こりはビックリ☆ 暁光帝はキャンディーが甘いことを知ってしまいましたよ♪
何やら悩んでいる金髪エルフは脇に置いといて我らが暁光帝は隣のキャンディー売りに関心を奪われています。
人間の嘘が怖いので嘘の達人と呼ばれる商人と話すのは身の毛がよだつほど恐ろしい。
けれども、今なら代わりに“お買い物”をしてくれる金髪エルフ(だらしない爆乳)がいます。
さっそく素敵なお買い物をしちゃいましょう☆
お楽しみください。
キャラクター紹介&世界観はこちら〜>https://ncode.syosetu.com/n2816go/
4本の支柱に張られた布は日除けにしかならない。組み立て式のテーブルは粗末だし、天板を覆う布も薄汚れている。けれども、木皿に並べられたキャンディーは透き通った琥珀色で傾きかけた陽光を浴びてキラキラと宝石のように輝いている。
「うわぁ……」
それはもう見つめている麗人の顔も花のようにほころぶというものだ。
「ア、ハイ……」
ナンシーは余計なことを言わずに彼女が差し出した金貨を受け取るしかない。
暁光帝が喜んでいるのだ。
固めた蜂蜜の粒で破滅の邪龍を抑え込めるのだから是非も無し。
「あー…ここのキャンディーを全部もらうわ」
今度もまた大枚で店主を黙らせてやろうと一気に3枚の金貨を差し出す。
「おぉっ!…っと、いや、それがですねぇ……」
喜色満面、カネを受け取ろうとした店主だったが欲をかいてしまう。
ここでゴネればもっと多くの金貨を上乗せしてもらえる可能性があるのだ。
その感情は商人としては当然かもしれない。
より多くの利益を得る機会に出会ったらさらに求める。
誰にそしられることもない。それこそが商人の正道である。
しかし――
「1つ、忠告してあげるわ。触らぬ神に祟りなし」
金髪エルフは思いっきり渋い顔で格言を与える。
意外や、意外。
それは効果てきめんだった。
「ひぃっ!…オ、オ買イ上ゲ、アリガトウゴザイマス」
一瞬にして顔から血の気が引いて、商人は素直にカネを受け取ってすべての木皿を集めて花びらごと袋に入れて差し出す。
その視界を染めるは紫。
陽光を浴びて怪しい光を放つ紫色のロングヘアーが期待に踊り狂っている。
重力を無視して。
まるで一本一本が独立した生き物のように。
それは陽光を反射して光り輝き、人々を、木々を、品々を、周囲の全てを紫色に染め上げている。
『あ、これ…絶対、人間じゃねぇ』
それが商人の頭に湧き上がった考えだった。
そして、その思考は戦慄を呼び起こし、恐怖で肉体を凍りつかせる。
この世界では神が実在するのだ。
もちろん、地上に降りてくることはないが、光明神や暗黒神など、やたらと祟って人間を罰したがる、恐るべき神々がいることは周知の事実。
目の前の麗人がそんな神々の眷属、もしくはさらに危ない超存在であることを本能的に悟ったのである。
「賢明よ……」
口にこそ出さなかったものの、『命拾いしたわね』と続けてナンシーはキャンディーの袋を受け取る。
「はい。アスタさん、お望みの品ですよ」
そう言ってエルフは冗談であるかのように芝居がかってかしこまりつつ。
実際は本心から世界のため、恐るべき暁の女帝様を鎮めるべく。
奉納品を差し出すのだった。
***************************
受け取った袋の中身を覗いて、人化したこの麗人は嬉しくてたまらない。
「うん、うん。これが“キャンディー”という薬か」
はしゃぎつつ、中身を取り出して指にはさみ、陽にかざす。
透き通った琥珀色の結晶の中に花びらが1つ。
どうやら使われている香料に合わせて外見から区別できるようにしてあるらしい。
「む! この香りは肉桂だね。こっちは蕃紅花と生姜か。香りからして薄荷もあるようだね」
アスタは袋の口から漂う香りを楽しんだ。
これだけ貴重な物が通貨で手に入るとは貨幣経済の何と凄いことだろうか。
人間が何でもカネで買えると思い込むのもなるほど理の当然かとも思えてしまう。
「むむむむ……」
一瞬、幻獣の世界にも貨幣経済を持ち込もうかと考えたが、諸々の事情を考慮して控える。
貨幣経済における商売が定義する“価値”は仮想的な存在である市場が決定する嘘だ。誰しもが通貨に騙されて、そこに一定の価値があると思い込み、同時に相手を騙して価値を信じ込ませなければ商売が成立しない。
通貨が生み出す無限に増殖する嘘の連鎖で経済が成り立っている。
恐ろしいことだ。
「桑原、桑原……」
アスタは恐ろしげに思念を追い払う。
この天龍アストライアーを怖気づかせるとは人間もなかなかやるものだと感心するが、先ずはこの宝物である。
“薬”と聞いたが、どんな効能があるのだろう。
しげしげと眺めて大きく口を開けたものの。
「1個ずつ口に入れて舐めると味の違いがわかって美味しいんですよ」
「ナメる? あぁ、舐めるんだね。わかっている、わかっているとも。口腔内に唾液を分泌させて…食べ物にヨダレを絡めて舌の上で転がすんだ。わかっているとも」
金髪エルフに言われて気合を入れ直す。
これから謎の珍味“キャンディー”に挑むのだ。
気張らないでどうする。
再び口を開けると。
だらだらだら〜〜
口腔内で分泌させた水を滴らせる。
大量に。
「むむむ。ちょっと違うな」
これは違う。
これは駄目だ。
唾液ではなくただの水、純粋な一酸化二水素だ。
ムチンやアミラーゼを混ぜて粘性を与えつつ、分解酵素の効果を持たせねば。
「よし!」
でろでろでろ〜〜
若干の粘性をもたせた透明な粘液、唾液を口から滴らせる。
でろれ〜ん
大量にあふれ出たせいで純白のワンピースが濡れてしまい、見事な豊乳を包むブラジャーの形が露わになったものの。
女でない、いや、人間ですらないドラゴンがそんな濡れ場を気にするはずもない。
「ていっ!」
一気にキャンディーを口へ放り込む。
ペロペロペロペロペロ……
「むむむむ! これは……」
言われた通り、唾液を絡めて舌の上で転がしてみればキャンディーが溶けて味蕾を刺激する。
「甘い!」
思わず、声が漏れて魂が高揚する。
甘い。
実に甘い。
そして、立ち上る香りは肉桂。
これがまたよい。
実によい。
人化する前の超巨体ではろくに物を食べられなかったが、こうして新たな技術“舐める”も使えるようになった今は何でも食べて味わえる。
そして、この味は、この香りは、得も言われぬ。
阿片では味わえなかった、素晴らしい感覚だ。
「肉桂のキャンディー、最高だね☆」
上機嫌で唱える。
「はい。肉桂はお腹の具合を整えるんだそうです」
ナンシーは薬効を説明する。
いや、天下御免の超巨大ドラゴン暁光帝に肉桂が効果を及ぼすとはとても思えないが、それでもありがたい効能の説明ぐらいはしておくべきだろう。
大量の唾液でワンピースが濡れて豊かな胸乳が透けて見えてしまっているが、アスタは全く気にする様子もない。
彼女は道行く男達からどれだけ不埒な目で見られようと毛筋ほども揺るがぬ。
やはり暁の女帝様だと感心するばかりである。
「まぁ、アスタだしね……」
聞こえないよう小声で呟く。
ワンピースを濡らしているのが唾液なのか、ただの水なのか、それすら怪しかったが。
最初に垂らしていたのはヨダレではなくただの水のようだし、どうやら今の今まで“舐める”という行為そのものができなかったらしい。
しかし、暁の女帝様を調子に乗らせるのはまずい。
「キャンディーは貴重な薬ですから一日に4個、香りの数だけ舐めるようにしましょう。そうすれば長く持ちますよ」
アスタに釘を刺しておく。
蒸留酒と同じくキャンディーも嗜好品ではない。
それぞれ美味しいが、その用法はズバリ薬だ。
理由はかんたん。貴重品だからである。
醸造酒を蒸留したり、蜂蜜を集めて固めたり、その製法はとにかく手間がかかるのだ。
命の稀水にしてもキャンディーにしても体調を崩した時に少しだけ口にするような代物である。
大量の金貨を持っているアスタだからひょいと買い占められたが、本来は革袋1つ、1皿に並べるくらいですら購入をためらうような貴重品なのである。
「まぁ……」
言いよどんだ。
紫の大聖女ことアスタならキャンディーごときは物質創造の大魔法で無限に創り出せてしまうんだろうが、そう言うことではない。
飽きられたら困るのだ。
六翼で天を覆って世界から光を奪うほどの災厄“龍の闇”、そんな天災さえももたらす超巨大ドラゴンが今、目の前にいる。
麗しき乙女の姿で。
その人化が解かれるようなことは何としてでも食い止めねばならない。
そして、現在、彼女はキャンディーに夢中なのだ。
それならキャンディーに夢中のままでいてほしい。
ナンシーは思惑を隠しつつ、アスタが大魔法を使うことはないように感じている。
暁光帝は人間と価値観を共有しない。
彼女が何よりも価値を見出すのは“珍しさ”について、だ。
珍しい昆虫、珍しい食べ物、珍しい人種などなど。
物質であることにもこだわらない。珍しい命題、珍しい数、珍しい風習なども見つけて喜ぶ習性がある。
物質創造の大魔法で貴重品を大量に生み出してその珍しさを損なうことを彼女は厭うのではないか。
短い付き合いだが、そう思えてならない。
「うぅむ……」
アスタは残る3つのキャンディー、蕃紅花と生姜と薄荷を眺めて唸る。
貴重品らしい。
南無三、危うく一度に全部を舐めてしまうところだった。
危うい、危うい。
どうやら通貨を積んでもおいそれと買える物ではないようだ。
それなら言われた通り、1日4個と決めて舐めることにしよう。
袋の中身は明日の楽しみにとっておいて、残るは3つ。
「はてさて、次はどれをいただくとするかな?」
手のひらに乗る琥珀色のキャンディーを眺めて麗人は深く悩むのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます♪
昭和、平成、令和と来て言葉も色々変わりました。
肉桂→シナモン
薄荷→ミント
小生の大好きなキャンディーは『ニッキあめ』なんですが、今じゃ、「“ニッキ”って何だろ? あれ、この味は……」みたいな反応されちゃいます。
まぁ、「クズ屋、お払い」の掛け声で鳴らしていたクズ屋も今じゃ立派な“リサイクルショップ”ですよ。
何でも横文字にすりゃかっこいいってもんじゃないでしょうにと首をひねりますが、今じゃ、子供達を湧かせた特撮ヒーロー“ナショナルキッド”が『パナソニック』とどうして関わりがあるのやらと同じく首をひねる向きもありましょう。
でも、言葉のバージョンアップはやっとかないと「えっ、何言ってんの?」「わかんない」「この小説、難しいわー」とか言われちゃいますからね。
多少は気にしないといけませんwww
そうそう、人気ビデオゲーム『ドラゴンズド○マ2ダークアリズン』を始めました。
いや、このゲームを始めたくて『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』の校正作業を切り上げた次第でして(^_^;)
6回も音読しときゃ、さすがに誤字も表記の揺れも失せたでしょう。
『ドラゴンズド○マ』シリーズは無印の頃は“ウォリアー”で頑張ったんですが、苦労しましてね。
今回はどんなジョブも好き放題と聞いて主にソーサラーでプレイしてます。
いや、もちろん全部のジョブをカンストさせてますけどね(^_^;)
一番、面白かったのが幻術師ですが、別に強いわけじゃない。
過酷なノルガンの地を冒険するに際して幻術師じゃ心もとないので攻撃力に全ふりしたソーサラーを選択したわけです。
えっ、シーフ?
マジックアーチャー?
魔剣士?
その辺は強すぎてちょっと(^_^;)
まぁ、正解はジョブをアリズンにして最強キャラで冒険なんでしょうが、そこは不便さを楽しむゲームですからね。
やっぱりこのシリーズは森や街道を歩いているときが楽しいんですよ。
不意に襲ってくる雑魚を相手に戦って瀕死になるのもまた一興♪
あぁ、暁光帝ですか?
あの龍、町から出ませんからねwww
いずれ、6日目以降の物語を書くときは瓦礫街リュッダの外へ出ることも予定していますが。
ちなみに現在、物語が始まってからまだ4日目の午後2時くらいですぉwww
そういや、この新章<<路地裏の興行! 脳みそログアウト中の酔っ払い下級冒険者どもが挑んできたぞ!>>を投稿するに当たって「AI利用」について尋ねられることがありました。
大規模言語モデルAIで遊ぶに当たって真っ先に『人化♀したドラゴンが遊びに来るんだよ』の新作も描いてくれるのか、“AIのべりすと”で試してみたんですよ。
あ〜、無理でした。
プロンプト組んでみたところ、何か暁光帝っぽいドラゴンが中世ヨーロッパ風の城を襲撃して王様に迫るシーンが返ってきましたぉwww
いや、違ぇしwww
一発で「あぁ、楽はできないものだなぁ」と思い知らされました。
転んでもただでは起きません。
校正作業くらいには使えるんじゃないかと、表記の揺れや誤字のチェックはやってもらいました。
音読6回目にwwww
Geminiから「“伺う”じゃなくて“窺う”だろう」と指摘されたときは驚きましたよ。
素で気づきませんでした(>_<)
AIはナガエツルノゲイトウやウキゴカイなど生物学がらみのちょっとした好奇心を満たしてくれたりするのがありがたいですね。
さて、そういうわけで次回は2026年10月18日『全人類が暁光帝のストーカー? こいつら、“歴史書”とかホザいてストーカー日記をつけているぞ!』です。
請う、ご期待!




