僕ニャンとシルビニャ
夕方の埼玉県南東部某所。西日に照らされた築三十年の木造二階建てアパート『大山荘』の前に、一台の積載トラックがハザードランプを点滅させて停車していた。
その傍らで、自動車買取業者の若手査定士、佐藤は、手元のバインダーを握りしめたまま、引きつった笑みを浮かべて立ち尽くしていた。
「あ、あの……藤野さん。お電話では『多少の小傷と、社外パーツへの変更があります』と伺っていたのですが」
「そうだにゃ。僕ニャンが手塩にかけて育てた、黄色い閃光ことスズキ・スイフトスポーツ、ZC31S型にゃ。ちょっとエンジンルームが賑やかで、足回りがガチガチになってる程度で、機関は絶好調にゃ!」
直人は、白猫獣人の自慢の耳をぴこぴこと動かし、襟足のやたらと長い髪を風になびかせながら、胸を張った。二十四歳。カー雑誌の編集部で働いているという、一応はそれなりの関東難関私立大学の社会学部を出ているはずの男だが、その目は完全に据わっていた。
「いや、あのですね……」
佐藤は、目の前の黄色い物体を凝視した。
スイフトスポーツ。確かにベースはそれだった。だが、目の前にあるそれは、普通の買取査定の枠組みを遥かに超えていた。
フロントバンパーはボルトではなく、極太の黒いタイラップ(結束バンド)十数本で無理やり縫い合わされ、ヘッドライトはサーキット仕様なのか、左側だけが黒いカーボン調のカバーで塞がれて吸気ダクトが突き出している。助手席側のドアには、アパートの廊下でスプレー缶塗装をした形跡があり、周囲の壁に飛び散った黄色い塗料が今も『大山荘』の外廊下のコンクリートをうっすらと染めていた。
「これ、エンジンルームを見せていただいても……?」
「いいにゃ! どうぞ見るにゃ! びっくりして腰を抜かさないようにするにゃ!」
直人が室内のレバーを引くと、ボンネットが『ガコン!』と不穏な金属音を立てて浮き上がった。
佐藤がそれを持ち上げると、中にはアルミ製の巨大なサクションパイプと、見るからに車検に通らなさそうな、排気熱で青紫に変色したエキゾーストマニホールドがのたうち回っていた。
「……これ、触媒は?」
「ストレートにゃ! 抜けが最高にゃ! サーキット専用にゃ!(※公道は走れません)」
「ですよね。あと、エアコンのコンプレッサーが取り外されて、ベルトが短い社外品に変わってますが」
「当然にゃ! テンロクNAのパワーを、一馬力たりとも快適装備に奪われたくないんだにゃ! エアコンなんか、車を走らせる上ではただの『重り』にゃ! 夏場は窓を全開にして、汗をダラダラ流しながら走るのが、真の車乗りというものにゃ!」
「……助手席と後部座席が、根こそぎ撤去されてるんですが」
「軽量化にゃ! 助手席なんかあっても、乗せる相手はパーツのダンボールしかいないにゃ!」
佐藤の胃が、キリキリと痛み始めた。
査定のために試乗しようとしたところ、キーを回した瞬間に、アパートの窓ガラスがビリビリと震えるほどの重低音が響き渡った。触媒ストレート+極太社外マフラーの組み合わせは、もはや爆音という言葉すら生ぬるい、暴力的な排気音だった。
しかも、ミッションをニュートラルから一速に入れようとした瞬間、凄まじい金属の引っかかりを感じた。
「藤野さん、これ……クラッチとミッション、かなりキてませんか?」
「気のせいにゃ! ダブルクラッチを丁寧に合わせれば、二速に入れる時に『ガリッ』ていうだけで、全然走れるにゃ! だいたい、機械なんてものは、乗り手の愛でどうにでもカバーできるんだにゃ! 愛が足りないからギアが鳴るんだにゃ!」
「いや、物理的な摩耗は愛ではカバーできませんが……」
佐藤はため息をつきながら、タブレット端末に数値を入力していった。
本来なら、こんな『魔改造された部品取り車』は、マイナス査定で引き取り料を請求したいくらいだった。しかし、直人が持っている純正パーツのストック(なぜかアパートの共用廊下に山積みになっており、隣の部屋のドアを塞いでいた)をすべて引き取るという条件と、一部の社外高級サスペンションの価値を考慮して、なんとか絞り出した。
「……三十万円。これが限界です。これ以上は、うちの店長に殺されます」
「三十万にゃ!? 安いにゃあ……僕ニャンがどれだけの金をこの黄色い閃光に注ぎ込んだと思ってるんだにゃ! でも……まあ、いいにゃ。次の『本命』のための軍資金としては、これだけあれば十分戦えるにゃ!」
「本命、ですか?」
「そうだにゃ。僕ニャンは、ついに真実の愛に出会ってしまったんだにゃ!」
直人は、早く手続きを済ませろと言わんばかりに、ガラケーをパタパタと開閉させながら言った。彼にとって、スマホでのやり取りやラインなどという文明の利器は不要だった。
「あんなものに時間を盗られるくらいなら、プラグの焼け色を見ている方が百倍マシにゃ」
それが直人の哲学だった。
手続きが終わり、スイスポが積載トラックに載せられていく。
ゆっくりと坂道を下っていく黄色い車体を見送りながら、直人は涙ぐんでいた。
「うにゃあああ……逝ってしまったにゃあ。僕ニャンの、黄色い閃光が、ドナドナされていってしまったにゃあああ……!」
「そんなオーナー、二度と現れないでほしいですけどね」
背後から、低く落ち着いた、しかし呆れ果てた声が聞こえた。
直人が振り返ると、そこには白髪交じりの大家、大山豊が立っていた。
手には、プラスチック製のゴミバケツを持っている。大山荘の敷地内の掃除をしていたのだろう。
「大山さん! 見てくれたにゃ? 僕ニャンの、涙の別れにゃ……!」
「別れはいいけどね、直人くん。これでようやく、廊下に散乱してた黄色いバンパーと、あのベトベトした黒いオイルの缶は片付くんだね?」
「にゃっ……あれは、愛車との思い出の残骸にゃ!」
「思い出は、自分の部屋の中にしまっておきなさい。隣の部屋の人から、また『ドアの隙間から黄色いプラスチックがはみ出してて、出入りするたびに脛を打つ』って言われてたんだよ。大家としても、これ以上は庇いきれない」
「お隣さんは、ちょっと神経質すぎるにゃ! 脛を打つのは、歩き方が悪いからにゃ! もっと足を上げて歩けば済む話だにゃ!」
「君の理屈は、いつも車を中心に回りすぎているよ……。まあ、あのうるさい黄色い車がいなくなっただけでも、アパートの治安は少しは良くなるか」
大山は、ふう、と小さくため息をついた。かつて、自身も白いKeiワークスで夜の道を走っていたという噂がある大山だが、今ではすっかり、ルールを重んじるアパートの大家だった。
「ふふん、大山さん、それは大きな勘違いにゃ」
直人は、不敵な笑みを浮かべて、襟足をサッと払った。
「黄色い閃光は去ったけれど、それは新たなる伝説の始まりに過ぎないんだにゃ。僕ニャンは、これから本物の『FR』を手に入れるんだにゃ! グリップ派の僕ニャンが、ついに本気で首都高を攻めるための、究極の相棒にゃ!」
「……また、ろくでもない車を買うつもりだね?」
「失礼にゃ! ろくでもない車じゃないにゃ! シルビアにゃ! それも、S14型前期ターボにゃ!」
「……S14の、前期か」
大山は、一瞬だけ目を細めた。その脳裏に、かつてのバブル期の熱気や、ガソリンの匂いが漂う夜の峠の光景が過ったのかもしれない。だが、彼はすぐに首を振った。
「とにかく、駐車場は一台分しか貸してないからね。整備をするからって、隣の21番や23番まではみ出すんじゃないよ。あそこは、新しく入居する人のために空けてあるんだから」
「わかってるにゃ。22番は僕ニャンの、シルビニャのための神聖な神殿にゃ」
「……その『シルビニャ』とやらが届く前に、まずは部屋の前のゴミと、あの『飲料缶』の日に出したペール缶をどうにかしなさい。ゴミ収集の人、絶対に持って行ってくれないからね」
「解せないにゃ……。車の飲み物の缶なのに……」
大山がブツブツと言いながら去っていくのを見送り、直人は自分の部屋へと駆け上がった。
ガソリンと鉄粉と、安物のギヤオイルが混ざり合った、強烈な臭いが充満する六畳一間の汚部屋。
直人は、部屋の真ん中にある、油の染みついたローテーブルの前に滑り込み、パソコンを立ち上げた。
液晶画面に映し出されているのは、ヤフオクの出品ページ。
【★格安★ S14 シルビア 前期 ターボ 即ドリ仕様 ボロミサイル 部品取り 書類あり】
現在の価格は、二十八万五千円。
残り時間は、あと一時間と四十五分。
「待っててにゃ、僕ニャンのシルビニャ……!」
直人は、掲載されている写真を、舐めるように拡大して分析し始めた。
それは、一般の人間が見れば、ただの「スクラップ一歩手前のゴミ」にしか見えないシロモノだった。
フロントバンパー? そんなチャラチャラしたプラスチックのエアロパーツは、この車には最初から存在しない。
代わりに、そこにあるのは、無骨なスチール製の丸パイプを曲げて、溶接して作り上げた巨大な『バッシュバー』だった。メンバーフレームが丸出しになっており、その骨組みに、重々しい鉄のバーがボルト留めされている。
ボディは、あちこちがハンマーでブッ叩かれたようにボコボコで、自家塗装の白い缶スプレーの跡が垂れて、カサブタのようになっている。フェンダーは不揃いに叩き出され、お世辞にも「美しい車」とは呼べなかった。
「……素晴らしいにゃ。本当に、素晴らしいにゃ」
直人は、液晶画面を見つめたまま、恍惚の吐息を漏らした。
「エアロなんていう、チャラチャラした外見だけの概念すら剥ぎ取られて、骨と肉が丸出しになっている……。重いバッシュバーでガチガチに武装して、ドリフトの壁に何度もぶつけられてボロボロにされた、悲しきガチ練習車系のミサイル……。可哀想にゃ、こんなにボコボコにされて……。でも、大丈夫にゃ。僕ニャンの元に来れば、もう壁にぶつけられることもないにゃ。僕ニャン仕様の、最強のグリップマシンとして、首都高の風にしてあげるにゃ!」
直人の脳内では、すでにこのボロミサイルシルビアが、ピカピカに整備され、首都高C1のトンネルを爆音とともに駆け抜ける姿が完璧に再生されていた。
だが、現実は厳しい。
現在の入札者一覧を見る。
高値更新を続けているアカウント『kuma_R_34』。
評価数は少ないが、執拗に価格を吊り上げてくる。
「にゃ、にゃ……にゃんだ、この『kuma_R_34』ってやつは……! 名前からして、どうせGT‐Rとかいう、電子制御の塊みたいな車に乗ってる、金持ちの車クズに違いないにゃ! そんな金持ちが、なんでこの、バッシュバー丸出しのボロミサイルS14を欲しがるんだにゃ!? もしかして、部品取りにして、エンジンだけ抜いて転売するつもりかニャ!? 許さん、そんな車に対する冒涜は、この僕ニャンが絶対に許さないにゃ!」
直人は、即座に「二十九万円」で入札ボタンを押した。
【あなたが現在の最高入札者です】
「ふふん、これに懲りたら、大人しく引くにゃ。お前みたいな、エアコンの効いた快適な車内でパドルシフトをカチカチやってる軟弱者には、この『エアコンなし・内装なし・バッシュバー丸出し』の硬派なシルビニャを乗りこなす資格はないんだにゃ!」
直人は、ローテーブルの上に置いてあった、ノンアルコールのビール風飲料をプシュッと開け、一気に喉に流し込んだ。
お酒は絶対に飲まない。なぜなら、今夜、落札が決まった瞬間に、興奮のあまり「ちょっとガソリンスタンドまでフューエルワンを買いに行く」という突発的なドライブが発生するかもしれないからだ。常に愛車(まだ手に入っていないが)のために、自身のアルコール濃度はゼロに保たれていなければならない。
夜の十時半。
アパートの外が、少しずつ静かになっていく時間帯。
だが、ヤフオクの画面上では、目に見えない深夜の戦争が勃発していた。
価格は、いつの間にか【三十八万円】に達していた。
「にゃ、にゃああああ!? 上がってるにゃ! またあいつにゃ! 『kuma_R_34』にゃ!」
直人の猫耳が、怒りで激しくピクピクと動く。
彼の手元にある資金は、スイスポの売り上げ金三十万と、今月のカー雑誌編集部での給料(そこそこ良い)から、生活費や家賃を差し引いた、実質四十万円が限界だった。これ以上の競り合いは、文字通り「来月の食費」を削ることを意味する。
「ぐぬぬぬ……。来月は、毎日もやしと、キャベツの芯にゃ。いや、もやしすら贅沢にゃ。アパートの裏に生えている雑草を、塩で茹でて食べるにゃ……! ヤニ代に金を費やす隣のヤニカスに比べれば、雑草を食べて車に金を注ぎ込む僕ニャンの方が、よっぽど高潔で健康的だにゃ!」
直人は、狂ったような速度で、キーボードを叩いた。
【四十万円】で入札。
画面が切り替わる。
だが、わずか十秒後。
【高値更新されました。現在の価格:410,000円】
「にゃ、にゃ……にゃあああああああああああああ!!! 四十一万!? 超えたにゃ! 僕ニャンの、限界突破にゃあああ!」
直人は、頭を抱えて畳の上を転げ回った。襟足の長い髪が、埃まみれの畳に擦れてめちゃくちゃになる。
このままでは、シルビニャが、あの『kuma_R_34』という、電子制御まみれの金持ちの手に落ちてしまう。そして、バラバラに分解され、ヤフオクの闇に消えていくのだ。
「そんなの、可哀想すぎるにゃ……! ボコボコのフェンダーも、丸出しのメンバーフレームも、全部僕ニャンが愛して、綺麗に治してあげるって約束したんだにゃ! シルビニャも、きっとそれを望んでいるにゃ!」
直人は、ガラケーをひったくった。
そして、会社の編集長の電話番号を表示した。深夜の十一時過ぎ。普通なら、寝ているか、あるいは大人の時間帯だ。
「……いや、ダメにゃ。ラインなんて知らない僕ニャンが、この時間に直接電話をかけたら、編集長に『お前、明日からクビな』って言われて、給料すら貰えなくなるリスクがあるにゃ。ここは……」
直人は、引き出しの奥から、一枚のクレジットカードを取り出した。
キャッシング枠。
それは、車クズにとっての「最終兵器」であり、同時に「人生の墓場」への片道切符でもあった。
「……シルビニャ。僕ニャンは、お前のために、人間社会のルールを一つ捨てるにゃ」
直人の目が、妖しく光った。
彼は、クレジットカードの情報をヤフオクの決済システムに入力し、キャッシング枠を担保に、一気に入札額を引き上げた。
【四十五万円】。
画面の残り時間は、あと五分。
自動延長が入る。
チクタクと、部屋の柱時計の音が不気味に響く。
直人は、マウスを握る右手を、小刻みに震わせていた。
相手が、再び入札してくるか。
それとも、諦めるか。
残り、三分。
更新はない。
残り、一分。
静寂が、六畳一間の汚部屋を支配する。
残り、十秒。
「……にゃ、にゃ……にゃ…………」
画面が、パッと切り替わった。
【おめでとうございます! あなたが落札しました。】
【落札価格:450,000円】
「………………」
直人は、しばらくの間、画面を見つめたまま息を止めていた。
そして、ゆっくりと、限界まで肺に溜まった空気を吐き出した。
「……勝ったにゃ」
ポツリと、呟いた。
「勝った……勝ったにゃアアアアアア!!! 僕ニャンの、僕ニャンのシルビニャアアアアア!!! あはははは! 見たか『kuma_R_34』! これが、車に対する『愛の深さ』の違いにゃ!!! お前なんか、新車のエコカーで大人しくアイドリングストップでもしてろにゃアアア!」
直人は立ち上がり、喜びのあまり部屋の中を飛び跳ねた。
床を激しく踏み鳴らし、サスペンションのバネが転がり、壁の「フューエルワン」の空き缶タワーが、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
その瞬間。
ドンドンドンドンドンドン!!!
下の階から、天井を突き破らんばかりの、凄まじいモップの柄での打撃音が響いてきた。
「おいコラァ! 夜中の十二時だぞ! 何が『にゃアアア』だ! 静かにしろ!」
「にゃっ……! 失礼にゃ! これは、新しい愛車を迎えるための、歓喜の舞にゃ!」
直人は、床に向かって叫び返し、それからすぐに、お風呂場へと向かった。
深夜であろうと、興奮して汗をかいた体は、完璧に洗い流さなければならない。彼は「お風呂に入らないと、明日、シルビニャの取引ナビで出品者に送るメッセージの文面が、不潔なものになってしまうにゃ」という、独自のこだわりを持っていた。
ザザーーーッ、と勢いよくシャワーの音が響き渡る。
アパートの薄い壁を通して、その水音と、直人が嬉しさのあまり歌う「バッシュバー丸出しシルビニャの歌(自作・変ロ長調)」が、深夜の静寂に響き渡った。
「〜♪ 僕のシルビニャ、ボロボロボディ〜、バンパーなんて、いらないにゃ〜、重い鉄パイプの、バッシュバーで、首都高の壁を、弾き返すにゃ〜〜♪」
お風呂から上がった直人は、髪からボタボタと水を滴らせながら、ガラケーで出品者へのメッセージを打ち込み始めた。
「落札させていただきましたにゃ。陸送の手配をお願いしますにゃ……」
翌朝。
アパート『大山荘』の22番駐車スペースには、まだ何もない。
だが、その両隣の21番と23番には、昨日、買取業者が「これは引き取れません」と言って置いていった、スイスポから外したボロボロの純正シートと、大量のタイヤが、まるで砦のように美しく整列していた。
大山が、それを見て頭を抱えている姿が、ベランダから見えた。
「直人くん……。君、本当に、更新の時期を考え直した方がいいかもしれないね……」
「大山さん! 何言ってるにゃ! あと三日もすれば、ここにかっこいいシルビニャが来るんだにゃ! そしたら、そのシートを、シルビニャの助手席に無理やり移植するにゃ!」
「……S14に、スイフトのシートが、そのまま付くわけないだろう」
「大山さん、車っていうのはにゃ、ステーを自作して、ボルトを無理やり通せば、何でも付くようにできてるんだにゃ!」
直人は、胸を張って言い放った。
その横のゴミ捨て場には、昨日出されたはずの、油の染みたペール缶が、「回収不可」の赤いステッカーを貼られたまま、朝日を浴びて、静かに、新しく入居した23番の車の進路を完璧に塞ぐ形で、美しく積み上げられていた。




