第三話 梅田へ
「ツギノレッシャハ11時34分デス」と、駅内のアナウンスがなる。いちいちアナウンスするのはうっとうしいと思っていたが、今となっては時刻を把握する手間が省けてありがたい。
「ほら! 急いで。あと2分しかない!」
「わかってる、わかってるよ。こんないたいけな少女に無茶をさせるんじゃない」
「コトハさんはシグマロイドでしょ、というかいたいけなっていうレベルの少女じゃないでしょうが!どれだけ低く見積もって18歳ぐらいが妥当ですよ」
「いやいや、製造年は2059年だからまだピチピチの3歳だよ」
「いや、それはそれで少女ってか幼女ですけどね…」
「うるさい!早くしないと電車に乗り遅れるぞ!」
「元はといえばコトハさんのせいでしょうがっ」
僕たちは改札を超え、エレベーターを駆け上って駅のホームへと向かう。
そうしてやっと僕たちが駅のホームについた頃には、電車のドアは閉まりかけていた。
「ヤバいですよ! コレ逃したらしばらく次ないんですから」
「涼介! つかまれ! アレを使うぞ!」
「アレって何ですか!」
「コレだよ!」
そういうとコトハの体はみるみる熱くなった。
「ま、まさか…」
「そのまさかだ!」
「ブーストモード、キドウシマス」
コトハの足から蒸気がでて、あっという間に電車の中へ飛び乗った。
「カケコミジョウシャハ、オヤメクダサイ」
僕たちは電車の椅子に倒れ込みながら、間一髪で電車に乗ることに成功した。
「はあはあ、それ、もう二度とやらないでくださいね」
「なぜだ? 男の子ってこういうのが好きだって」
「そんなの何回もやられたら心臓が何個あ゙っ゙ても足りませんよ!゙」
「すまないすまない、でも電車には間に合っただろう?」
「それはそうですけど…」
コトハさん、なんか儚げな雰囲気と顔とは裏腹に、何かすごい陽気で元気な人だな……シグマロイドでもこういうのあるんだ。
「それで、何分くらいで着くんだ?涼介」
「多分7分くらいで着くと思いますよ。」
電車は、無人の街を切り裂くようにぐんぐんと進んで行く。
「スイタースイター」
「もう吹田だ。あと4駅ぐらいですよ。」
「電車って…速いんだな。ずっと車だったから、分からなかったよ」
「車でしかいけないところもありますけどね。」
そんなこんなで、僕らは無駄話を続けた。
「シュウテンウメダーウメダー」
電車は僕の見立てより早く、ものの5分で梅田に到着した。
「もうか! やはり速いな、電車は」
「コレもロボット様々ですよ。人間が運転してたときは安全面の問題でコレよりも二分の一くらい遅かったですから。にしてもこんなに速いとは思いませんでしたが…」
「まあ、遅かったほうが、君ともっとゆったりと話ができて、僕的にはいいんだけどね」
突然の思わぬ言葉に、少し顔を赤くしながらも涼介が答える。
「なっ…さ、さっと人探しますよ!」
「意外と照れ屋?少年?」
「違いますよ! ってか少年って、漫画でしか見たことのない呼び方…」
「色々な呼び方を試してるんだよ、なんだか涼介って呼び方は違和感があってね」
そんな話をしながら僕たちは阪急梅田駅をでて、外へと飛び出し、しばらくあたりを見回した
「うわー、こんな人がいない梅田、始めてみた…」
いつもは大量の人の煩わしい話し声でいっぱいだった梅田が、今日は葬式のように誰の話し声もしなかった。切なさも勿論あるが、なぜだかワクワク感のほうが強かった。やはり僕は人が嫌いだったのだなと改めて実感した。




