13.豪華なおもてなし
陽は少し傾いたとはいえ、まだまだ強い日差しが降り注ぐ中、すぐそこのはずが延々と歩かされた篠崎は、あえぎながら愚痴をこぼした。
「西大島さん。すぐそこって……こんなに遠いんですか?」
「申し訳ございません。ここは田舎ですから、隣の家はこの距離が一番近い方です」
「マジ――本当ですか?」
「はい。旅館からここまで500メートルありますが、すぐそこの部類です。わたくしは、家から小学校まで片道4キロメートルでした。友達の家に遊びに行くのも、一番近いところで3キロメートル、遠いところは6キロメートルでした」
「歩いて行ったのですか、その距離を遊びに?」
「はい。学校も全て歩きです」
何も言い返せない篠崎は、都会ではまず見かけない藁葺き屋根を見上げ、足が止まった。どういう構造をしているのだろうと考えていると、西大島が「では、行きましょう」と言ってズンズンと玄関の方へ歩いて行く。
呼び鈴でも押すかと思いきや、西大島は人の家の引き戸をガラガラと開けて中へ入っていった。鍵をかけないのは不用心だと思いながらも、篠崎達は後を従う。
都会の標準的な玄関よりも3倍は広いと思われる玄関に入り、年代を感じさせる柱や天井を眺める。篠崎は、古民家を改装した店に入った経験があるが、それよりも古い家を感じさせる作りを前にして感動した。
木の匂いがなんとも言えない。都会のコンクリートの家にはこのような匂いはまずないので、とても新鮮な感じがする。
と、その時、木の匂いに混じって味噌汁の匂いが漂ってきた。それで篠崎達三人は、今更ながら昼食を取っていなかったことに気づき、急に空腹を覚え、正直な胃袋が音を立てた。
「ああ、いらっしゃい」
そう言って奥から現れたのは、丸々と太って艶々した赤ら顔の初老のご主人だった。
「九段下様。この方々が、あの暗号を解いてくださいました」
西大島の紹介が照れくさい三人は、軽く会釈をしたまま顔を上げられない。
「なんと! 暗号が解けた! それはすごい! さ、さっ、お上がりなさい。よかったら、お昼でもどうです?」
田舎の人の割には都会風なイントネーションの九段下だが、西大島から暗号解読の朗報を受け取って、すっかりご機嫌なようだ。
一緒に十人が楽に食事を取れるテーブルで、篠崎、菊川、曙橋が人数の倍はある昼食を振る舞われる。昼間から缶ビールをあおる九段下が、暗号解読の英雄が目の前でおいしそうにごちそうを食べているのを嬉しそうに眺めていた。
九段下は西大島にビールを勧めるも、「車を運転しておりますから」と丁寧に断られて残念がる。
十分すぎるごちそうを平らげた三人が「ごちそうさま」を言うのを待ちわびていた九段下は、さっそく切り出した。
「それで、宝の場所はどこに?」




