第3話 オカマ友達
「さあ、調合をするわよ〜ん」
桜子さんは、着物の袖をまくしあげる。
桜撫子薬局。調合室。
調合台の上には、水の薬草と天然水の入ったビンがある。
「わ、私は、見学していていいですか?」
楠見の問いかけに、桜子さんはうなづく。
「いいわよ〜ん。楠見ちゃん。薬師目指してるのよね〜ん」
「はい。そうなんです」
楠見は、将来的には、自分も薬師になりたいと思っている。
薬師になって、桜子さんの薬局で働きたいのだ。
そうすれば、大好きな桜子さんとずっと一緒にいられる。
お薬の学習堂で、勉学にもはげんでいる。
「見学していていいわよ〜ん」
「はい」
調合室の壁際に、楠見は移動する。
「桜子〜〜…」
お店の外から、声がする。
「あら、この声は、佐保ちゃんだわ~ん」
桜子さんには、お友達がいる。
同じオカマの友達がいる。
第3話 オカマ友達
「桜子。ワタシ、佐保姫だけど、大量注文があったの?最近、いそがしいのね」
四季佐保姫。年齢不詳。
イケメン系のオカマである。
稲穂のような茶髪の人物。
名前に、“姫”とついているのは、位の高い武家の家柄なので名乗っている偽名。
本当の本名は、佐保彦というらしい。
オカマさんは、偽名の時もある。
桜子さんも偽名なのかは、不明。
楠見は、何度か本名なのか聞いたことがあるが、答えてくれたことはない。
佐保姫さんは、薬師の資格を持つ友人。
朝日の都の武家の家柄で、オカマ四姉妹の長女。
「佐保ちゃん。今ね。いそがしいのよ〜ん」
「あの流行り病のせいなの?桜子」
「そうかもしれないわ〜ん。佐保ちゃん」
「大変ね」
「大変よ〜ん」
桜子さんと佐保姫さんは、手を取り合って、オカマの友情を確かめ合う。
「ワタシも手伝おうかしら」
「え?いいの〜ん?」
「ワタシたち、友達じゃない。いくらでも手伝うわよ」
佐保姫さんは、着物の袖をまくる。
「ワタシ、この薬草を水洗いするから」
「よろしくね〜ん」
二人のオカマは、協力して、流行り病に効く解熱剤を完成させる。
発注された数の解熱剤の完成間もなく、大量注文をした朝日城の役人が、お薬を受け取りにきた。
無事、間に合った。
「桜子さん。お疲れ様です」
お茶を手渡す楠見。
お茶は、店番の南治さんが用意してくれたものだ。
「ありがとうね〜ん。楠見ちゃん」
椅子に座って、うちわをあおいでいる桜子さんは、あいている方の手で、お茶を受け取る。
佐保姫さんは、うらやましそうに、それを見ている。
お茶が、ほしいのだ。
「す、すみません。どうぞ」
楠見は、慌てて、佐保姫さんの分のお茶を手渡す。
「ありがと。楠見ちゃん」
それにしても、流行り病は朝日城にまで、蔓延しているのだろうか。
大量注文するくらいなのだから、謎の熱病にかかった者が多いのだろう。
眠気もひどくなると聞く。
「都で流行り病なんて、怖いわね〜ん。楠見ちゃんも気をつけるのよ〜ん」
「はい」
大きくうなづく。
現在は、花粉症と持病があるだけだ。
持病は、精神病。
楠見は、桜子さんからもらったお薬があるから、大丈夫だ。
「乃保琉さんも大丈夫〜ん?」
「はい」
楠見の兄・乃保琉も精神病だが、頑丈なところが取り柄だから心配ない。
「明日もいそがしいなら、私、お手伝いします」
「楠見ちゃん。学習堂があるじゃないの〜ん」
「あ、そうでした」
お薬の勉強のため学習堂に通っている。
将来、薬師になるために通っている。
「それでは、学習を終えた、午後に来ます」
お手伝いの約束をして、楠見は帰路についた。




