き疲れた。どこかで休まないか。」
「結局少年呼びにしたんですね。休むのにいい場所はこっから西に行ったらいい感じの場所がありますよ。」
「また歩くのか…」
「そこらにある車使えたらいいんですけど、鍵がないんでね…」
コトハさんは何がひらめいたような顔つきをした。
「! それだ少年! いままでなぜ思い浮かばなかったんだろう…」
「ちょ、ちょっとまってくださいよ!」
そういうとコトハは近くにあった車に飛び込むように乗り込んだ。一体何するつもりなんだ…
「だから鍵ないんですってー。何するつもりです?」
「フッフーん。私たちお世話用のシグマロイドには緊急用にあらゆる鍵をピッキングできる機能が隠し機能として備わっているのだよ。普段は硬くロックされてるが、こんな状況であれば、この指を押し込んでやれば勝手に…」
コトハの指が高速で変形しみるみるうちに鍵を解読し、ついにエンジンがかかった。
「わわっほんとについちゃった。コトハさん運転できるんですか?」
「ふふん、私はこう見えても運転免許を持ってるんだ。だからなにも心配することはない」
「何か不安です…」
「大船に乗ったつもりでいろ! 少年、西だったな!」
「そうですけどって、危ない!」
車の目の前に電柱が立ちふさがる。
「おおっと、あぶない。」
間一髪でコトハはハンドルを左に切って電柱を避けた。
「やっぱ、コトハさんといたら命が何個あっても足りませんよ…」
「まあ、助かったからいいじゃないか。ささっと向かおう。」
そこからもコトハさんの危なっかしい運転は続いた。
「はあ、はあ、やっと見えましたよ。あの公園ですよ。」
「おお、なかなかいい感じじゃないか。」
やっと僕たちは目的の場所ついた。いや、時間はそんな経ってないけどコトハさんの運転のせいで何倍にも長く感じた…
僕らは芝生のうえに横たわり、空を見上げた。こんな世界になっても、空は変わらず美しい。
「ふう。芝生があって気持ちがいいな、少年。ここはなんていうとこなんだい?」
「グラングリーン大阪ってとこですよ。小さいときによく両親と来ました。いいでしょう、ここ。」
「ふーん…そういや君の両親は?助かったのかい?」
「いやいや、こんなことになるとっくの前に交通事故でとっくの前に死んでますよ。
そっからは施設なんで、とくに思い入れがある人は居ませんよ。」
「そうか…済まないな。こんなこと聞いてしまって。」
「いえいえ、もうとっくに気持ちの折り合いはついてますから。」
「にしてもここ気持ちいいですね。ちょっと寝ませんかって、シグマロイドは寝ませんか。」
「まあ、睡眠は必要ないがね。バッテリーが少なくなってきたから、少し太陽光発電するよ。」
「じゃあその間に寝てますねー。」
僕は今までの疲れもあってか、5分もしない内に眠りについた。
「…はっ寝すぎたっ」
僕が起きた時には空はオレンジがかり、いかにも夕焼けって感じの空色になっていた。
「コトハさん、僕何時間ぐらい寝てました?」
「うーん、1時から5時までだから4時間かな。でもおかげでバッテリー満タンになったよ!」
「ま、それならよかったですけど…」
「少年、あのステージのうえにのぼってみないか?ああいうとこにのぼるのがちょっとした夢だったんだ。」
ライブのとき以外は何もないステージも、今日はなぜか綺麗に準備されていた。ひょっとしたらライブをするつもりだったのかな…
「いいですね!僕もあそこで歌うのがゆめだったんですよー」
コトハと涼介は少し苦戦しつつステージへと登った。
「ひゃー、意外と高い…」
「おー少年、都合よくギターやらがあるぞ。まあ、私は弾けないけどね」
「僕高校で軽音だったんで、ちょっとは弾けますよ!」
「おー! じゃあ何か弾いてくれよ、少年!」
「うっ、鉄板でかつ一番困る奴が来ましたね…
じゃ、じゃあ昔の曲だけど僕が好きな曲を…」
「なみおとでけされちゃった——」
そうして僕は歌いきった。久々に弾き語りをすると、気持ちいい。
「おお、高校生にしてはなかなかにうまいじゃないか」
「その、高校生にしてはってのは余計ですよ」
「まあまあいいじゃないか。にしてもここの眺めはいいね」
「それは同意ですけど…というか、宿どうしましょ。ここらへんはロボットがいるから、金払わないと無理ですよ…」
「うーん…まあ行ったらなんとかなるだろう」
「な、何という楽観的な…」
「じゃあ早速案内してくれよ、少年」
「はいはい…」
コトハさんの呑気さには、時々驚かされるが…こんな世界ではそれぐらいが丁度いいのかもしれない。




