14.小さな仏像
九段下の問いに対して真っ先に答えそうになった篠崎は、思い直して曙橋の顔を見て、次に菊川の顔を見た。曙橋は『どうぞご自由に』と言いたそうな顔でお茶を飲んでいるし、菊川はニコッと笑っているので、自分が代表で回答してもよさそうな雰囲気を悟った彼は、満面の笑顔で得意げに答えた。
「暗号には『仏の中』と書かれていました」
すると、九段下の笑顔が一瞬にして訝しそうな表情に変わった。
「仏の中? 仏……仏……。それは本当かね?」
冷や水を浴びせられた気分の篠崎は、硬い表情で九段下を見つめる。
「は……はい」
「埋蔵金というから千両箱とか大きな壺とかに入っていると思っていたのだが、仏とは……」
そう言って困り果てた顔を見せる九段下は、ボリボリと頭を掻きむしった。
篠崎は、せめて等身大の座像くらいはあって欲しいと願いつつ尋ねる。
「その仏様は、大きくはないのですか?」
「うむ……まあ、来たまえ」
落胆ぶりを背中で見せる九段下の後ろを四人が付いていくと、床の間のある8畳間の和室へ案内された。
「おそらく、仏とはあのことのはず」
そう言って九段下が指差す先に、床の間に飾られた大きな絵皿があり、その右横に高さが10センチメートルくらいの木製の仏像が置かれているのが見えた。花鳥風月を描いた豪華な絵皿に比べて、濃い茶色一色で年代物のような仏像は、趣はあるものの見劣りしてしまう。
仏像のそばにしゃがみ込んで腕組みをする九段下は、合点がいかないという顔で振り返る。確かに、この中に埋蔵金が入っているのが解せないのは当然だ。世界に二つとない非常に高価な宝石でも入っているのだろうか。
すると、曙橋が「もしかして」と切り出した。
「ご先祖様は、念には念を入れて、その仏像の中にさらに埋蔵金の隠し場所の地図とかを納めているのではないでしょうか?」
その言葉に九段下の表情が和らいだ。
「なるほど、お嬢ちゃん。それは一理ある」
それから、四人に囲まれた九段下が仏像の足の裏とか背中とかを調べていると、パカッと音がして背中の一部が口を開けた。
「ややっ! 何か入っているぞ!」
九段下がニコニコしながら仏像の背中から取り出したのは、古色がかった筒状の紙片だった。
「ん? 外側に『弐ノ弐』と書いてある。……ということはもう一つ『弐ノ壱』があるということか?」
困り顔の九段下は、「仏……仏……」とつぶやきながら辺りを見渡した。




