【第7章】ギルド登録
「ここか……?」
建物の入り口には【冒険者ギルド】と書かれている。
俺はパトリックさんの薦めで、冒険者ギルドに登録することにした。
ここで冒険者としてクエストをこなせば、魔筆の可能性を探りながら金も稼げる。
とはいえ、おそらく最下級のランクから始めることになるだろう。
最初から大金を稼ぐのは難しいはずだ。
しかし、いつまでもパトリックさんに甘えるわけにもいかない。
「少しでも稼がないと」
ギィィィー……。
木製の重い扉を開ける。
蝶番の軋む音が、まるで中にいる全員に「よそ者が来た」と知らせているようだった。
薄暗い室内には、大型の武器が壁にいくつも掛けられている。
そして、使い古された重そうな鎧に身を包んだ、いかにも冒険者といった風貌の男女が十数人。
その全員が、俺を値踏みするように見ていた。
……居心地が悪い。
俺はできるだけ誰とも目を合わせないようにしながら、受付へと急いだ。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。当ギルドでは冒険者の登録や、クエストの受注を承っております」
眩しい笑顔で接客してくれる受付嬢に、俺は一瞬、見惚れてしまった。
今更だが、この世界の人々は何故か美男美女ばかりだ。
「本日のご用件は何でしょうか?」
「あっ……えっと、冒険者登録をしたいんだが」
「はい。では、まずお名前をお伺いしますね」
「桐生 一心という」
「……えっ?」
俺が名乗った瞬間、明らかに彼女の顔色が変わった。
それだけではない。
先ほどまで談笑していた冒険者たちも、何やらザワザワと騒ぎ始めている。
「……少々お待ち下さい」
受付嬢は上擦った声でそう言うと、奥に座っていた少し偉そうな男のもとへ向かった。
そして、何やら耳打ちをする。
すると、それまで気怠そうに座っていた男の背筋がピンと伸びた。
「……何?」
男は勢いよく立ち上がると、物凄い速さで俺の目の前までやって来た。
「あ……あの、今日はどういったご用件で?」
「冒険者登録を……」
「えっ、どうして冒険者登録なんかを?」
……冒険者登録するのに、そんなに深い理由が必要なのか?
俺は少し考えた。
「いや、まぁ……お金を稼ぎたいのと、色々と研究をしたくて……」
「大丈夫です!」
男は慌てたように俺の言葉を遮った。
「それは私どもの知るべきことではありませんよね」
「愚問でした。大変申し訳ございません」
そう言うと、男は慌ただしく奥へ引っ込んでいった。
……なんなんだ?
しばらくすると、男はまた戻ってきた。
その手には、一枚のカードが握られている。
「こちらを……」
「ありがとう」
俺は受け取ったカードを眺めた。
そこには——。
【Sランク】と書かれていた。
「……Sランク?」
俺は思わず呟いた。
——そうか。
昨日、家に押し入ってきた暴漢を倒したことが、もう街中に知れ渡っているのだ。
……とはいえ、Sランクとは少し買い被り過ぎじゃないか?
まぁ、いいか。
クエストの選択肢が増えること自体は悪くない。
とりあえず、誰もいないところで薬草採取でもしながら、ゆっくり魔筆を研究しよう。
そう思いながら掲示板に貼られたクエストを眺めていると——。
「あの〜……」
背後から声を掛けられた。
振り返ると、一人の男が立っている。
「良かったら、僕と一緒にクエストに行ってくれませんか?」
「……え?」
その直後。
「あっ、俺も!」
「私も!」
「一心さんがいてくれるなら百人力だ!」
「私も……」
次々と声を掛けられる。
「えっ、ちょっと……」
俺が困惑している間にも話は勝手に進んでいき——。
気がつけば俺は、五人パーティーによる【緊急・ドラゴン討伐クエスト】に参加することになっていた。




