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魔法学校と、同居のお知らせ

 場所を変えようという月菜の提案で、俺たちは近くの公園に移動した。

 月菜がライラを呼び出して、さっきのことを説明している。

 俺はというと。


「……おなか、すいた」


 なぜかものすごく腹が減っていた。

 月菜が慌ててコンビニで買ってきてくれたおにぎりを、両手で抱えて食べている。

 鮭だった。うまい。


「ごめん。私にもわからない」


 ライラが俺の頭を見下ろしながら言った。


「封印はできているはず」

「じゃあ、あの時みたいにはならない?」

「それは大丈夫。魔力は安定してる」


 月菜がほっと息を吐く。


「これは、お母さんに相談したほうがいいかもしれない」

「お母さんって、ライラちゃんの?」

「ええ。お母さんならきっと何かわかると思う」


 おにぎりを咀嚼しながら、俺は二人の会話を聞いていた。

 ライラからだいたいの事情は聞いた。

 俺が月の住人とのハーフだということ。

 月が出ると変身すること。

 月菜とライラが魔法使いだということ。


 そして俺が、記憶を失っているということ。


 情報量が多すぎる。

 でも大丈夫。おにぎりがあればなんとでもなる。

 おにぎりがなかったら受け止めきれなかったと思う。


「おねえちゃんたちも、おにぎり、たべる?」

「あ、いいよいいよ! ルナちゃ、樹くん? ぜんぶ食べちゃって!」

「ルナは、ルナだよ!」


 どっちでもいい、と答えようとしたはずだった

 なのに、口から出るのはルナの言葉だ。

 これにも慣れるんだろうか。慣れちゃいけない気もする。


「そうね。ルナのときはルナと呼べばいいと思う」

「……うん。わかった」


 月菜が両手を広げた。


「会いたかったよ! ルナちゃああん!」

「月菜」


 ライラの静かな声が飛ぶ。


「もうわかってると思うけど、ルナは樹」

「うっ……」


 ビタッと止まる月菜。

 両手を広げたまま固まっている。


「でも、でも」

「でも?」

「天使なんだよ? ルナちゃん、こんなにかわいいんだよ?」


 俺もライラに加勢しようとした。

 そうだ、俺は樹だ。抱きしめられるのはさすがに困る。樹の時だってしたことないのに。

 そう言おうとして。


「つきなおねえちゃん。ルナのこと、きらいになったの?」


 口から出たのはそれだった。

 言ってから自分でぎょっとする。

 違う。違うんだ。


「る、るなちゃああああん!!!!」

「わ」


 抱きしめられた。

 そのうえ頭を撫で回された。

 ほっぺたを両手で挟まれ、ぐりぐりされた。


「かわいい! かわいいよぉ!」


 その間、俺は心を無にした。

 ライラはため息をついて俺たちを見ていた。


  ※


 「まず、ライラの保護者として、魔法関係者として謝罪をさせてちょうだい」


 ライラの両親から深く頭を下げられた。


 ――ライラの家に着いた時、両親は友達を連れてきたことに心底驚いた様子だった。


 居間に通される間にお茶とお茶菓子と果物とケーキが順番に出てきた。

 「あ、お、おかまいなく!」と言う月菜はケーキから目が離せないようだった。


「だいじょうぶです!」

「だいじょうぶだよぉ」

 俺と月菜の声が重なった。


 両親がゆっくりと顔を上げる。


「この子、変わってるでしょ。変に考え固いし、私たちも手を焼いてるの」

「そんなことないです! ライラちゃん、優しいです」

「月菜、ありがとう」

「そこは否定しなさいよ」

「事実だから」

「そういうところよ」


 お母さんが額を押さえた。


「それで、今回の件なんだけど」


 俺たちは背筋を伸ばした。


「今の時点では、どうしようもありません」


「!?」


 月菜がケーキのフォークを落とした。


「何かが原因で、かけらの封印が緩んでいるんだと思うわ。でも、それ以上、今はわからない」

「ま、まさか、このままずっとルナちゃんのまま?」

「いいえ。月が沈めば、また樹くんにもどれると思うわ」

「……それはうれしいけど、またもとに、もどっちゃったの?」


 俺は自分の小さい手を見た。

 月で幼女になる体。

 これから一生、月に怯えながら生きるのだろうか。

 このまま普通の生活ができるのか? 高校に、通えるのか? そのあとは?


「いやだあ」

「ええ、そうよね」


 お母さんがうんうんと頷いた。


「だからルナちゃん。いえ、樹さん」




「魔法学校に通いましょう」




「まほうがっこう?」

「あなたが自分の魔力をコントロールできるようになれば、ずっと男の子でいられるわ」

「でも、お母さん」


 ライラが口を挟む。


「樹はハーフだからできないんじゃ」

「そうかもしれない。でも、それしか方法がないわ」


 お母さんは軽く言った。


「学校には私から言っておくから」

「言っておくって、そんな簡単に入れるんですか?」

「あら、簡単よ」

「え、そうなんですか?」


「だって、私が校長だもの」


 俺は思わずお茶を吹く。


「こうちょうせんせい!?」

「あら、ライラ、言ってなかったの?」

「誰にも聞かれなかったから」


 俺は無言でお茶菓子を食べていた。もう何を言われても驚かない気がする。


「あ、そうだ」


 ライラのお母さんが楽しそうに付け足す。


「魔法学校に通うなら。月菜ちゃん、ルナちゃん。あなたたちは一緒の家で住んでもらうことになるわ」


「「ええええええ!?」」

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新作はじめました

TS娘が幼馴染の男の子に「好き」と言われるために、あの手この手を使うお話です。
『TS娘になった僕は、幼馴染に「かわいい」と言われたい』
TSで、あったらいいなを詰め込みました。 ※癖全開です。

▶ TS娘のお話を読む
― 新着の感想 ―
ルナちゃん再登場嬉しいです! 魔法学校編も楽しみにしてます!
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