属国の牙
アリシア「開いて頂きありがとうございました!」
エレン「今日は私達出ないらしいですわよ?」
アリシア「えっ?」
ミサ「そうそう、今回はミサ回なのよ」
マリア「いいえ、ミサ様。マリア回だから」
エレン「貴方達も出ませんわよ?」
アリ・ミサ・マリ「「「えっ」」」
//*** 19 ***//
ジャルドの城の中で、マルクはセシルへ興味深そうに笑いかけた。
にやにやと笑うマルクに、セシルは気分を害しながら目を逸らした。
二人の対話は続く。
「それで責任を取って王位継承権を剥奪され、アリシアに婿入りか」
顔を引きつらせながら、セシルは頷く。
「私は聖女の言葉を信じて大軍を動かしましたからね。アリシア様には酷い事をしてしまいました」
「あんな醜いのに婿入りするとは、これからも皆の笑い者だな」
女性に向かって醜い、と言う言葉を聞いて、セシルは嫌悪感から睨みつけた。
ジャルドの王に向かって意見をすれば、リカルドとの関係が悪化する。
属国とはいえ、王をこちらの兵が殺害した上に、責任者だった王子が喧嘩を吹っ掛ける訳にはいかない。
セシルは、ニヤニヤと汚く笑うマルクに対して、笑顔で答えた。
「ええ、私みたいな阿呆な男にはお似合いでしょうね」
余裕を持っているように装い返した言葉に、マルクは苛立つ様子を見せた。
「アレは俺が女に慣れるための練習台として使ってやってた女だ。弱国の王子には丁度いいかもな」
最後の一線を越えて無いとはいえ、実際にそういう扱いをしていた。
アリシアの事情は母親、ミサから聞いている。
奴隷同然の扱いだったとは聞いていたが、そんな事まで、と。
元ジャルドの王である父親を、リカルドが殺してから何年もそんな思いをさせて来たのだ。
それの原因が、勇者達の暗殺である。当時、マリアに浮かれていた自分が許せなく、情けなかった。
「まあ、無駄話はいい。それで、どう責任を取る?」
「リカルド王からの手紙を預かっています。どうぞ」
その手紙には、
軍を出させた責任として、ジャルドのこの度の軍費は全てリカルドが持つ事
ジャルド国に感謝し、リカルドの豊かな農村地区を譲る事。
ジャルドが賠償金を支払う事。
ジャルド国が主国であるリカルドから独立する場合は、無条件にて認める事。
どれも、国として……属国としては異常ともいえる内容が記されていた。
これが普通の戦争であったなら、王が戦死していたとしても、どれだけ貢献したとしても。
税の一年免除でも取れればいい方だろう。
だが今回の戦争は、勇者達のせいで味方を騙し討ちした、と取られても仕方が無い事をしている。
その負い目もあり、アリシア国は旧ジャルド領である。手違いとしても、同族同志で争わせたという弱みもある。
何より、アリシア国はジャルド国を通らなければいけない。
出来る限り、いい関係を作りたいのだ。
その思いから出した要求であったが、わずか十五歳にも満たない少年はその譲歩が解らない。
「話にならんな」
その一言は、セシルとリカルド国の護衛だけではなく、ジャルド国の重鎮も驚き絶句した。
「こっちは父、王を殺されている。この条件に加えエルト王の首を差し出すくらいはしてもらいたいところだな」
「何だと……?」
「ああ、王妃の首もセットくらいでないと釣り合わないか。ジャルド国の貧民街が独立した程度にやられる弱国だしな」
「リカルドを侮辱するつもりか?」
「侮辱だと?ジャルドの王だぞ。貴様ら弱国の王、王妃の首で我慢してやろうと言っている慈悲が解らんのか?」
その一言に、セシルの護衛が怒りを露わにして、ジャルド王に掴みかかろうとした。
「おい、リカルドは他国の王に向かって兵をけしかけるのか?」
「……よせ」
リカルドの護衛を止めると、悔しそうに手を放した。
「おい、そこの弱国の王子。この落とし前はどうするんだ?」
不愉快そうにセシルを睨みつけるマルクに、セシルは頭を下げた。
「……申し訳ありません、ジャルド王、マルク様。この物には後程きつく言い聞かせておきます」
そこで、マルクはさやのついたままの剣をセシルの方へ放った。
床を滑りながら、セシルの足元に来る剣を見て、セシルは意図が解らず顔を上げる。
「その無礼な奴の首を落とせ。非力な弱国の王子でも、それくらい剣は扱えるだろう」
「……できません、お断りします」
「そいつを牢に入れ、リカルドに宣戦布告を行う。セシル王子は護衛の兵でジャルド王を傷つけ、謝罪を拒んだのだ」
「何を馬鹿な事を……」
「馬鹿な事だと?アリシア国……旧ジャルドの貧民街にも負ける弱兵しかいないリカルドが、叔父を暗殺し属国化して虐げ、父を殺し、今の王を傷つけたのだ。我々もそこまでお人よしではない」
アリシアはジャルド国の中で見下されていた貧民都市である。
その貧民都市に、戦力のほとんどを使って敗戦した。
ジャルド国民は、この事でリカルドは弱国である、という印象が生まれていた。兵は簡単に集まるだろう。
アリシア国の勝利がまぐれだったとしても、現状で軍に大きな打撃を受けているリカルドが、ジャルドと争う戦力は無い。
人、技術、資源が豊富にある弱った大国。そして勝てる可能性が高い、ともあれば後は攻め込むきっかけさえあればいい。
リカルド王のエルトは、そのあたりを警戒し、他国との友好をアピールしながら、防衛力を戻そうと尽力していた。
リカルドに手を出すと、第三国が敵にまわる。さらには、ジャルド戦力がそのまま残っている。
今回のジャルドへの大きな譲歩も、その戦力としての抑止力、という意味合いも入っていたのかもしれない。
ただ、唯一の誤算は、前王であれば喜んで飛びついたこの条件も、あっさり蹴った事だ。
前王は、兄、シャルルの存在があったため、貴族として育てられた。
王を助ける人、としての教育がされていた。
彼とは違い、マルクは貴族としての教育を受ける前に父が王位についた事から、次代の王としての教育がされている。
顔色を窺うような前王とは全く違っていた。
「リカルド国へ王子の身柄を元に臣従を求めよ。臣従しない場合は、王子の首を届けさせ、宣戦布告だ」
長きに渡り平和だったリカルドへ、属国のジャルドが牙をむく。
セシル「読んで頂き感謝します」
マルク「貴様、いつ抜け出した。人質なんだから牢から出るな!」
セシル「ここは話の外。何をしても証拠は残りませんよ」
マルク「……ちっ、後書きが終わったらちゃんと牢に入れよ」
アリシア(……取られてしまいました)




