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第8話 想い続けて

「野呂須。会いたかったのだ〜」

朝日城の多実姫さまが、野呂須タヌキに駆け寄った。

『ボクも。姫君に会いたかったよ!』

ひしっ。

多実姫さまは、野呂須タヌキをギュッと抱きしめる。

野生のタヌキにさわってはいけないと、家臣たちは慌てている。

しかし、仲良しの女の娘とタヌキは、そんな大人たちの話を聞いていない。

「父君に頼むから、朝日城で共に暮らそうぞ〜」

『うん』

野呂須タヌキは、いつの間にか、怪しい妖気を消していた。

仲良し。

友達になった。

なら、ずっと一緒でいいよね。

『もう、悪さはしないよ』

頭を下げて、反省する野呂須。

「…では、流行り病を止めてもらえるか?」

『…?』

「お前が、妖力で、朝日の都に流行り病を引き起こしたのではないのかね」

『知らない。ボクは、都中のふすまとかに穴を開けてまわっただけだよ』

「え…?」

家臣たちは、慌てはじめる。

どうやら、化けタヌキ野呂須は、朝日城の家臣たちに、流行り病をつくった原因だと思われていたらしい。

「…このタヌキの原因ではない?では、流行り病は、何なのだ!」

家臣たちは、頭を抱えた。


第8話 想い続けて


朝日の都。

朝日城からの情報は、すぐに新聞号外となった。

“流行り病の原因不明”

実は、朝日城の家臣たちは、一匹の化けタヌキの仕業だと思っていた。

でも、違った。

そんな情報が、都中に広まった。


桜撫子薬局。

流行り病は、熱病・眠気の他に、食中毒のような症状も合わさり、流行は進んでいた。

必然的に薬局のお客さんは、増える一方だった。

役人の大之進さんの大量注文にも、何とか、間に合わせた。


桜子さんは、オカマ友達の佐保姫さんたち、オカマ四姉妹の協力を受けながら、お薬作りにはげんでいた。

オカマ長女の佐保姫さん。

そして、オカマ妹たち。

筒姫つつひめさん。竜田姫たつたひめさん。宇津田姫うつたひめさん。

全員、薬師免許を持った即戦力。

薬局は、いそがしいながらも、お客さんにお薬を提供し続けていた。

楠見は、いそがしい桜子さんと会話する時間が減っていた。


かおる家。

兄の乃保琉が、部屋掃除をする間。

妹の楠見は、お薬の図鑑とにらめっこしながら、勉学にはげんでいた。

最近、桜子さんの薬局は、とてもいそがしい。

楠見は、大好きな桜子さんのお手伝いができるようになるため、一刻も早く、薬師になりたかった。

今の流行り病の治し方は…?

謎の病気に効くお薬は、どんなもの…?

そんなことを考えていたが、本心では、ただどんな時も桜子さんのそばにいたいという気持ちが大きかった。

だって、桜子さんって、優しいから。

どんな時でも、明るい人だから。

大好きなんです。

「…桜子…」

部屋掃除を小休止した乃保琉が、つぶやいた。

楠見も、桜子さんのことを考えている。

「桜子さんに会いたいです」

そう想いながら、桜撫子薬局でもらったお薬ふくろを手にする。

あと、二、三日分だ。

「…お薬…もらいに行くか…?」

兄の乃保琉も、お薬が、残りわずか。

いそがしい桜子さんの薬局。

お薬が少なくなってきたのだから、薬局に行かなくては。

「行きましょう。兄さん」

「…ああ、行くか…桜子の薬局へ…」

薫兄妹は、桜子さんのことが大好きだ。

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