22.手詰まりで小休止
曙橋に対して密かにライバル意識を燃やす篠崎は、彼女より先に解いて注目を集めようと躍起になっていた。
彼は曙橋が指で鉛筆をリズミカルに回している姿に安心し、菊川が腕組みをして考えているようで寝ているような様子を見て、また安心する。
しかし、安心したはいいが、彼も漢字1列を書き写したところで手の動きが止まっている。
漢字の画数を数えてみたり、音読みしてみたり、実は3進数なのではないかと久遠仏を012に置き換えてみたり。そうやっていろいろ試してみたが、これといって決定打がない。
焦りは募る。
さらに依頼主の九段下がそばにいて、時折欠伸を噛み殺しているからやりにくい。
マネキンのように突っ立っている西大島も気になる存在で、この際、ギャラリーに退席願おうかとも考えた。
しかし、この手詰まりに陥った状態がそれで解消するとは思えない。
それだけ、今回の暗号は難関なのである。
篠崎が暗号解読と周囲の状況に神経をすり減らしていると、九段下の方からブレイクタイムの提案があった。
「だいぶ時間が経ったから、おやつでも食べて休憩しては?」
一向に暗号を解いてくれない少年少女に落胆気味な依頼主の表情を見て、リングで奮戦中にタオルを投げられた気分がしてあまり喜べない篠崎だったが、手詰まり感を払拭したかっただけに賛成する。
曙橋は、長めの息を吐いて鉛筆を置いた。菊川は、すっかり目を覚ました様子で、おやつの登場に拍手をした。
テーブルに置かれたのは、豆大福とほうじ茶だった。三人がおやつを頬張る姿を見て、九段下が目を細め、彼らの学校生活についていくつか質問をしてきた。
そうして、とりとめもない雑談が始まったのだが、篠崎の関心はそこにはなく、時折メモに書かれた漢字の羅列に視線を移していた。それは曙橋も同じであった。なので、もっぱら会話は九段下と菊川のやりとりだった。
そんな雑談に飽きる頃、篠崎はさっきから気になっていた漢字の羅列の中に、ある規則が見つかってゾクッとした。




