表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
55/58

月の街へ

 その言葉を理解するまで数秒。

 月菜が爆発するまで、さらに数秒。


「い、いっしょって、それってつまり、ひとつ屋根の下で!?」

「大丈夫よ。わたしとライラも一緒に行くもの。ね、ライラ」

「うん」


 それはいいのか? よくないのか?


「向こうでは私たちの家を使うことになるわ。支度して、また明日いらっしゃい」


  ※

 

 支度を終えた俺と月菜は、ライラの家に歩いて向かっている。

 俺は着替えを詰めた大きめのリュックを背負い、月菜は小さなキャリーケースを引いている。


 昨日聞いた話によると、はるか昔、月に残った魔法使いたちがいたらしい。

 ライラたちの先祖は、地球と月をつなぐ役目を持つ魔法使いだった。

 今は校長であるライラのお母さんが、その役目を引き継いでいる。


「ライラって、結構すごい家系だったんだな」

「そうそう! ライラちゃんは何とも思ってなさそうだけどね」


 小学生くらいの男の子グループとすれ違う。

 リュックを背負っており、どこか遊びに行くようだ。


「本当だったら今日から夏休みなのにね。学校に通うなんて、考えてみたらすごいよね」

「言われてみればそうか。俺たち真面目な生徒だったみたいだ」

「ふふふ。樹くんは真面目だよお」

「そういえば泊まりのこと、よく許してくれたね」

「昨日あの後、ライラちゃんのお母さんがきてくれたの」

「そうなんだ」

「うん。魔法使いのことも言ってくれたんだ。早いうちから言った方がいいって。お母さんたち、びっくりしてた」

「そりゃそうだ。俺も責任を感じるよ」

「あ、大丈夫だよ!それで、行ってきなさいって。好きな時に戻れるみたいだし」


 二人で歩く。

 ライラの家が近づいてくる。


「今日から一緒の家、なんだね」

「ごめん、俺のせいで」

「ううん!」


 月菜が首を振る。


「こんな時に変だと思うけど、楽しみなの」

「……俺も」

「ずっと付き合ってたら、その」

「い、いつか、一緒に住むんだろうなあ、て」

「うん」

「その楽しみが、早くに叶ったんだなあ、て」

「そうだね」


 俺は月菜の手を取った。


「月菜」

「はい」

「思ったことがあったらすぐ言って。俺、すぐ直すから」

「そ、そんなの大丈夫だよぉ」

「遠慮しないで。月菜とずっと一緒にいたいから」

「!? い、樹くん」


 それきりお互い無言になった。

 勢いに任せてすごいことを言ったと思う。でも、本心だし仕方ない。

 横顔を見ないようにして歩いた。


 家に着くと、出てきたのはライラだけだった。


「きたね」


 俺たちの様子を見てニヤリとする。


「何かあった?」


「「ありません!」」


  ※


「あれ、お母さんは?」

「仕事で向こうにいる」


 案内された廊下の突き当たりに、昨日は気づかなかった扉があった。

 表面に見たこともない魔法陣が浮かんでいる。


「ここ。入って」


 促されるまま踏み込むと、目の前が真っ白になった。

 まぶたを開ける。


 ここではないどこか、知らない町が広がっていた。


「ここが、魔法使いの町だよ」

「え? もう着いたの?」

「おもってたより、なんか」

「うん。普通の町なんだね」


 コンクリートの道、並んだ家、店、歩いている人たち。地球とそう変わらない。

 旅行に行ったホテルを抜けて、ふらりと歩きに出た時と同じ感覚。


「ええ。あまり変わらないと思う。でも、上見て」


 言われて空を見上げる。

 普通の青空が広がっている。

 けれど、その中に見慣れないほど大きな青い星が浮かんでいた。


「あれは地球」

「え!?」

「ここは月なの」

「そんなことあるわけないよお」


 言い終わってから気づいた。


「え、あれえ!?」

「ルナちゃん!?」


 空に月なんて見えない。

 なのに俺はルナになっている。


 ここが月だからか? ってことは――


「もしかしてわたし、ずっとこのままなの?」

「魔力をコントロールできるようになったら樹に戻れる」

「ふええ」


 しばらく歩いて、ライラの家に着いた。

 シェアハウス用なのか、かなり大きい。


「まって、ライラちゃん」


 月菜が立ち止まった。


「何?」

「もしかしてこれから私、ルナちゃんと一緒に住めるってこと?」

「そうよ」

「!?」


 衝撃を受ける月菜。

 そして俺。

 ずっとルナのまま月菜と一つ屋根の下なのか?

 それって、まずくないか?

 月菜はルナを見ると暴走しがちだ。それに俺も、ルナになるとうまく制御できない。


「樹くんなのは分かってるんだけど! でも、ルナちゃんと住めるんだよ!?」

「そうね」

「寝る時も、起きた時も、隣にルナちゃんがいるなんて、私、幸せすぎて怖いよ」


 まずい、早くも暴走している。

 月菜は俺と一緒に寝るつもりでいる。


「ルナ、ひとりでねれるもん」

「えええ!?」

「おねえちゃんとは、べつだもん」


 月菜が両手を頬に当てた。


「ルナちゃん、そんな事言わないで一緒にねよう? ね?」

「もうおとなだもん。おとなはべつべつで、ねるんだよ」

「そんなあ」

「月菜、諦めて」

「ううう」

「じゃあせめて、おふ……」


 言いかけて、月菜は顔を赤くする。


「そ、そっか。樹くんなんだよね」

「そうだよ! おねえちゃんの、えっち!」

「〜〜!?」


 ライラが玄関の鍵を開ける。

 月菜はなぜか落ち込んで、両手を地面につけていた。


 よし、いろんな意味で気を引き締めていこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作はじめました

TS娘が幼馴染の男の子に「好き」と言われるために、あの手この手を使うお話です。
『TS娘になった僕は、幼馴染に「かわいい」と言われたい』
TSで、あったらいいなを詰め込みました。 ※癖全開です。

▶ TS娘のお話を読む
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ