ハーシュ、エ○マンガ媚薬の餌食となる
今回結構筆が乗りました
「は、ハルメリア様!!あまり先に行き過ぎると…!!」
カチッと音が聞こえてハーシュは背筋に冷たいものが走った。
「…危ない!!」
「え…?」
壁の向こうにキラと光るものが見え、ハーシュはハルメリアの前に躍り出た。
「つうッ…!」
ハーシュの鎖骨の辺りに鈍い痛みが走り、矢は乾いた無機質な音を立て床に落ちた。
胸から首にかけて巻いていた鎖帷子が功を奏したようで、矢は先端には血が付いていたものの深手はなかった。
「大丈夫か!?ハーシュ!!」
「うん…これくらいだったら治癒……で………?」
急に視界がぐにゃりとぼやけ足腰から力が抜けた。
「おい…ハーシュ??」
「あ…れ…??」
気のせいかと思ったのもつかの間、脈拍と呼吸に尋常ではない乱れが生じた。
ハーシュは矢に毒の類が塗りこめられていた可能性に思い至り、一気に顔面から血の気が失せた。
「ハーシュ!?」
「り、リデア…!!解毒剤…早く!!」
「ハーシュ!!これ!!早く飲んで!!」
ハーシュはリデアから差し出された瓶を一気にぐいと飲み干した。
「どう…?よくなった…?」
リデアとカインが心配そうにこちらを見てくる。
「ま、まだ…………わからない…」
呼吸が荒くなって体が浮ついたようにむずむずしてくる。
「はぁ……………なん、だろ…からだが…へん…かも…」
身体の内部が度数の強い酒を飲んだかのようにカッカッと火照りだし、体の内からじっとりとした汗が噴き出してくる。内側から得体の知れないもどかしい渇望が活火山のように湧き上がってくる。
「…ッハーシュ!!」
カインは様子のおかしいハーシュの身体を寄せると鎖帷子とローブを除けて矢の刺さった首筋から鎖骨の辺りをはだけさせた。
「毒を吸い出すぞ!!」
「ちょっとあんた迂闊に!?」
矢の掠めたハーシュの首筋から鎖骨の辺りにカインは唇を押し当てた。
「…ひぅっ!!??」
その瞬間頭から腰に電気が走ったかのようだった。その感覚は身体に反響のようにハーシュの脳内をくわんくわんと揺らした。
「ど、どうしたハーシュ!?」
ハーシュの異様な反応に戸惑ったカインは思わずその手を止めた。
「か、カイン…?…そ、それ……なんか………だめ………っ!」
これ以上は何かがまずい気がする…未知の感覚への恐怖と戸惑いにハーシュは涙目で懇願する。
だが、ハーシュの意に反してカインは即時に行動を決した。うかうかしている暇はない。毒が体内を巡ってしまえば取り返しのつかないことになる可能性だってあるのだ。
「少しの間だ…!辛抱しろ!」
「ち、ちがっ…!!あっ!?」
じゅ…じゅじゅっ…ちゅうううう……!
「~~~~~~~~っ…!!!???」
ハーシュは指先とつま先をピンと緊張させて何とかその衝撃に耐えた。
ハーシュは身体全体が敏感な感覚器になったようで、カインが口をつける場所に電気が走る。その度に腰の辺りに鋭敏な刺激と緩慢な脱力感、そしてふわふわとした多幸感がめくるめく押し寄せてくる。
カインが傷口から口を離すとハーシュはひくひくと身体を痙攣させた。
「おい!……ハーシュの様子がおかしい!ますますぐったりしてるぞ!」
カインは切羽詰まった様子で、繰り返しハーシュの傷口から毒を吸い出そうと躍起になった。
「……っ…!…っは…っはぁ……っはぁ………」
カインは焦りを感じていた。毒を吸い出しても吸い出すほどハーシュは息も絶え絶えとなり、呼吸も荒くなる一方だった。
一方、リデアとハルメリアは何となく嫌な予感が脳裏を掠めつつあった。
「あの……ハーシュ様のご様子なのですが……」
「…………まさか……この毒って……」
リデアとハルメリアは思わず顔を見合わせた。
((……………媚薬………??))
「カ………イン……も…ぅ……だ…め………だよぅ……」
ハーシュの顔は紅潮し、目はとろんとしている。余裕はなく呼吸は荒かった。
「ハーシュ!!しっかりしろ!!ハアアアシュ!!!」
「「………」」
カインとハーシュは今が今生の別れとでも言わんばかりの張りつめたテンションだった。
しかしこの状況下で逆にリデアは冷静さを取り戻しつつあった。自分の予想が正しければハーシュは生命の危機からはほど遠いし、解毒剤が効かなかった理由も簡単に説明がつく。
だが、ここで言ってもいいものだろうか?リデアの悩むポイントはそこだった。
「くそ…!!リデア!!服を脱がすから手伝え!!少しでも呼吸を楽に…!!」
「ちょちょちょちょちょおおおおっと!!??」
リデアはハーシュのボタンに手を掛けたカインを慌てて止めた。
「何を躊躇うリデア!!??」
「…い、いやその……い、今ハーシュの衣服を脱がすと……」
リデアはハーシュが主に乙女的な意味で生命が絶たれる可能性を危惧していた。
「と、兎に角ハーシュは大丈夫だから!!??ねっ!?ハルメリア!!??」
「そ、そうですわね!!??ハーシュ様はきっと大丈夫だと思いますわ!!」
「…………??」
二人のやけに息の合った様子にカインは怪訝な表情を見せた。
「ふ、ふたりの言う通り……」
ハーシュは息も絶え絶えカインが衣服に掛けた腕にそっと手を添えた。
「だ…だいじょうぶ……だから…カイン……」
紅潮した顔で弱弱しく微笑みながら、涙目でそう言ったハーシュは異様に艶っぽかった。
「………」
「ど…したの…?…カイン?」
「あ、い、いや…なんでもない……大丈夫なら……それでいい…」
カインは一瞬惚けたように動きを止めた後、顔を赤くしてハーシュから目を逸らした。
「……!あ、あなた!!そこで女の武器を使うのはずるいですわ!!」
「…え…??」
「な、何言ってんのよあんた……ハーシュもわざとじゃないってわかってんでしょ…!」
「だ、だって……だってなんかとっても…い、いやらしいですわーーーー!!??」
いやらしいですわーーーー!!??
ですわーーー…
……
ハルメリアの非難がましい叫びがダンジョン内に反響となってこだました。
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「リデア、前線の警戒を頼む」
「はいはい」
しばらく待っても一向に回復しないハーシュを見かね、話し合った三人はダンジョン攻略は捨て置いてでもすぐ帰還することに決めた。
「お、重たいっ…ですわ…!」
「仕方ないでしょ…満遍なく気を配るにはこの配置しかないんだから」
後ろはカインが守り前線はリデアが警戒している。そして、前後の二人に挟まれるような形でハルメリアはハーシュをおぶっていた。ハーシュは比較的細身とは言え、女のハルメリアには流石に手に余るようだ。
ハルメリアは悲壮感のこもったため息をついた。
「なんで私が…こんなことを……」
「ごめん……なさい…ハルメリア様……」
ハーシュは潤んだ瞳でハルメリアのことを見た。
「……なっ……」
一瞬ハルメリアが動きを止め、その顔がみるみる紅潮していった。
「ど、どうしました…ハルメリア様…?」
「あ、あなた!!なんだか妙な気分になるからその上目遣いはやめてくださらない!?」
「え?は、はい……?」
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そうこうしているうちに四人は三階層までたどり着いていた。ここまで来ると害意のある魔物で力のあるものはほとんどいない。
「ここまで来たらもう大丈夫だろう、ハルメリア殿。代わろう」
「うう…私もう肩が痛くてちぎれそうですわ…」
汗だくで意識の混濁としたハーシュは、されるがままカインに身を預けた。
(あれ…?なんだろう…いい匂いがする………)
その匂いは首元のあたりから香るようだった。誰だろうかと不思議に思うが、意識も視界もぼんやりとして判然としない。
(嗅いでると……安心して……お腹の辺りが…ドクドクする……)
無意識のうちにハーシュはその香りのする方へ、カインの首元へぐっと顔を寄せた。
「……はっ……はぁ…………」
「…ハー…シュ??」
「ああーーー!!??なんですのなんですのなんですの!!!???」
「うるさいわね…!!??一体なんなのよ!!」
「は、ハーシュ様がカイン様にとって代わった途端イチャイチャしてますですの!!」
「はあ!?何言ってんの!?いちいち病人に目くじら立てるんじゃないわよ!!」
リデアはハルメリアの方を一瞬振り向くと自然カインとハーシュの様子が目に留まった。リデアは一瞬固まったあと視線を前に戻した。
「た、確かに……なんかイチャイチャしてるけど…!!」
「ほらですのー!!」
「カイン!!ちょっとは自重しなさい!!」
「ちょっと待て…なんでオレが…」
「うるさい!!男なら黙っていうこと聞け!!」
なぜか理不尽に怒られるカインだった。
(つづく)




