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外道で優しい魔王様  作者: 菊田 百合子
18/18

番外編・魔王様の苦悩

新年あけましておめでとうございます、ということで。

続きではなく魔王様視点の番外編などをうpしてみました。


レフティが魔王城へやってきたばかりで魔王様が戸惑う、そんなお話です。短めですのであまり満足はできないと思いますが……(汗)


これからも更新はゆったりのままだと思います。

しかし今ちょうど遅めの正月休みにはいったところなので、頑張って続きをかきあげたいと思います!


どうかこれからの一年もまた是非おつきあいしていただければ幸いです(^^)


菊田百合子





 我が輩は拾い物をした。


 まだ幼く未熟な――人間の子供を。





 「……おい」


 「あっ……は、はい」


 「……。いつまでそうしているつもりなのだ、レフティ」


 「…………ごめんなさい」


 「いいから部屋から出るがよい。外出の許可はしている。好きなように過ごせばいいのだ」


 「ご……ごめんなさい……」


 「………………」





 この幼女を城へ連れてきて、早一か月。“致死量ともいえる魔力を吸い上げてしまう”といった奇妙な能力を持ったせいなのか、幼女――レフティは、歳に似合わずとても謙虚で大人しい性格をしていた。まったくもって扱いづらい。これだから子供は嫌いなのだ――とは、さすがに本人には言えまい。


 我が輩は眉間に皺を作り困り果てながらも、どうにかできないものかと策を考えあぐねた。


 ――事の始まり、というか。原因はわかっている。本来ならば、レフティももう少し我が輩に甘えたりしたかっただろう。年齢が年齢だ。しかし、我が輩は魔王。そう、それをしってしまったが故に元から子供らしくなかった性格のせいで、素直になりきれなくなってしまった、と。


 子供は嫌いだ。でも、レフティは嫌いではない。幼女好き? フン、なんとでもいうがいい。もちろん言ったらそれなりの制裁をさせてもらうが。





 ……それにしても。


 我が輩はいったいどうしたらいいというのだ。子供の扱いなどまったくわからない我が輩にとって、これは今まで生きてきて一番の難題だといえよう。我が輩があの優男――わが城で隊長を務めるレオンのように、人の気持ちを和らげる魔法を習得できていれば。いや、実際魔法ではないのだが。


 本当に難しい。いったい、なにをしてやればいいのだ。なんと語りかけてやればいいのだ。





 「――あ、あの……? 魔王陛下様……」


 「やめよ。普通に魔王様と呼べ」


 「あっ、ご、ごめんなさい……」





 ああ、ああ違う。そうではない。


 貴様には他の者のように、妙な隔たりを持ってほしくないのだ。もっと自然体に接し、会話をし、側にいてほしい……そう言いたいのだ我が輩は。何故それが言葉にできない? どう言えばこの幼子に伝わるのだ?


 考えても出ない答えに痺れを切らす我が輩は、レフティに「それで、なんだ?」と問う。おびえながらもわざわざ我が輩に話を掛けてきたのだ。何か願いがあるのだろう。ならば我が輩はそれを叶えてやり、そして……――ふむ、この先は控えておこう。一歩間違えたら変態、もしくは親バカな行為だと罵られそうだ。


 もちろん、罵られたところで我が輩は全く動じぬ。好きなだけ言うがよいわ。お返しはキチンと返す性分なのでな。





 ――なるべく恐怖を与えぬよう、我が輩は少し背を低くしてレフティを伺った。


 レフティはそれに気づいて少しばかり表情を緩めたが、我が輩の来ている“魔王”を記した装束を見た瞬間……すぐさま元通りになってしまった。ええい! 煩わしい装束め!!





 「え、と……あの……」


 「気にせずなんでも申せ。気を使う必要などない」


 「……う、あ…の……」


 「……」


 「……あ…………飴…」


 「あめ?」


 「は、はい……飴玉が……食べたいです……。い、一緒に……外へお出かけ……できないですか……? 一人はまだ……こ、怖いです……」





 ……と。出てきたお願いとは、たかが知れたお願いで。それはあまりにもたやすく、そしてなによりその同行に我が輩を選んだという事、そこに喜びがあった。あの優男に懐いてもおかしくなかったはずだ。最初ここへきてすぐ恐怖で泣いていたところを、一瞬で泣き止むばかりか笑顔にまでさせてくれたあの男。


 しかし、そうではなかった。こいつは――レフティは、我が輩を選んだのだ。





 「……ふん。よい」


 「え……いいんですか……?」


 「朝飯前だな。願いはそれだけでいいのか?」


 「あ、え、っと……じゃあ、肩車を、してもらえたりは……?」


 「そんなものでいいのか。欲のない奴だな貴様は」


 「……えへへへ」





 ……どれほどの年月、我が輩はこの少女を待ち望んでいたのか。たやすく我が輩に触れることができ、よこしまな気持ちを持たず無償の瞳で我が輩を求め、信頼してくれるこの少女を。


 運命とは言うまい。ただ、膨大な年月一人で耐えてきたご褒美……我が輩はレフティをそんな風に思っている。


 きっとレフティは我が輩の元を離れることはないだろう。そんな確信がなぜがある。元々人を疑う事しかしなかった我が輩だが、こいつだけはすんなりと信じることができた。それこそが我が輩にとっては革命で、まさに今……生を得たような感じになるのであろう。






 我が輩は拾い物をした。


 小さくもかわいい、これからを共に永遠と過ごすであろう……我が輩の愛し子を。





 「――さあ、すぐにゆこうか。期待しているがいい、もっと良いものを買いあたえてやる。驚くでないぞ」





 レフティ。

 貴様は、我が輩一番の下僕たましいだ。


 忘れるなよ?





 ~魔王様の苦悩・おわり~

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