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魔法学校のふたご

 次の日、俺たちは制服に着替えて学校へ向かった。


「わあ……!」


 家を出た瞬間、月菜が声をあげた。

 石畳の道の上を、杖に乗った人が飛んでいく。

 店先では、荷物がひとりでに浮かんで運ばれていた。


「ライラちゃん! 今の人、飛んでたよ!」

「うん。通勤」

「つうきん!?」

「飛んで行ったほうが速い」

「わたしもとびたい」

「ルナは勉強してからね」


 パン屋の前を通ると、看板の絵のパンが匂いを出していた。

 月菜が立ち止まって鼻を近づける。


「におい出てる! 絵なのに!」

「宣伝のためだと思う」

「魔法の使い方それでいいの!?」

「便利ならなんでもいい」


 俺は二人の後ろをちょこちょこついていった。

 歩幅が違いすぎる。


「おねえちゃん、まって」

「あ、ごめんルナちゃん!」


 月菜が振り返って手を差し出してくる。

 二人で繋いで歩く。


「ねえライラちゃん、学校って遠いの?」

「もうすぐ」


 角を曲がると、それが見えた。


「おっきい……!」


 校舎そのものは地球の学校とそう変わらない。

 ただ、やたらと大きい。


「魔法学校はここしかないの」

「せかいに、ひとつ?」

「そう。小学部から大学部まで全部ここ」

「ぜんぶ!?」


 月菜が首を思いきり反らして見上げる。


「いてて、首捻ったかも」

「いたいのいたいの、とんでけー!」

「ありがとうルナちゃん」


   ※


 俺たちはまず職員室へ向かった。


「来たわね。こっちよ」


 ライラのお母さん、もとい校長先生に連れられて廊下を進む。


「ルナちゃんは小学部。月菜ちゃんは、ライラと同じ高等部ね。先生方、お願いします」


 それぞれの担任と思われる先生がやってきた。


「ルナです。おねがいします」

「あらまあ! はい。よろしくお願いしますね」


 先生は俺の姿を見て一瞬驚く。


 よかった。

 優しそうな女の先生だ。


「ルナちゃん、あとでね!」

「頑張って」


 月菜とライラに見送られ、先生と一緒に小学部の教室へ向かった。


   ※


「皆さん、今日は転校生が来ています。一か月だけですが、仲良くしてくださいね」


 先生に促され、教室の前に立つ。


 教室の子どもたちがざわついている。


「ルナです。よろしくおねがいします」


 自己紹介を終え、案内された席についた。


 両隣を見ると、同じ顔をした男の子が二人いる。

 双子だろうか。


 どちらも、名前を聞かなければ女の子と思いそうな顔立ち。

 髪も男の子にしては長い。女の子のショートくらいある。


 右の子は目尻がわずかに吊り上がっていて、さっきからずっとこっちを睨んでいた。


 左の子は眉が下がっている。目が合うと、慌てたようにぺこりと頭を下げてきた。


「ふたり、そっくりだね」

「よく言われる。ぼくがマロで、こっちがミロ」

「おい」


 右の子が机を叩いた。


「勝手に紹介するな」

「だって聞かれたし」

「答えなくていいし。それと」


 ミロが俺のほうへ向き直る。


「お前、転校生だからって偉くないからな」

「ちょっと。やめなよ、ミロ」

「黙ってろ、マロ」


「あなた、ミロっておなまえなの?」

「女が俺の名前を呼ぶな。俺も女になる」


 どういう理屈だ。


 小学部の最初の授業は、魔法の種類についての勉強だった。聞いていてもよくわからない。

 その間も、ミロは何かと俺に突っかかってきた。


 教科書を出せば「ページちがう」と言われ、手を挙げれば「目立ちたがり」と言われる。

 筆箱を落とした時は「うるさい」と言われた。落としたくて落としたわけじゃない。


 そのたびに、マロが申し訳なさそうに俺へ謝った。

 今どきの小学生って、こんな感じなのか。


「ルナ、なにかわるいことしたかなあ」

「してないよ! ごめんね。本当にごめんね」


 マロがぺこぺこと頭を下げる。

 下げすぎて、机に額をぶつけていた。


「だいじょうぶ?」

「だいじょうぶ……」


 こっちの子は、いい子らしい。


   ※


 次は体育の授業だった。


 着替えるため、更衣室へ向かう。

 そこで俺は、うっかりしていたんだと思う。

 なんの疑問も持たずに、『男子更衣室』の扉を開けた。


「んなっ!?」


 中にいたミロが、驚いて振り返った。

 どうやら、ほかの男の子たちは先に着替えを終えたらしい。

 ミロはまだ制服のままだった。


「なん、でお前が入ってくるんだよ!」

「たいいくの、おきがえだよ?」

「ここは男子更衣室だぞ!」

「うん。だからきたの」

「お前は女だろ!」

「ミロは、いいの?」

「俺は男だからいいんだよ!」


 ミロが慌てて鞄を持ち上げる。

 その拍子に、鞄の中身が床へこぼれた。


「あっ!」


 教科書と筆箱に交じって、小さな銀色のペンダントが床を滑っていく。

 俺の足元で止まった瞬間、留め具が外れて蓋が開いた。


 中には、一枚の写真が入っていた。

 マロと、その隣に立つ女の子。

 髪や服装は違う。


 けれど、その女の子の顔は、目の前にいるミロとそっくりだった。


「このおんなのこ、ミロ?」

「ち、違う! 見るな!」


 ミロが慌ててペンダントへ手を伸ばす。

 俺はもう一度、写真とミロの顔を見比べた。


「あれ? ミロは、おんなのこ?」

「おーい、ミロ。次は外で運動だって――」


 扉から顔を出したマロが、俺と、床に開いたままのペンダントを見て固まった。


「あちゃ〜」

「あ、マロ!」

「ついに女の子だって、バレちゃったね、ミロ」

「余計なこと言うなあああ!」


 ミロが耳まで真っ赤になって叫ぶ。

 どうやらミロは女の子だったらしい。

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新作はじめました

TS娘が幼馴染の男の子に「好き」と言われるために、あの手この手を使うお話です。
『TS娘になった僕は、幼馴染に「かわいい」と言われたい』
TSで、あったらいいなを詰め込みました。 ※癖全開です。

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