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ゴブリンバスターズエクスタシー

無限湧きするゴブリンと永遠に戦い続ける世界を作るとかそういうやつ。姫騎士が喰らうとヤバい。


「如月さん! どうぞこちらへ! GF特区はこんなにも生まれ変わりました!」


「私たちは共存の道の素晴らしさを知りました。これもみな、如月さんのおかげです」


「流石です、如月さま!」


「男女を1つの場所で共存させるなんて、なかなか出来ることじゃないですよ」


 如月奏詩は、生徒会の特別役員としての日課である、GF特区の視察に訪れていた。


 頼んだわけでもないにも関わらず、舞愛も一緒についてきている。


 その際、住民たちの反応は大体こんな感じだった。


 女性たちは我先にと奏詩へ駆け寄り、様々な施設の女男差別がいかに改善されたかという現状を、口々にアピールしようとする。


「良かったね、奏詩ちゃん。もう迫害される男の人たちはいないんだね。今はGF特区だけのことだけど、いつかきっと、世界中のみんなも、わかってくれる日が来るはずだよね」


「ええ、そうですね」


 楽観的なお花畑像を語る舞愛を適当に流し、女性たちに侍らされた男性の様子を窺う。


 みんな目が死んでる。


(強権をちらつかされた改革の結果など、まぁこんなものだろう。廃止の対象となった男性への私刑行為だが、目立つところではやらなくなっただけ。水面下へと移行させ、表面上では一見平等な、秩序ある共存が保たれているように取り繕っていくスタイル。本質的には何一つ変化などしてはいない)


「どうかされましたか? 如月さん?」


 住民の1人が、奏詩へと尋ねてくる。


(GF特区の実情がまるで改善されていないことに、如月奏詩が気付いていることに、果たしてこいつらは気付いているのかどうか……その上で猿芝居に興じていると見るのが妥当だろうが……ま、どっちでもいいことだな)


「いいえ。良い傾向が見られて何よりです。これからもGF特区の調和に尽力して頂けるようお願いします」


「はい、勿論です」


(いずれにせよ、わかりやすい虐待の証拠など残してはいまい。ならばやったやらないの水掛け論になるか、暴力による自白の引き出しをするか。ハ、時間の無駄でしかないな)


 男性を庇う演技など、河嶋翔子に喧嘩を売るための方便に過ぎない。これ以上詰問することには、なんの意味も価値も存在しなかった。


 男性たちの目に、ほんの僅かばかり、失望の色が宿る。


 本気で救われるなどと期待していたわけではないだろうが、どんなに儚くとも、目の前に希望があるのならば、それに縋ってしまうのが人間というものだ。


 拳銃を手にした凶悪な殺人鬼を前にして、後方に出口があるのならば、戦闘よりもまず逃亡を選んでしまうように。


 そして狭いドアに殺到したところを、1人1人撃ち殺されてしまうのだろう。


(そもそも、これ以上の待遇改善を他人の手に期待するなど、そんな虫のいい話はない。彼らは現状でも随分と救われている。何故なら彼らは、人間の端くれとして認められるくらいには、イケメン揃いなのだから)


 *


 大して意味もない視察を適当に終えた後、奏詩と舞愛は聖少女学園を訪れていた。


 生徒会特別役員として最低限の体裁を取り繕うため、GF特区に関する報告書の提出を求められていたからだ。


 尤も河嶋翔子とて、監視行為にさしたる意味があるなどとは考えていないようで、1度提出しておいてくれれば、後は不定期に、気の向いたときにでも用意してくれればいいという適当っぷりだ。


 なので昨晩寝る前に鼻クソでもほじりながら、いい加減に作成した報告書でも問題はないだろう。


「あ、翔子さん。これ、GF特区に関する報告書です」


 生徒会室の前にさしかかると、丁度中から出てきた翔子と出くわしたため、これ幸いとばかりにUSBメモリを差し出す。


「奏詩か……ご苦労さま。けど私はこれから少し出なくてはいけないんだ。中にいる朱音に渡しておいてもらっても構わないかな?」


「ええ、それは勿論」


「ああ、頼む」


 短くそれだけ答えて、翔子は奏詩たちの横を通り抜け、行ってしまった。


「忙しいのかな? 翔子ちゃん。この前もまた入院してたし……」


 舞愛が的はずれな所見を述べる。


 確かに翔子は、規律を重視しなければならない立場上、バカ正直に軟禁生活に甘んじてはいたものの。田中の能力のせいで。


「妙ですね……スケジュールが詰まっているのなら、何故高速化能力を使わないのでしょうか」


「あ、そうか。うーん……ついうっかりして忘れちゃってたりとかかな? あたしもよくあるんだぁ。聖神力使っとけば良かったのにって、後から気付いたり」


 普段からポケポケしている舞愛ならば、その理由で納得も出来よう。


 しかしあの河嶋翔子のこととなれば、違和感しか覚えない。


「それとも、疲れが溜まってたりするのかな? なんだかちょっぴり、元気もないみたいだったし」


「多忙ではあるのでしょうが、聖女の回復力が追いつかない程の激務ということもないでしょう。様子がおかしかった点には、私も同意しますが、ここであれこれ推測していても仕方ないですし、朱音さんに聞いてみることにしましょう」


 *


「翔子は討伐に出向。モンスターの巣を駆除するよう、聖天騎士団から依頼」


 報告書入りUSBメモリを提出するついでに、翔子のことを尋ねたところ、影崎朱音は簡潔に答えてくれた。


「そっかぁ……戦いの前だから、緊張してたのかなぁ……」


 舞愛の感想について、奏詩はまた同意できなかった。


(戦闘技術はともかく、先日の田中侵入時への対処を見る限り、場馴れ自体は十分していると見受けられる。今更緊張するとも考えづらいが……相手がモンスターでは、格下を一方的に虐殺するだけとなるのは間違いない。だから気乗りしなかったということか……?)


 モンスター。


 ゴブリンやトロル、グールといった者たちの総称であり、嘗ては架空の物語上の概念だった。


 しかし聖女戦争終結後、世界の覇権を握った聖天騎士団により、その存在が公式発表されたことにより、一般常識として定着することとなった。


(いや、彼女ならばいかに退屈であろうと、任務とあらば粛々とこなすイメージがある。オレの見立て違いという線も勿論あるが……)


「ねね、翔子ちゃんと一緒に行かないってことはさ、朱音ちゃんの能力って、戦闘向きじゃないの?」


 放置されて手持ち無沙汰となっていた舞愛が、なんの気なしに朱音へ投げた、唐突で的外れな質問。


 しかし奏詩にしてみれば、それは思いも寄らない僥倖となった。


「そうとも言えるし、そうでもないとも言える」


 その説明をする前に今の銀河の状況を理解する必要がありそうな前置きをしてから、朱音はなんの警戒もなしに、自身の聖神聖衣を2人の前で披露してくれた。


(マジかよ……普通に質問しただけで見せてくれるとか、必死になって河嶋翔子を挑発して、漸く使用させたオレがバカみたいじゃないか……)


 嬉しい誤算、思わぬ収穫ではあったのだが、奏詩はどこか、素直に喜べないでいた。


「これが影崎朱音の、オーバーオール型の聖神聖衣『超魔(ゴールド)理王世界六十四層(エキノコリエンス)』。そして能力は」


 朱音は無慈悲なラッシュを、目の前のテーブルへと叩き込む。


 するとその盤面から、いくつものキノコたちが、にょきにょきと群生し始める。


「両の拳で叩くことで、様々なキノコを生まれさせる。例えそれが、なんの変哲もないブロックであろうと」


 椎茸・松茸・舞茸・えのきにブナシメジ。更にはカエンタケ・ベニテングタケを初めとし、見覚えはないがおそらく毒キノコであろうと推察されるものまで多種多様に、テーブルの上はびっしりと埋め尽くされてしまっていた。


(そうか……この能力ならば、隠そうとしないのも納得だ……いや、下手に隠蔽などしようものなら、間違いなく逆効果。ただ徒にがっかり感を生み出すだけ……ならば、早々にバラしてしまった方がずっといい。それくらい、つまりまぁ、なんというか、大外れの聖神聖衣……!)


 奏詩は脳内で、失礼極まりない分析を続ける。


(邪神装甲よりも遥かに高い性能を誇る聖神聖衣だが……そこに自由度はなく、本人の資質によって最初から決められているらしい……だから当然起こり得る。クソみてぇな能力で発現するというケースも。特に警戒する必要のない能力だろうが、そのことを知れた功績は小さくない。警戒心を他の4人に注力できるということなのだからな)


「うーん、そっかぁ……確かにキノコを生やすだけじゃ、翔子ちゃんと一緒に戦闘は出来ないもんね……だから役割分担してるんだねぇ」


「いや、何を言ってるんですか舞愛さん。モンスターを相手にするくらいなら、聖神聖衣なんて使うまでもありませんよ。身体強化だけでも十分お釣りが来る……レベル……」


 舞愛にツッコミを入れている最中、奏詩の脳裏にざわめきが起きていた。


 どうしようもない違和感が、そこにはあった。


(……そうだ。なんでわざわざ、モンスターの巣を駆除する程度の作業を、河嶋翔子に依頼する必要がある? そんなものは治安維持部隊の役割だ。武装した通常戦力でも、掃討は十分可能なはずなのに……それでも敢えて、数が非常に少なく、貴重極まりない聖女を動かす理由があるとすれば、それはつまり……!)


「……影崎さん。翔子さんが向かったモンスターの巣の場所、教えてもらえますか?」


「奏詩ちゃん? いきなりどうしたの?」


 舞愛の方はやはりまだピンと来ていないようだが、説明するつもりはない。


「可能。しかし恐らく手遅れ。翔子は気の進まない任務であろうと、牛歩戦術のようなくだらない真似はしない。あれは駄々をこねている幼児と同類」


「かもしれませんね。けど、アフターケアくらいは出来るかもしれませんし」


 奏詩の端末には、もう目標の位置情報が送られてきていた。


 朱音へと手早く感謝の挨拶を済ませながら、ラムネ菓子を装った疑似聖女変身薬『LGBT』を噛み砕き、窓を開放して外へと飛び出す。


 高層階の常識に倣い、生徒会室の窓も基本的には開かない仕様となっているのだが、利便性のために1箇所だけ、開放可能なものへと翔子が交換していた。先日の田中の一件でも、聖女タワーへ向かうために使用したものだ。


(一般女性によって編成された、治安維持部隊でも可能なはずのモンスター討伐を、聖女がやらねばならない理由があるとするならば、考えられる理由はただ1つ)


 現場へと急行しつつ、陰鬱としていた河嶋翔子の心中に思いを巡らす。


(想定以上にモンスターの数が多いとか、連携が取れているとか、罠や地の利を生かした戦術が優れているとか、要因はいくつか考えられるが……それらによって、既に治安維持部隊が敗北し、壊滅した後だということだろう。そして、女性だけで編成された治安維持部隊が、飢えたモンスターたちの手に落ちたとなれば、その後の展開は考えるまでもない……!)


 *


 翔子が聖少女学園を出発する少し前。


 自然洞窟を改築して造られたモンスターのアジトにて。


 最も大きな多目的ホールの中は、異様な熱気と、噎せ返るような臭いが充満していた。


 臭気の発生源は1つではないからこその密度。大部屋のあちこち、至るところで何十人もの女性たちが、性的な意味で犯され続けている結果。


 そしてその最奥、部屋を一望できる位置に陣取られた所謂玉座の三席には、3体のモンスター、トロルとオーガ、そしてグールがそれぞれにふんぞり返り、女性たちに口淫奉仕を強いていた。


 恥部は完全に露出して、衣服としての役割をまるで果たせていない卑猥な格好の、3人の女性たちに。


「ククク……いやぁ、それにしても、聖女どもが調子こいて女性専用社会の設立なんて言い出したときは、どうなるものかと思いましたが、これはこれでアリでしたね」


「いやいやまったく。普通に生きていたら、こんなハーレム状態なんて味わえませんでしたからね。オラ、もっと奥まで咥えるんだよ、あくしろよ」


「フフ……要は頭の使いようだ。間抜けな奴らは無様で惨めな最期を迎えているようだが、元軍人である我らにかかれば、強い武器を手にしただけの素人集団を返り討ちにすることなど容易いこと。奪った武器でこちらの戦力増強も出来るし、捕えた兵士たちはこうして便利な肉奴隷になる。一石二鳥とはこのことだな」


「ハハ、けどオレ、こういう上品な女が堕ちていくのもいいんですが、純朴な村娘とヤる方が、もっと好きなんスよね」


「わかっておる。略奪行為も続けていくさ、当然な。あの鬱陶しい空中要塞・天空城とやらを拠点に、天空騎士団は世界中を巡回しているそうだが、所詮は数百人規模の少数編成。辺境の小さな集落までは監視の目も行き届くまい。来週あたりには、この辺りが狙い目となるだろう」


 ボスらしきトロルが地図上の一点を指す。


「えっ、それって、今までより結構大きい町じゃないッスか?」


「クク……言っただろう? 戦力増強も進んでいるのだと。今の我らの規模なら、ここを落とすことなど他愛もない。そうなれば当然、得られる報酬もこれまでの比ではないぞ」


「うおお……興奮してきたな。あ、やべ、ついでにこっちも、もう……」


 グールが股間にしゃぶりつく女性の後頭部をがっつりホールドし、激しい前後運動を強要させる。


「ぐもっ、おぶぢゅっ、んぼ、んぶっ、んんんんっ!?」


 発射直前の限界まで肥大化した陰茎を喉奥まで突き込まれ、女性は涙を浮かべながら、苦悶の呻きを漏らす。


「うっ、だ、射精()すぞっ……! 零すんじゃねえぞ!」


 宣言の直後、グールはその全身を震わせ、フルチャージした白濁液を女性の口腔内へと、容赦なく全放出する。


「んむぅぅっっ! んっ、んぐっ、ごくっ……」


 性処理の道具として扱われながらも、吐き出された大量の精液を零すことのないよう、女性は喉を鳴らして懸命に受け入れる。


「ちゅぷっ、じゅぶ、ぢゅぶぶぶぶ……ん……ぷはぁ……はぁ、はぁ……とっても、濃くて、美味しい精液を飲ませていただき、ありがとう、ございました……」


 尿道に残っていた残滓まできちんと吸い上げ、お掃除フェラまでしっかりと済ませてから、女性は深々と土下座して感謝の言葉を述べる。


「フフ……2人ともイったようだな。となるとお前が最後の1人だが……さて、どうする?」


 オーガの方は既に2回目に突入していたし、グールの方もクライマックスを迎えたことで、中央のトロルは一旦、口淫奉仕を中断させる。


「は……はい……お願いします、御主人様。このぐちゅぐちゅに濡れた私のおまんこを、御主人様の太くて逞しいおちんぽで、メチャクチャに掻き回して下さい……」


「カカカッ! そうかそうか、もう我慢できないか、このいやしんぼめ! いいだろう、オレ様の極太ペニスで、盛大にイカせまくってやろうではないか!」


 言うまでもなく、こんなおねだりは彼女の本意ではない。勿論その前の土下座感謝もだ。


「すんません、リーダー。このババアの穴、どれもガバガバで使い物になんないんで、処分してもいっスか?」


 いよいよこれからという時に、下っ端のゴブリンに水を差され、トロルは少しだけムスッとなって答える。


「ああ、好きにしろ。但しあんまり放置すると臭いが出るからな。朝になったらちゃんと燃やしとけよ」


「ウス、了解っス。んじゃ早速」


 ゴブリンは手近にあった棍棒を手に取ると、散々レイプされ尽くして、肌も髪もボロボロになり始めていた女性の元へとにじり寄る。


「や、やめてよ……嘘でしょ? ずっと、あんたらに尽くしてきたのに、いきなりそんな物騒なもの持ち出すとか……」


 女性は後退りながら、許しを懇願する。しかしゴブリンの心は、そんなものでは些かたりとも動かない。


「寝言言ってんじゃねーぞ。使えなくなった道具は、廃棄処分が常識だろうがっ!」


「げべっ!?」


 地を這うゴルフスイングで、女性の腹部が思い切り殴り抜かれる。


 その衝撃は容易く内臓器官をぐちゃぐちゃに押し潰し、大量の血液と共に、吐瀉物が女性の口から逆流する。


「いいねいいねぇ! 最後くらいはそうやって、無様にのたうち回って愉しませてくれよぉ!」


 無抵抗な相手への容赦ない暴力行為は、そのゴブリンにとって比類なき愉悦であるようだった。


 すぐに死んでしまうことのないよう、手足などの末端器官から徐々に殴り潰す方向へシフトしていたのだから。


「やれやれ。ああはなりたくないだろう? ならもっともっと、我々を愉しませなければならんぞ?」


 トロルは後背位で激しく腰を打ち付けながら、涙を浮かべて怯える女性の耳元で囁いた。


 このアジトには、捕らえた女性たちを効率よく奴隷化するための、いくつかのシステムがある。


 捕獲した女性たちの中で、特に上質な好みのタイプから、リーダー格であるトロル、グール、そしてオーガの順に専用の奴隷として選択し、4人目以降は他のモンスター隊員たちへと分配される。


 更にモンスター隊員たちは所有しているスキルや、組織への貢献度を元に、A~Cのグループに分けられており、下に行くほど人数は多くなる。が、分け与えられる女性の人数は平等である。


「ククク……見てみるがいい。あっちのCグループ担当の女どもは、1人頭5~6人を相手にしなくてはとても回らない状況だ。もしもオレ様の機嫌を損ねるようなことがあれば、お前も明日にはあやつらの仲間入りをすることになるかもなぁ」


「い、イヤですぅ! もう私、御主人様のちんぽがないと、生きていけない身体になってるんですぅ! だから、もっと、もっと沢山愛してくださいぃっ!」


 最も効率よく奴隷を操るために役に立つのが、このような所謂「奴隷の鎖自慢」状態へと誘導してやることだ。


 支配者層から見れば、リーダー格専用であろうが、複数人から同時に輪姦され続ける最底辺肉便器だろうが、同じ奴隷であることに変わりはない。


 しかし当事者たちはその本質を見失い、上級奴隷であるために精一杯の尽力をし始めてしまう。


 ブラック企業の経営なんかも、細部は違えども手法としては大体似たようなものだ。


「クカカカ……! 可愛いやつめ、そんなに欲しいのならば、そろそろ1発目、濃いいのをくれてやろうじゃないか!」


 トロルは一切の遠慮なく、女性の子宮口に密着するくらいまで深く突き込み、溜まりに溜まった特濃の白濁液を盛大に吐き出させた。


「あヒィィィぃ! アツアツの御主人様ザーメン、たっぷりと注がれてますぅ! こんなに注がれたら、気持ちよすぎて、またイッちゃうぅぅぅッ!」


 嘘も吐き続ければ、やがて真実にほど近くなっていくものだ。


 この反応が演技であるのかそうでないのか、もはや彼女自身にも判別は難しくなってきているだろう。


「ククク……格別だな。やはり女は従順な奴隷としての生き方こそが最も美しい……女性の社会進出など、百害あって一利なしだ……!」


 大量の精を吐き出したことで、トロルはほんのりと賢者モードに差し掛かっていた。


「まぁ、あの女のように、気丈な奴も嫌いではなかったが、な」


 トロルは背後にあった玉座へと、どっしり腰を下ろし、大部屋の中央の、最も目立つ場所で行われている乱痴気騒ぎに目を向けた。


 彼らのシステムでは、捕らえた女性たちは基本的にすべて性奴隷として扱うことになっているが、全員が素直に応じるかと言えば、そんなことは決してない。


 くっころ姫騎士のように、服従よりも死を選ぼうとする、気概ある者も中には混じっている。


 そういった手合の者たちのために、ここのトロルたちは別の待遇をちゃんと用意していた。


 それは人間が得られる快楽の中で、最も大きいとされている、薬物を投与しての性行為。すなわちキメセクである。


「おごっほぉぉぉおぉ! おぢんぼ、もっど、もっどほじいのぉぉぉおぉ!」


 恥も外聞もなく、野太い絶叫を上げながら、際限なく穴という穴をほじくり回され続けている1匹のメス。


 彼女もここに来る前は、あんなけだものでは決してなかった。


 誰よりも誇りと気品を大事にする、高貴な目標を持った女性だった。


「ククク……それが今ではごらんの有様……やはり楽しいなぁ……人間が崩壊していく様は……!」


 誉められた感情では断じてない。しかしそれはどんな人間であろうとも少なからず持っている、下卑た快感なのであろう。


 某闇金マンガがウケた理由もきっとそこにあるはずだ。ヤクザバトルが見たいわけではないのだ。


「さて、若いもんどもに負けてはいられんな。そろそろ2回戦と行く……か……?」


 ボスのトロルは立ち上がろうとした。少なくとも本人はそのつもりだった。


 しかし現実には、前のめりに崩れ落ちるのみだった。


 危ない、と咄嗟に判断し、両手で受け身を取ろうとした。少なくとも本人はそのつもりだった。


 しかし現実には、顔面から地面へとダイブしてしまっていた。


「ぐ、ぐおっ、なんだ、一体、何が起こって……」


 トロルは状況を把握しようと務める。


 でも、それがいけなかった。


 うっかり神経を張り巡らせてしまったばっかりに、まだ気付いていなかった、両腕両脚の激痛を知覚してしまったのだから。


 バッサリと切断された痛みが、苦しみが、焼き焦がさんばかりの勢いを持った濁流となって、トロルの脳髄から理性と平常心を押し流す。


「ぐぎゃ、アガがガアあああああああ! な、なんだこれはぁぁぁあああああ!? 何が、一体なぁにがぁぁあああああ!?」


「救いようのない下衆どもが。しばらくそうやってのたうち回るがいい。徐々に失血死するまでの間、せいぜい懺悔することだ。自らの犯した罪の重さを噛み締めながらな」


 ひどく冷たい声音で告げたのは、1人の少女だった。


 奴隷として扱われる女性たちとは違う、整った身だしなみの。


「な、なんだこいつ……い、いつの間に……? し、しかも、全員やられているのか……?」


 四肢を切断され、ダルマになって転がっているのはリーダーのトロルだけではなかった。


 上級も下級も関係なく、その場にいたモンスターたちは1つの例外もなく、一切身動きの取れない惨状へと追いやられていた。


「こ、こんな芸当が出来るのは……まさか、お前、聖女……なのかぁ……?」


 少女に問いかけるトロルの口が、踏み潰される。


「懺悔なら心の中でしろ。口を開く許可は出していない。耳が腐る」


 その目に浮かんでいたのは、どこまでも深く冷たい、ひたすらなる憎悪。


 如月奏詩に挑発されたときとは比較するのも烏滸がましいくらいに、河嶋翔子はブチギレていた。


「……迎えの車は手配してある。代わりの服もそちらで支給されるだろう。まずはこの忌まわしき場所を離れるんだ。そして悪い夢だったのだと、すべてを忘れてしまえばいい」


 翔子は被害者女性たちに語りかける。


 溢れ出しそうな怒りを押し殺し、出来る限り慈悲の色を浮かばせた声音で。


「いいえ、翔子さん。残念ながら、それはまず不可能でしょう」


 しかし、彼女の提案はバッサリと却下される。予期せぬ闖入者によって。


 *


「ふむ、どうやら邪神装甲をものにしたようで何よりだ。実地試験を行ってもいい頃合いだろう」


「……ありがとうございます」


 先日の相談天国から暫く過ぎて、咲人と2人、一足早く邪神装甲の安定した発現を身に付けたところで、鳴海からそう告げられた。


「涼風くんはともかく、黒崎くんはあまり浮かない顔のようだ。やはり、まだ迷っているのかな?」


「いや……まぁ……そう、ですね……悪を為すことを頭ごなしに否定するつもりはなくなりましたけれど……やっぱりまだ、何を目指せばいいのかも、よくわかってないですから」


「無理もない。10代の内から自己を確立できる者など、相当稀だ。そこで1つ、役に立つかもしれない指針を授けよう。何が嫌いかで自分を語れ、と」


「え……? それ、逆じゃないですか?」


「ジャンプオールスターゲームでのルフィの台詞はそうだったな」


 原作では言ってないらしい。クラスのみんなには内緒だよ。


「他人とのコミュニケーション手段としてならばともかく、こと自分探しに関して言えば、嫌いなものや憤りを覚えるもの、許せないものと向き合う方が、余程効率的だ。それらの真逆にこそ、キミ自身の望む世界があるはずなのだから」


「反面教師……ってことですか?」


「そのようなものだ。何がしたいかがわからないのなら、許せない敵を否定し続けたまえ。いつかその内、答えが出るかもしれない」


「嫌いなものの真逆にあるのが……オレの……望む世界……そして……」


 *


 今はまだ、何も見えていない。兆しすらない。


 それでも、僅かな希望だけを頼りに、進んできた。


 これまでも。そしてこれからも。


「な……何故キミがここにいる……? 如月、奏詩……?」


「私の接近にも気付けませんでしたか。大分冷静さを失っているようですね」


(無理もないだろうがな。聖女といえども、若干14歳で体験するには、なかなかにハードな状況だ。初めてのことではないのだろうから、幾らかは免疫も付き始めているとしても、な)


「先程の態度と、影崎さんに聞いた情報から、あまり良くないことになっていると推察したものですから。それで翔子さん、このまま彼女たちを保護したところで、快方に向かうと本気で考えていますか?」


 支度を進めながら、翔子に問いかける。


 返事はない。


 同様の現場には既に何度も遭遇し、その際の被害女性たちの治療経過についても、ある程度は耳に入れているのだろう。


「人間の脳には忘却する機能が標準搭載されていますが、電子機器のように任意で消去する記憶を選べる程、便利には出来ていません。深く印象づいてしまったもの……特に恐怖や苦痛、絶望といった感情と強く結びついた悪しき記憶は、本人がどれだけ忘れたいと願おうとも、意思とは無関係にフラッシュバックし、却って強く心に焼き付いてしまうものです」


「そんなこと……! キミに説明されるまでもないッ! けど、だからといって、どうすればいいっていうんだ!? 記憶を自在に消去する能力を持った聖女を、用意できるとでも言うのかッ!?」


「いいえ、残念ながら。ですからせめて、ここを離れる前に、やれるだけのことはやっておきたいと思いまして」


「……何を、しているんだ? さっきから、一体……? モンスターどもの身体に繋げているそれは、携帯式のQEDじゃないのか……?」


 聖神力の応用によって造られた、医者いらずの万能治療キット。


 備え付け式のものよりも多少性能は劣るが、持ち運びに便利な小型サイズのものならば、部隊の後方支援役の標準装備にもなっている。


 予想通りこのアジトにも、戦利品として多数が残存していた。


「はい、その通りです。これだけの重傷で、これだけの数となれば、延命処置に機能を限定しても、1時間と持たないとは思われますが」


「ふざけているのか、キミは!? どうしてそんなドクズのモンスターどもを生き長らえさせようとしているんだッ!? そんなことをする必要が、一体何処にあるッ!?」


 翔子の堪忍袋も限界が近そうだった。


 そろそろ納得できる説明をしておかなければ、強硬手段に訴えられかねない。


「大事なことですよ。このまま加害者である彼らが死んでしまっては、彼女たちの恨みつらみをぶつける先が失われてしまうのですから。永遠に」


「……何を、言って……? キミは、何を……」


 しかし残念ながら、1から10まで説明している暇はない。


 こうしている間にも刻一刻と、四肢を切断されて血液を垂れ流し続ける、モンスターたちの命は消耗し続けているのだから。


「さぁ、殺しましょう。幸いにも、手頃な武器はいくつも転がっています。これまでに受けた痛みや苦しみ、屈辱と絶望を、ほんの僅かでもいいですから、彼らが死ぬ前にお返ししておきましょう」


 奏詩は高らかに宣言し、手近にあった無骨な棍棒を、虚ろな瞳の被害女性へ握らせる。


「や、やめろ奏詩! そんな、復讐を推奨するような真似をして、一体なんになる!?」


「翔子さん、知らないんですか? 復讐は何も産まないとか、新たな憎しみの種になるとか、色々言われていますけれど、実は滅茶苦茶スッキリするんですよ? まぁ、この惨状からでは長くは続けられないでしょうが、やらないよりはずっとマシでしょう。このまま死に逃げされてしまっては、彼女たちの心には拭えない敗北感が残るばかりですから」


「それは……そうなのかもしれないけど……だからといって、彼女たちに手を汚させるわけには……!」


「今更綺麗事を言っても仕方ないでしょう。彼女たちは既に、心も身体も散々穢しつくされた後なんですから。中途半端に手だけ清潔感を大事にさせたところで、それこそなんになるんです?」


「でも……だからといって……こんなやり方は間違っている……」


「そうですね。本来であれば、被害者女性1人1人に生涯寄り添う覚悟で、心のケアをしていくことが、最も正しい選択だとは思いますが。生憎私にはそこまでのことは出来ません。ならせめて、今出来るだけのことはやっておきたい。そういう話です」


 禍々しい、血に塗れた棍棒を手にした女性が、ゆらりと立ち上がる。


「やめろ……やめるんだ……」


「やってください。今晴らしておかなければその怒り、貴方が死ぬまで心の内に留め置くことになりますよ」


 天使と悪魔の助言かのごとく、翔子と奏詩が呼びかける。


 その、結末は。


「う……あああああああああああっっっっっ!!!!!!!」


 地獄の底から溢れ出したかのような絶叫と共に、鈍い潰滅音が鳴り響いた。


「ぐぎ……いっぎいぃぃぃいいいいいいいい!? !? !? !? !?」


 一拍置いて、次に響くはトロルの絶叫。


 生殖器を含む下腹部がグッチャグチャに破壊され、体液と臓物とが、あちらこちらに飛び散っていた。


「あ……あは……あははあはっはっはははははぁ! ざま、ザマァ見ろ! よくも、よくもお前なんかが! ドグサレゴミカス野郎が! よくも、よくもぉぉぉおおおおおおおお!」


「ひ、ひぎぃぃぃい! やめ、やべでっ……やべでぐええええええ!」


 女性は狂ったように、2度、3度と力任せに棍棒を振り下ろし、トロルの肉体のあちこちを粉砕していく。


 本来であれば、既に出血性ショック死していてもおかしくないトロルであるが、そうはならない。


 感情を持たないQEDが、与えられたプログラム通り、無慈悲なまでに意識を覚醒させ、生命活動を維持し続ける。


 今の彼にはもう、自らの意思で生命を終わらせることすら許されない。


 QEDですら手の施しようがなくなるまで、無抵抗に肉体を破壊され続けるしかない。


「クッソがぁ! 調子に乗りやがって!」


「死ね! 死ね! 死ねぇ! 苦しみながらゆっくり死ねぇ!」


 最初の1人に触発される形で、狂気の殺意は瞬く間に、殆どの被害者女性にも伝播していた。


 もはや暴力に身を委ねていないのは、部外者である翔子と奏詩、蘇生処置も間に合わずに絶命してしまった亡骸たちと、精神を完全に破壊されて、廃人同然となってしまった者たちだけだった。


「こんな……酷すぎる……奏詩、こんなものが、キミの望みなのか……?」


 嗤いながら、哭きながら、狂気の凶器を振り回し続ける女性たちは、さながら悪鬼羅刹のごとく。


 経緯を知らない者に「ここは地獄です」と説明したとて、おそらく疑いを抱く余地はあまりないくらいには、壮絶な光景が広がっていた。


「た……たしゅけて……も、もう、殺して……ころしてくだしゃいぃ……」


 暴虐の嵐の中から、幸運にも這い出してきたらしいモンスターの一体が、縋り付くように奏詩へと懇願する。


 命乞いならぬ、絶命乞いとでも言ったところか。


「お、おれたちは、ただ、悔しかっただけなんですぅ……いきなり、おまえらは人間じゃない、なんて言われて……化け物扱いされて……それで、おれたちだって、復讐しただけなんですぅ……」


 彼の発言は、絶命欲しさによるでまかせでは決してない。


 この世界でモンスターと呼ばれ、忌み嫌われている者たちは、聖女戦争が終結する前までは、れっきとした人間だったのだから。


「そうですね。けれどそれは、ここにいる彼女たちが始めたことではありません。ならばあなた達の復讐は、正当なものとは言い難い。憂さ晴らし、或いは八つ当たりと呼ぶべきでしょう」


 奏詩は足元の彼を一瞥することもなく、冷たく言い放つ。


 普通の人間が、聖神力による作用によって肉体を変異させられ、怪物となった……などという話ではない。メルヘンやファンタジーではないのだから。


 彼らは肉体的にも、精神的にも、一切変調を来たしてはいなかった。


 昨日までと何も変わってなどいなかった。


 それでも聖天騎士団は、理不尽に彼らから人権を剥奪した。イケメンである一部を除いて。


 そして大多数の、生物学的にはホモ・サピエンスのオスである者たちは、社会的には人間ではないとされるに至った。


 背の小さい者は『ゴブリン』太った者は『トロル』痩せ細っていれば『グール』メガネの陰キャは『チータウロス』頭皮の薄い者は『ハゲ』筋肉モリモリのゴリマッチョなら『オーガ』といった具合に、化け物としての種族名を与えられて。


「世界に不満があるのならば、自分を変える……というのが、利口で賢明な生き方だったのでしょうね、きっと。すべてを諦めて、救いはないのだと悟りを開いて、霞を食べるかのようにして辛うじて生き、それすらも叶わなくなったなら、潔くこの世に別れを告げる。そんな風に振る舞っていれば、このような苦痛に満ちた結末にはならなかったのでしょう」


「そ……そんなの……あんまりじゃあないですかぁ~……」


(ああ、そうだな。そんな生き方、クソくらえだ。世界に不満があるのなら、間違っているのが世界の方だと確信があるのならば、変えるべきは自分なんかじゃない。世界の方だ。ならばオレは……!)


「オイゴラァ……なに逃げてんだよクサレゴブリンがぁ……こんなもんじゃ全然たりねぇぞ……!」


「ひ、ヒィィィ! も、もう許して! はやく、殺し、ぶぐぅえええええええ!」


 必死に絶命乞いしていた彼は、呆気なく掴み上げられ、棍棒でフルスイングされて暴虐の嵐の中へと飛んでいった。


(……1人くらいは、さっさと死なせてやっても良かったのかも……な)


 見捨てることに、心がまるで痛まないわけではなかった。


 名も知らないし、面識なども一切ない。


 加えて彼らの行っていた所業を鑑みれば、同情の余地も基本ない。


 それでも、ある日突然モンスターとして迫害されるようなことさえなければ、きっとこのような凶行に走ることもなく、おそらくは殆どの者たちが、平穏な人生を全うしていたであろうことを考えれば、ほんの少しの憐憫や哀愁の念が浮かぶのも、やむを得ないことではあった。


 *


 迎えの大型車が洞窟前に到着する頃には、原型を留めているモンスターは1匹たりとも残っておらず、ミンチより酷い肉片と体液の残滓が、至る所にこびりついているだけとなっていた。


 いつもとは違う返り血塗れの被害者女性たちに、回収スタッフも驚きを隠せないようではあったが、取り敢えず病院への輸送を優先していた。


 走り出した大型車を見送りながら、翔子はか細く呟く。


「彼女たちは……あれで本当に立ち直れるんだろうか……」


「さぁ。そんな単純ならいいんですけど、難しいでしょうね。多少の鬱憤晴らしにはなったかもしれませんが、それだけでこの話はおしまい……なんて出来る程、人間の感情は便利ではありませんから」


 沈黙が訪れる。


 こんなやり方は翔子にとってはまるで想定外だろうから、まだ混乱しているのかもしれない。


(……任務達成のことを考えるなら、今回の件は完全に悪手だろうな。彼女がどういう結論に至るかは知ったことじゃないが、いい方向に関係性が進むとも思えない)


「さて、帰りましょうか。影崎さんにも報告しないといけませんよね? まだ生徒会の仕事もあることでしょうし」


 これ以上暗い空気を蔓延らせておいたら、更に悪印象へと向かいかねないと、奏詩は一歩を踏み出した。


「奏詩……1つ、聞いていいだろうか」


 少しだけ振り返り、どうぞと促した。


「もしかして……キミも……」


 翔子はひどく躊躇っているようだった。


 彼女らしからぬその態度から、相当メンタルに来ていることが窺える。


「いや……やはり、いい。忘れてくれ」


 奏詩は短く、そうですか、とだけ答えた。


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