原爆落としただけのなんでもない日おめでとう。
ハハッ
「いきなり呼び出してすまないね、こんな時間に。キミの意見を聞いておきたかったんだ。まずはこれを見てほしい」
指定された現場、外部との出入りを管理する施設へと到着して早々に、翔子が再生したのは監視カメラによる記録映像だった。
不審者を呼び止めていた2人の警備兵が、なんの前触れもなく崩れ落ちる様。
「カメラのフレーム数が追いつかない程の高速で、何かをしているということもないようだ。本人たちに聞いても同様らしい。そうだろう?」
「はい……特に痛みなどはなかったように思います。ただ息が出来なくなって、急速に意識が薄れていったような……」
当事者たる彼女らは記憶が曖昧な部分も多いのだろう、3人目の女性が説明を引き継ぐ。
「私が現場に駆けつけたとき、2人は間違いなく絶命していました。すぐにQEDで蘇生処置を施したおかげで、どうにか一命は取り留めましたが、あと少し遅れていたら、おそらく……」
QEDとはAEDの発展型として、聖神力を応用して作られた医療機械のこと。
発展型とはいうものの、その性能はもはや別物で、既知の怪我や病気なら、殆どの原因に対して即座の治療が可能。
加えて未知のものすら半日と掛からずに治療方法を確立する壊れ性能を有している。もはやRPGの『どくけし』や『ばんのうやく』レベルの代物だ。
「侵入者は確か自分のことをタナトスと……そう名乗っていたように記憶しています」
「死を司る神……ですか。つまりは相手の肉体に直接触れることなく、即死させる能力……ということでしょうか?」
「……やはりキミもそう見るか。俄には信じがたいが……そんなことを可能とする以上、この犯人は聖女ということになる。放置しておくわけにはいかない……か」
「行き先に目星はついているのですか?」
「領域内の監視カメラ映像を元に、朱音に捜索してもらっている……と、噂をすれば影、というやつかな。どうやら現在は、聖女タワーの展望台にいるようだ」
携帯端末を手早く確認し、翔子が伝える。
「観光目的……ではないでしょうね。挑発しているつもりでしょうか?」
「状況的にはそう考えるのが妥当だが……一体何を企んでいるのか、見当もつかないのが不気味だな。万が一に備えて、キミにも同行してもらいたいが……」
「ええ、構いませんよ。この犯人の目的については、私も気になりますので」
いつものクセでラムネを頬張る振りをして、LGBTにて変身する。
「助かる。では行くとしようか」
白銀の翼を広げた翔子の、差し出す手を取る。
*
聖少女領域のシンボルの1つとして建造された、全長6340mを誇る聖女タワーは、外周からは随分離れた中心部近くに位置している。
それでも翔子の『深淵より来たる風』の速度をもってすれば、一瞬で到達することが可能だった。
「……いるな。逃げる素振りもない辺り、やはりボクたちが来るのを待ち受けていたわけか」
10tトラックが時速100kmオーバーで激突してもビクともしない超強化ガラスをあっさりと切断し、翔子と奏詩は展望台の中へと入る。
内と外の凄まじい気圧差で生じる、獰猛な空気の奔流をものともせず。
「キミのことはタナトスと呼べばいいのかな? 何が目的だい?」
「来たか。聖少女学園・現生徒会長の河嶋翔子……聖少女領域の実質的なトップが真っ先に出向いてくれるとは、話が早くて助かる。さて、目的の件だが……元々は、ここを全滅させるつもりだった」
黒衣の人物が、静かに顔を上げる。
フードは深く被ったままで、その表情は窺い知れない。
「それはまた、随分と物騒だね。しかし過去形ということは、もうそのつもりはない、と捉えていいのかな?」
「そいつはあんたの返答次第だ。ここの住人全員が、我に忠誠を誓い、絶対服従するというのなら、命は助けてやってもいい。聖神力の恩恵によるものか、我が知る頃よりも、いい女が多い。ただ殺すのは惜しいと思えるくらいにはな」
「……能力もさることながら、物言いもまるで聖女らしからぬ俗物さ……本当に、キミは一体何者なんだい? あまりにもボクの理解を超えているよ」
「話を逸らすなよ。あんたの命は、既にこのタナトスの手に握られているんだからな」
「驚いた。つまらない冗談かと思って聞き流したつもりだったのだけれど、さっきのが本当にキミの要求なのかい? なら答えはノーだ。住人全員の意思決定を代行する権限などボクにはないのだから、そもそも成立しえない交渉だけれどね」
タナトスは、ゆらりと立ち上がる。
「そいつは残念だ。面倒、と言うべきかな。一括で服従してくれれば話は早かったのだが。要求に応じない者を、1人ずつ殺して回らなきゃならないとはなぁ」
そしてフードの隙間から、下卑た笑みを浮かばせる。面倒というよりは、寧ろ楽しげに見えた。
「殺して回る……か。キミの、おかしな能力でかい?」
「おかしい? ああ、確かにその通りだなぁ。まずは、手始めにあんたから、たっぷりと味わわせてやるよぉ!」
タナトスの左目が、真紅に染まる。
(……いや、そう見えているだけ、か。あれはおそらく、コンタクトレンズ型の邪神装甲。聖神力消費を極限まで削減した結果……でもないか、あいつの場合)
「我に逆らう愚か者は……死ねぇッ!」
その命令に呼応して、翔子の身体がビクン、と硬直する。
生命活動を停止……死んだのだ。
「……やはりそうなのか。目視した相手を即死させる能力……」
息を吹き返した翔子が呟く。
「ふあはははははは! 今更気づいたところでもう遅い! 聖女は3度の即時転生で聖神力を封じられ、一般人と化す! そうなってから、たっぷりと甚振らせてもらうぞ! もう一度だ、死ねぇ!」
2度目の即死。そしてすぐさま蘇生。
(聖神力を知らない第三者視点では、ほんの一瞬、翔子がスタンしているくらいにしか見えないだろうな。いや、実際その通りなんだけど)
「どうだ、怖いか!? 恐ろしいか!? 絶望するがいい! そして平伏すがいい! 我が力の前になぁ! これで終わりだ! 死ぃねぇぇええええ!」
3度目の死。
それでも翔子の様子に変化は訪れない。
「クハハハハハァ! これでも涼しい顔を崩さないとは、大したものじゃあないか! ただの一般人に成り下がったというのに! もはや我に抵抗する力も失ったというのに! そういう強気な女ほど、屈服させがいがあるってもんだぁ!」
タナトスは、無警戒に翔子へと接近する。
邪神装甲に覆われていなくとも、聖神力を循環させた肉体と、そうでない生身とでは勝負にもならない、という理屈に従うなら、間違った行動ではない。
「さっき言ってた、オレの能力がおかしいって、弱すぎって意味だよなぁぁぁぁ!?」
勝利を確信したまま、タナトスが襲いかかる。
「なんだ。自覚はあったのか。その通りだよ」
鮮血が、舞う。
不用意に伸ばされていたタナトスの右腕が、バッサリと吹き飛んだことによって。
「ふむ。なんらかの隠された真意があるのか、とも勘ぐってはみたけれど、どうやらそういうことでもないらしい」
「え……? なんで……? あれ? オレの腕が……なんで?」
力なく打ち捨てられた右腕を、タナトスは呆然と見つめていた。
聖神力はある程度までの痛覚による信号を、感覚ではなく情報として処理できるため、ちょっと腕が千切れたくらいならば、痛みに悶えることもない。
強すぎる痛覚衝撃は生身でも、理解や反応が遅れることはあるそうだが。
「キミ程度を相手に、たった1枚とはいえ『深淵より来たる風』の刃を用いる必要もないのだけれど……無駄に3度も殺されてあげたんだ。これくらいの憂さ晴らしは構わないだろう?」
翔子は指2本で挟み込む形で、白銀の刃を見せつける。
「な、なんだよ、それ……そんなチャチな刃物で、オレの腕を切り落としたってのかよ!? お、おかしいだろ!? オレは聖神力で身体を強化してんだぞ! それに、なんでそんな素早く動けんだよ!? 3回死んだんだから、もう聖神力は使えないはずだろぉ!?」
タナトスは、絵に描いたような狼狽っぷりを惜しげもなく披露する。
(流石に翔子の不信感も、限界を越えそうだな……このまま奴を放置しておいたら、疑似聖女のことまで知られてしまう。やはり、同行してきて正解だったか)
「聖女が即時転生3回で使用限界に達し、オーバーヒート状態になる、という目安はその通りですが……それはあくまで死に至る程の肉体損壊を、すべて聖神力によって自動復元した場合の弊害です」
懇切丁寧に、奏詩が説明を始める。
「時間が経てば、やがて通常の肉体組成として馴染んでいきますが、転生直後の肉体状況は聖神力の塊.
となります。とどのつまり、聖神聖衣の顕現と同じ現象です。それだけのの聖神力をオートで消耗してしまうわけですね」
しかも、自らの肉体と化すわけだから、聖神聖衣のように返納することもできない。
(邪神装甲の構築を開始する前に、鳴海先生がちゃんと説明してたんだけどな……どうせちゃんと聞いてなかったんだろうが)
「貴方のように、肉体損傷に関係なく、対象をただ死に至らしめるような能力を用いた場合、強制的に消耗する聖神力は必然的に小さくなります。せいぜい心臓の活動を正常に戻すくらいですかね? そんな程度では、何十回、何百回繰り返したところで、聖女はオーバーヒートなんてしませんよ」
「は……はぁぁぁぁ!? なんだよそれ!? 聞いてねぇよ!? じゃあオレの能力、まったくの無意味だってことになるじゃあねーか!?」
「だからさっきからずっと、そう言っているだろう? というか聖女に覚醒した時点で、自然と理解するはずなのだけれど……本当にキミはなんなんだい? 聖女に似た、まったく別の存在だとでも……」
(さて、一体どうしたものか。口封じに横から殺害するというのも、あまりに不自然……かといって、奴の性格では秘密を守り通すことなんて……)
「取り敢えず、ゆっくりと話を聞かせてもらう必要がありそうだね。同行に応じてくれることを願うよ。拒否するようなら、一旦ダルマにでもなってもらうとするかな……」
翔子はそこでハッとなったように、少しだけ考えこんでから、質問する。
「キミ……自己再生くらいは可能だよな? 軽い気持ちで右腕を切り落としてしまったのだけれど」
(その点は心配無用だ。疑似聖女でも自己再生は行える。LGBT1錠の効果量は全消費してしまうが)
「勝手に連れて行かれるのは困るなぁ。それはアタシの所有物なんだから」
気配と声に、奏詩と翔子が振り返る。
砕けた超強化ガラスの向こう側、高度6000m超えの空中に、1人の女性が浮かんでいた。
「……タナトスのお仲間かい?」
翔子が問いかける。タナトスよりも、話が通じやすそうと踏んだのだろう。
「関係性かぁ。上司、っていうのが正しいかなぁ。ほんと、鬱陶しいよねぇ。不出来な部下の後始末なんかもしなくちゃいけないのが、幹部のつらいとこね」
「責任はきちんと取りたまえよ。一体キミたちの目的はなんなんだい? 何故聖少女領域に無断侵入し、全滅だの絶対服従だのを画策していた?」
「いやいや、それは勘違い。アタシらは別にそんなこと望んでないって。そいつが勝手にやったことでさ。アタシはただ、連れ戻しに来ただけなんだってば。面倒くさいけど」
「ああ、そういうことなら同情するよ。聖少女学園生徒会長として、こんな狼藉をやらかした輩を、素直に引き渡すわけにはいかないからね。連れ戻したいのならば、キミも同席して、こちらの質問に答えてほしいものだ。おそらくは結果的に、それが一番早く帰れる方法になるはずだからね」
「ん~~……拒否しまーす。多分これが一番早いと思うので」
宙に浮かぶ女性の右肩に、巨大な筒が現れる。
「バズーカ型の聖神聖衣……!? 力づくでやるつもりか!?」
「答えはYES……『落寸号令雷』……発射♡」
極大の閃光が走る。
眩いばかりの奔流は、聖女タワーの展望台部分をまるごと削り取り、蒸発させて無に還す。
聖神聖衣で防御していなければ、翔子もまた、塵と化していたかもしれない。
「ちっ……こんな所で、無茶をしてくれる……ッ!」
聖女タワーの展望台は頂点ではなく、地上から8割程登った位置にある。
そこが消滅したとなれば、その更に上の2割も連鎖的に崩壊するのは自明の理だった。
「『深淵より来たる風』、出力全開……ッ!」
対閃光・対衝撃防御のために、翔子の身体を覆っていた白銀の羽たちが、落下倒壊する聖女タワー頂上部分へと殺到する。
加速した聖女時間の中では、重力に基づく自然落下の速度など高が知れている。
が、質量に関しては話が変わってくる。
聖神聖衣の出力を以てしても、10万tを超える巨大物体を受け止めることは決して容易ではない。
「修復には時間を要することになるだろうが……地上へ落とすわけにはいかない! 一旦破壊する!」
それはさながら、吹き荒ぶ白銀の暴風だった。
直径1kmにも達する神ハルコンの建造物を、切り刻み、破砕し、衝突させて押し潰し、巨大な鉄塊へと変容させた後に、残ったタワーの頂点部分へ誘導し、慎重にバランスを調整して安置する。
「あはっ、すごいすごいっ! アンタの聖神聖衣、とっても器用に動くもんだねぇ。聖女タワーの倒壊をあっさり防いじゃうなんて、いやぁ、いいものを見せてもらったなぁ」
「どこまでも巫山戯た態度を……! こんなことをして、ただで済むと思ってはいないだろうね?」
「おー、怖い怖い。でも残念ながら、アタシを追跡する余裕はないよねぇ? そんな不安定な状態、聖神聖衣で支えてないと、風に煽られたら簡単に落下しちゃうだろうし、もしそうなったらぁ、巨大隕石の落下くらいの被害じゃあ、済まなそーだよねぇ?」
「……もう一度問おう。キミたちは一体何者だ? 何故こんなことをする?」
「んー……答える義理もないんだけど、素敵な見世物のお礼に、名前くらいは教えてあげようかな。アタシの名前はオティヌティヌス。聖女たちと敵対する、とある組織の一部隊でリーダーやってまーす」
「オティ……? 名前まで巫山戯ているな」
「あー、ショックだなぁ。結構気に入ってるんだけどなー。ま、いいや。今日のところはこの辺で。まったねー」
悠々と、オティヌティヌスなる珍名を名乗った女は飛び去っていく。
「……ああ、いいだろう。いずれ会うつもりなら、その時は容赦しないさ」
精一杯の強がりを吐き捨てる。
『深淵より来たる風』総戦力の4分の1程度を聖女タワーの倒壊防衛に回さなくてはならない状況で、満足に戦闘が出来ると思える程、翔子の頭はおめでたく出来てはいない。
「あのタナトスとかいう奴は、おそらく奏詩が追跡してくれているはずだから、そちらに期待するとして……朱音、すまないけど、ちょっと救援を頼む。自由な身動きが取れない状態にされてしまったものでね」
朱音に連絡し、至急対策を依頼する。
分離した羽の推進力が尽きる前に一旦本体へと戻す交代制でなければ、巨大な鉄塊を支え続けることは不可能なので、この場を離れるわけにはいかなかった。
*
「はぁ……はぁっ……あのドクサレチンポ女がぁ……! あんなとこからこのオレを吹き飛ばしやがって……ああクソ! 右腕もどっかいっちまったしよチクショウ!」
息を切らしながら、タナトスは海から這い上がる。
オティヌティヌスの核バズーカーの衝撃波によって、聖少女領域外縁を覆うバリア・フィールドへと衝突し、そのまま旧東京湾へと墜落した形だ。
翔子が全力で防御していなければ、今頃は跡形もなく消し飛んでいたはずなので、生きているだけでも儲けものなのだが。
「とにかく今は逃げなきゃいけねーっつーのに、LGBTの効果も切れちまいやがった……! ああクソ、いってぇんだよボケがぁ!」
聖神力の防御を貫通した熱波による、全身の火傷が完治に至る前に変身が解除された形。
身が焦げ、燻っている。耐えられない程ではないにしろ、激痛に苛まれ続けている。
一刻も早く、次の錠剤を摂取したいところだったが、ポケットに携帯していた分の予備薬は、先の一撃によって衣服諸共、消し炭と化している。
一応宿泊施設まで戻れば、あと数錠くらいは残っているものの、それは聖少女領域の外。
全裸の大火傷男が関所を突破する方法なんて、そう簡単に思いつくはずもなく、途方に暮れながら悪態をつき続けるしかなかった。
そこへ、1つの足音が近付いてくる。
「あ……? なんだ、お前かよ。ビビらせやがって。ま、いいや。ちょっとLGBT分けてくれよ、黒崎」
「今の私は、如月奏詩です」
タナトスとは違い、すかさず翔子の陰へと隠れたため、ほぼノーダメージで核バズーカーを切り抜けていた。
「どっちでもいいっつの。はぁぁ~……つーかお前さ、知ってたんならちゃんと教えとけよ。聖女に即死攻撃が意味ねーって」
「説明なら鳴海先生がちゃんとしていました。貴方が聞き逃していただけです。それよりも貴方の行動、組織の命令ではありませんよね? そんな能力だと知った上で、ここへ送り込んだりはしないと思うのですが」
(厄介払いのため、無駄死にさせるつもり……という線もなくはないが、流石にリスクが大きすぎる。組織内部で秘密裏に粛清した方が、遥かに確実だ。とどのつまり……)
「うっせぇわ。オレに実力を認めねー五輪のバカにムカついたからよ、薬をパクって来たに決まってんだろ」
「呆れますね」
「んなことはいいんだよ。それよりホレ、LGBT寄越せっての。ケチケチしてんじゃねーよ。手持ちの分がさっきので燃えちまったんだよ。ホテルに戻ったら、そこで返すからよ。そんならいいだろ?」
「その前にもう1つだけ。これからどうするつもりですか? 聖女に能力は通じない。組織からの追手からも……おそらく先程のタワー襲撃者がそうなのでしょうが……逃げ切れるとは思えませんが」
「あー……ま、なんとかなんだろ。聖女には効かなくても、普通の女になら有効だろうしな……待て、殺さずに拉致るだけなら、身体能力強化だけでも充分じゃね?」
徐々に下卑た笑みを浮かべ始める。
「聖女以外の女どもも、見た目レベルがかなーり上がってるし、奴隷ハーレムとか作るのも悪かねーな。いや、かなりいいんじゃね? おい黒崎、お前も一緒にどうだ? 肉便器牧場物語の幕開けだ!」
あまつさえ、奏詩を性加害の計画に勧誘しようとさえする始末。とうとう出たね。。。
「……そんな気はしていたが、やっぱりあんたは、何も変わっちゃいないんだな」
「おい……おいおい、何してんだよ? 物騒なモンおっ勃ててんじゃねーよ。しまえよ、こえーな」
奏詩は聖神聖衣を展開していた。無骨な凶器が闇の中で妖しく映える。
「同じ部隊にいた縁もある。せめて痛みのないよう、一撃で頭を消し飛ばしてやる」
ゆっくりと、しかし迷いはなしに歩み寄る。
「は……はぁ? 意味わかんねーって! なんでオレが殺されなきゃなんねーんだよ!? お前、ちょっと落ち着けって! 自分が何言ってっか、わかってねーだろ!?」
奏詩はもう何も言わない。
座り込んだまま後退りするタナトスに、照準を合わせる。
「ざ……ざけんな! てめぇ、オレをビビらせようとでもしてんのか!? 面白くもねぇドッキリだな!? やれるもんなら、やってみ」
宣言通りに、頭部が一瞬で掻き消えた。
「……しまったな……ここの地面、ただのアスファルトっぽい……」
巻き添えを食い、歪に砕けて変形してしまったアスファルトを見て、奏詩はぽつりと呟いた。
自動修復機能がついているわけもない。破壊の痕跡が、バッチリ残ってしまっていた。
・タナトス(本名:田中俊夫)
邪神装甲名『超絶最強魔神伝説』
完全敗北・・・・・・死亡。




