第十八話 生存者…?
声をした方向へ少し向かってみると、そこには…人がいた! ようやく人に会えた!
その人物はおおよそ30代後半であろう、背丈が大きい髭を生やした男性である。
「…いけねえ、また人の幻覚が見える。酒の飲みすぎだな…」
その男はどうやら精神を参っているような顔つきをしている。
「幻覚じゃないですよ! ちゃんと人です。あなたのおかげで助かりましたよ!」
「ああ! あなたがいなかったらもうとっくに死んでたよ!」
その男は、そう僕たちが答えたとたんにみるみるうちに顔色を変えた。
「ってことは俺と同じ生き残りかい?! ああ、今日は最高の日だよ、もうそろそろ頭がおかしくなるところだったんだ。あそこでカレーでも食べながら喋ろうか!」
その男は、近くの戦艦を指している。
「やった! 少年、念願のカレーだぞ!」
「やっと食べれますね!」
戦艦の中に入ると、たくさんの食料、粗暴にまとめられたノート、しわくちゃになっている布団などが目にはいる。
「ここで生活してたんですか? あっちにいくらでも家はあるのに…」
「落ち着くんだよ、元海上自衛隊なんでね」
「そうなんですか! ああ、だからあんなに武器の扱いがうまかったわけだ…」
「まあまあ、ここにおふたり座って。カレーは準備できてるから」
僕たちが小さな椅子に腰掛けると、すぐにカレー
がでてきた。
「おお! コレが名物…早速食べようか」
そのカレーを一口食べた。普通とは違う、なにか独特の美味しさがある。なにか隠し味でもあるのかな?
「このカレー美味しいです! なんか隠し味入れてるんですか?」
「コーヒー牛乳を少しな。それが自衛隊直伝のカレーなんだ」
「へえー! 知らなかった…」
僕たちは夢中でカレーを食べた。そういえば、久々に白米を食べた気がするな…
「そういえば、あんちゃんたちの名前はなんていうんだい?」
「僕は立花涼介で、この人は…」
「私はシグマロイドの雨石コトハさ。よろしく」
「シグマロイド?! ああ、確かによく見たら、首に紋章があるね…まだイカれてないのがあるとは…」
「まあ、いろいろあってね。あなたの名前は?」
「俺は神崎誠さ。まあ誠とでも呼んでくれ」
僕は誠さんに、コレまでの旅のことやハチのこと、目的地などを話した。
「涼介君が刺されたっていうそのハチ…確かに俺も刺された気がするよ」
「やっぱり! アレが生き残った原因で間違いなさそうですね…」
「ああ、後…東京に行くのはかなり難しいよ。前に探索しようと思っても、陸からはすべて封鎖されていたからね…」
そんな…ここまで来たら、ハチの正体や病気の真相を知りたい。それでなにか人類が救われることはないかもしれないが、ただ僕の知的好奇心がとてもくすぐられるのだ。
「ええ、そんな…どうにかしていけないんですかね。東京になにかヒントがある気がするんです」
「ああ、私の直感もそう言ってるよ」
「コトハさんの直感はあんま当てにならなそうですけどね…」
「うーん…。ああ、空からなら行けるんじゃないか? さすがに空は封鎖できないだろう」
「それだ!って…今空港使えないから、空でなんて行けないですよ…」
「米軍基地のほうに大きめのヘリがある、それに乗って行けば多分行ける思うよ! 俺は整備するのがめんどくさくて試してなかったけど」
「ホントですか! 整備ってどれくらい時間が…?」
「まあ、ざっくり2日ってとこかな…その間どこかに行ってきたらどうだ? 俺はしばらく手が離せなくなるし」
「そんな、いいんですか! それじゃあ、コトハさん、その間箱根行きませんか?」
「いいアイデアだねえ、少年。2日も有れば少し遠くても十分だろう」
誠さんは僕たちの様子を見て、笑っている。
「はは、君たちは本当に仲がいいね。よし! 俺が頑張っとくから、君たちは思う存分羽を伸ばしてくれ。もしかしたら東京は危険なところになってるかもしれないからな…」
その晩は誠さんの家に泊まらせてもらって、次の日の朝、箱根に向かうことにした。
誠さんはまたバグった奴がいたら危ないからと、駅までついてきてくれた。
「本当にありがとうございます…こんな無理なことあって、泊まらせてもらって…」
「いやいや、久々に人と会えただけ俺は満足なんだ。それに君たちのような若人は青春するべきだしな!」
「じゃあ、また2日後! あの戦艦で!」
「ああ! 任せとけ!」
そうして僕らは、初めて純粋な「観光」をしに、箱根へ向かうのだった。




