仕方ありませんわね
アリシア「おあとがよろしいようで、です」
エレン「それは後書きでいう言葉ですわよ」
//*** 20 ***//
アリシアとエレン、マリアとミサが城内で午後のお茶を楽しんでいる時、急に転移の気配を感じたエレンはそちらの方を向いた。
普通、王城は転移を防ぐために結界が張られている。それを乗り越えて来られるのはあらかじめ設定した人物だけだ。
「いったい何ですの?」
この場にいる四人を見回して、全員が居る事を確認した後……。残りの設定してある人物の事を考え、エレンは訝しむ。
転移から現れたのは、現リカルド国、国王のエルト=リカルドだった。
「ミサ、やっぱりここか。久しぶりだな、エレン嬢。すまないがミサに急ぎの話がある」
「久しぶりですわね、エルト王。ミサなら私の隣で寝てますわよ」
エレンの軽口に対して、軽く眉を動かした後、エレンを無視してミサを引きよせた。
「ミサ、落ち着いて聞いて欲しい……」
「何よ。そんなに慌てちゃって」
「すまない、私達のセシルがジャルドに捕まった。私はジャルドという国を見誤っていた」
ジャルドの宣戦布告、セシルの身柄と引き換えの臣従勧告について書かれた手紙を、ミサへと見せる。
「……」
「当然の事ながら、臣従はできない。宣戦布告に対して、どのように対処するかという話になっている」
「そ、そんな……」
そして、ジャルドとの争いについてエルトは考える。
現状のリカルドでは、攻撃に割けるような兵士は居ない。
防衛戦しかできない。防衛に徹すれば、被害を出しながらも守り切れるだろう。
しかし、とエルトは今後の事を考え憂鬱になった。
近隣の国はどちらに付くだろうか。
シャルル=ジャルドから暗殺、騙し討ちと二回、王の命を奪ったリカルドに付くと楽観的には慣れなかった。
ジャルドに対して防衛戦を行い、守れたとしても次の国が来るだけだ。
リカルドを守るためには、今回の戦で圧倒的な力を見せつけるか。
抑止力となりえる強力な味方を引き込まなければ守れないだろう。
打算抜きで、リカルドのために働いてくれるような味方を付けなければいけない。
「……無理だ」
圧倒的な力を見せつける程の余力も、抑止力となりえる味方も、そんなに都合よくいる訳が無い。
頭を振るエルトの視線の先に、
「何ですのよ……久しぶりに会ったんですわよ?もう少しくらい構ってくれてもいいですわよね」
「エレン、落ち込まないでください。ミサ様もエルト様も大変そうですから」
一作目の悪役令嬢エレンと二作目の悪役令嬢アリシアが居た。
圧倒的な兵の数を持つリカルドに対して、少数の圧倒的な強さで叩いたエレン。
抑止力となりえるレア資源、魔法石の産地の女王、アリシア。
婚約する王子を救うため、という理由もあり、将来的には身内という繋がりがあり、人々から慕われてきたシャルルの娘、旧ジャルドの姫。
アリシアの名が出れば現ジャルド王は国をかすめ取った逆賊と主張する事ができ、隣国もアリシア国を敵に回そうと考える所は無いだろう。
正義がこちらにあり、魔法石と強兵を抱えるアリシア国が味方であれば……。
「嫌ですわよ?」
エルトが口を開く前に、エレンが否定する。
「……まだ何も言ってないが?」
「アリシア国を味方に付ければ勝てる、とか浅知恵ではありませんでしたの?違ってたら謝りますわよ?」
「……そうだ。何とか頼めないだろうか?」
「だから嫌だと断りましたわよ?」
断るエレンと、説得するエルト。
「ねえ、エレン。ダメかしら?」
それにミサが加わる。
「いくらミサの頼みでもダメですわよ。アリシアが同族の事よりも、女王の癖に他国の男に味方した女だ、という見方をされますわよね」
そう言うと、ミサが目に見えて落ち込んだ顔をする。
「エレン、何とかなりませんか?ミサ様が可哀想です……。セシル様の事も心配です」
「アリシア、あんなネクラの事は気にしなくていいから」
元凶に一番近いマリアの言葉に、ミサは顔を引きつらせた。
『そもそも、聖女が居なければこんな事にはなってなかったんだ』
そう思ったが、お願いをしている場で、マリアに向けて言い争うような馬鹿な真似はしなかった。
「エレン、助けられませんか?」
そういうアリシアに、エレンは仕方ありませんわね、と呟いた。
アリシア「おあとがよろしいようで、です」
エレン「二番煎じになってますわよ」




