第八章 「軍人家系の三代目として」
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
当事者としてのEMプロジェクトの回顧に、当時の心構えや心境のヒアリング。
そうした具合の質問を軸に、至ってリラックスした雰囲気でインタビューは順調に進んでいったの。
そんなインタビューの質問の方向性が、ここでガラッと変わったんだ。
「吹田千里少佐の御家族は、三世代にわたる軍人の家系だと伺いました。幼い頃から、軍人になる事を目指していましたか?」
こんな具合に、私のパーソナリティに密接に関わる質問にね。
「仰る通り、私の母である吹田万里は特命機動隊の予備准尉で祖母の栄喜穂もまた楽隊に所属しておりました。人類防衛機構とその前身である大日本帝国陸軍女子特務戦隊に身を置いた二人の肉親は、私の模範で御座います。その背中を見て育ったと言っても過言ではありません。」
お母さんとお祖母ちゃん。
この女性親族二人の影響は、決して無視出来ないよ。
何しろ私のお母さんが特命機動隊への志願入隊を決意したのは、小学4年生の時なのだからね。
ピアニスト志望の親友の優れた演奏に触発され、「あのような美しい演奏は私には出来ないけれど、夢に向かって頑張る人達を悪の脅威から守る事なら出来る」と自分の目標を定めた若き日のお母さん。
そしてこの高潔な志を、先人として温かく後押ししたお祖母ちゃん。
その志は確かにこの私に受け継がれていると、胸を張って言う事が出来るよ。
「ですから仮に私に特命遊撃士としての資質がなかったとしても、母に倣い特命機動隊の下士官から軍人としてのキャリアを積み重ねていたであろうと考えます。」
だけど、その場合は今とは全く異なるキャリアになっていたのかも知れないね。
事と次第によっては、EMプロジェクトの推移だってまるで違っていたのかも。
そう考えたら、今の結果が一番良かったと言うしかないのかもね。
昔から「風が吹けば桶屋が儲かる」とは言うけれども、世の中の因果関係というのは一筋縄じゃいかないよ。
「有り難う御座います。敬愛する御家族の薫陶もまた、今日の吹田千里少佐を形作るにあたり欠かせないファクターと言えますね。」
もしも大人になった私に娘が生まれたら、その子は私の背中を見て育ってくれるのだろうか。
そしてお母さんやお祖母ちゃんがしてくれたように、私もその子に確かな生き様を示す事が出来るだろうか。
インタビューを受けながら、ついそんな事を考えちゃったよ。
そんな私を現実に引き戻すかのように、インタビューの質問方針はまた変化していったんだ。
「それでは再びEMプロジェクトの御話に戻させて頂きますが、同期の生駒英里奈少佐達が危険を顧みず装備を届けに来てくれたそうですね。その時のお気持ちを教えてください。」
この次なる質問に反応を示したのは、私だけじゃなかったよ。
護衛役として右脇に控えてくれている英里奈ちゃんもまた、白い遊撃服の肩をピクッと揺らしていたんだ。
「この御質問につきましては、私一人だけで回答致しますと公平性を欠いてしまうでしょうね…如何でしょうか、咲洲舞中尉?此度のインタビュー、生駒英里奈少佐にも少しだけ参加して頂くというのは?」
「せっかく同席されている事ですし、それは良い考えですね。それに、その方がインタビュー記事もより充実する事でしょう。広報課の取材方針と矛盾しないのであれば、小職としては異論は御座いません。」
臨時秘書からの御墨付きは貰ったし、広報課の子達も「より多角的な取材が出来る」と満更でも無い様子だったの。
「悪いね、英里奈ちゃん。護衛として同行して貰うだけの予定だったのに、インタビューにも協力して貰っちゃって…」
そうしてソファーの端に詰めて座り直しながら問いかけたんだけど、その返答は実に有り難い物だったんだ。
「いえいえ、千里さん。他ならぬ千里さんの為ですから。私と致しましても喜んで協力させて頂きますよ。」
何しろ肝心の御本人も、この打診には乗り気だったんだから。




