表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
焚き染め  作者: とみ
出会い
9/15

9 まつりの後

早足で夜の道を帰った。涙はもう止まっている。自分が惨めで悔しい。私は大馬鹿者だ。置き去りにしてしまった晴れ着と少年の事が気になった。今すぐ戻ったら、彼はまだ居るだろうか。晴れ着を返してもらって、持ち主に返すことはできるだろうか。……きっと無理だ。私の身なりでは一目で余所者と分ってしまう。彼もあの晴れ着が盗品だと分かるだろう。

なんで逃げてしまったんだろう。あの場で話せば、事を荒げずに済んだかも知れないのに。いや、やっぱり駄目だ。彼に捕まって引きずり出される可能性だってある。まつりと酒に酔った村人の前に、盗みを働く余所者の小娘が引き出されたとなれば…最悪の場合、なぶり殺されたとしても文句は言えない。


そんな場合ではないのに、妙に胸が熱くてそわそわする。彼の目を思い出した。

彼は私のことをどう思っただろう。考えようとして、やっぱりやめた。



寝ぐらに帰ると、母が起きて待っていた。夜になっても帰ってこない私を心配していたのだと思う。私は何年も前に殺された妹の事を思った。あの時の絶望を思い出し、母に申し訳なくなった。


「お母さん」

母は無言で私を招き寄せた。そんなことはすごく久しぶりで恥ずかしかったけれど、そのまま抱きしめられることにした。

「お母さん、……ごめんなさい。私、泥棒したの見つかった」

母は黙って聞いている。私に回した腕に力がこもった。離してもらって、水を飲んでから、私はまつりのこと、晴れ着のことをぽつぽつ話し始めた。母は口を挟まずに聞いてくれた。


「ここを去らなければならないね」

全部聞き終えて、母は静かに言った。分かっていても悲しかった。ここの村にはそう長くいたわけでもないけれど、普段の村は穏やかそうだったし、まつりは素敵だった。彼もこの村に住んでいるのだろう…。

彼の目を思い出した。もう会えないのか、と思うと苦しいような気がして、そんな自分の気持ちの意味が分からなくて困った。


病み上がりの母には酷かもしれないが、明日には隣の村へ発つことになった。いつもの通り、荷物の少ない私たちの旅支度はするまでもなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ