第2話 都でお買い物
朝日の都。
お店の立ち並ぶ中に、天然水屋がある。
「いらっしゃーい」
天然水屋の売り子が、笑顔で出迎える。
山からくみ取った天然水を売る、都でも人気のお店だ。
桜子さんは、天然水を、三本注文する。
「あいよっ」
売り子は笑顔のまま、売り場から天然水のビンを三本、取る。
会計に、三本のビンが置かれる。
「百五十円です」
「はい。お金よ〜ん」
桜子さんは、支払いを終えて、二本のビンを風呂敷に包んで持ち上げる。
楠見には、別の風呂敷で包んだ一本を持ってもらう。
「重くな〜い?楠見ちゃん」
「だ、大丈夫です」
天然水の入ったビンは、一つでも、結構重い。
楠見は、気合いを入れて持ち運ぶ。
第2話 都でお買い物
お店を出ると、大声がした。
「…流行り病の野郎が、近づくんじゃねえっ」
大声の主は、サムライだった。
サムライといっても、カタナ持ちではなく、木刀を持つのみである。
朝日の都の決まりでは、カタナ所持は違法である。
争いの無い、平和な都。
朝日の殿下が、都の安全のため定めた法律だ。
「そっちこそ、木刀のサムライじゃねえか〜…」
熱と眠気でふらふらしながら歩く男が、言い返す。
「うるせえ!」
サムライは、叫ぶ。
ざわざわ…。
都の通りでは、何事かと見物人が増えていく。
「叫ぶんじゃねえ。頭が痛くなるっ…」
「はあ?病人が、悪いんじゃねえか」
男とサムライは、悪口を言い合っている。
「…よくないわ〜ん」
桜子さんが、騒ぎのうち、一人の男に近づく。
見てからに熱がある。
ふらふらだし。
「こんな騒ぎをするより〜ん。お家で安静にした方がいいわ〜ん」
「な、何だ。オカマか〜…?」
「桜撫子薬局の桜子よ〜ん。男の人同士争わないで〜ん。アタシ、泣いちゃうわよ〜ん」
桜子さんは、身体をくねらせる。
ザワッ…
男とサムライ。見物人たちが、後ずさる。
全員、オカマに耐性が無かった。
「…」
「…」
二人が、ケンカをやめて、すぐ無言で立ち去る。
見物人たちも、離れる。
「…さすが、桜子さん。騒ぎを安全に止めましたね」
楠見は、素直に感心する。
大好きな桜子さんは、すごい。
桜撫子薬局。
「おかえりなさい。桜子さん」
店番をしていた女性が、出迎える。
南治譲歩。20歳。
桜子さんの薬局の会計人だ。
「南治ちゃん。お留守番ありがとうね〜ん」
「いえいえ」
南治さんは、穏やかに言った。
調合室。
買ってきた天然水を台の上に置く。
「水の薬草用の天然水は、用意できたわ〜ん」
「できましたね」
「後は、水の薬草さえあれば…」
桜子さんは、からくり時計に目をやる。
「…桜子。薬草集めをしてきた…」
楠見の兄・乃保琉が、薬草を持って戻ってきた。
肩で、かなり息を乱している。
かなり、急いだのだろう。
「ありがとうね〜ん。乃保琉さん」
「…桜子のためだから…」
ばたっ。
疲れ果てた乃保琉は、仰向けに倒れた。
「兄さん。頑張りましたね。さすがです」
楠見は、兄の努力を褒める。




