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三匹のおネエ ~おネエ達の異世界生活~  作者: ジェード
第Ⅱ章 人里に出た三匹
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052 出発

すみません。前話の予告が詐欺になっちゃいました。

視点は引き続きキョーコさんです。

 翌日私達はキャンプを片付けたわ。


 綺麗さっぱりガレージに片付けてから準備を整えた私達は、村へ下ることにしたの。一応、予め調べておいた東側の道から村へ近付いたわ。


 現在の私達は旅の商人という設定よ。


 二人の子供と一緒に旅をしていて、商売道具は薬ね。

 富山の薬売りみたいに置き薬で商売とか有るか分からないけれど、薬というものは何処でもそれなりに需要があるから。

 荷物が嵩張らずに儲けを出す商売と考えるとこれだったのよ。そうじゃないと商人にしては軽装備で怪しまれちゃうでしょう? まぁ、子連れ商人が傭兵も雇わずに旅をしているのは、どの程度いるのかしら。

 一応東側から入るというのは意味有っての事よ。

 事前にある程度村の様々なことを調べて回ったことで、この村で何処から入るべきかは算段がついているのよ。問題はどの様に自然に入るかということぐらいだけれど、この辺は出たとこ勝負ってことで。


 え、考え無しじゃないかって?

 そんないちいち石橋を叩いていたら、そのうち叩き割って渡れなくなるでしょう? 考えても仕方のないことには脳のカロリーを消費しないことにしているの。



「主、前方で戦闘だ」

「うむ。この気配はゴブリンだな。複数の気配を感じるからグループで動いているのだろう」



 流石というか、鑑定無しでも野生の感みたいなものですぐに探知しちゃう二人。おかげで私が鑑定を起動しなくても良いくらいだけれど、そこは私も一応しっかり探知しているわ。



「グループのゴブリンの他に一人だけ人間も居る様ね。狙われている様だから助ける必要があるわ」

「何故だ?」



 インディが不思議そうに私の目を覗いて来る。

 この子っていつもこういう視線の動かし方をするのよね。

 これ、女の子に向けたらあらぬ誤解を生むわよ。



「人が襲われていたら、人は助けるものなのよ。貴方達は同族を助けないの?」

「ん? 助けん。望まれてもいないし、弱きものは滅びるのが自然の掟であろう」



 彼はさも当然であるといった言い様ね。

 確かに彼のこれまでの暮らしを考えたらそうだったのかもしれないけれど。



「……それは野生の世界ね。人の世界は違うのよ。貴方も人の姿をしている以上は、人としての常識を知る必要があるわね。まぁ尤も、私の感覚がこの世界の感覚と同じかと問われたら自信ないから、これは私達一家の家訓よ」

「家訓?」

「そう。家訓。家の中での約束事。困っている人が居たら助ける。自分がされて嫌なことはしない。人のものを盗まない。妬まない。出来る?」



 私がそう言って彼の瞳を覗き返してやると、彼はたじろいで目を逸らした。

 そこに隣に立つパトラッシュが目を輝かせて言ったわ。もう体がうずうずしてどうしようもないってのがありありと分かるし、人型になって無い筈のしっぽがブンブンいっている感じから既に答えは丸わかりだけど。



「我は守るぞ!家訓は大事にするから、行かせてくれ!」

「パト、お前は……。キョーコ、一つ尋ねたい。家訓は常に最上か? つまり、それは己の要求より他者の要望を優先するのか?」



 私の方へ向き直った彼の眼は真剣だ。

 この表情から察するに、守る気は有る様ね。



「いいえ。常にではないわ。貴方の身を守るために必要であれば、貴方の必要が優先される。自分を大切に出来ない人に、他人を大切にすることは出来ないもの。つまり、貴方の命が脅かされるならば、その相手に対抗するのは正当な権利よ。何事も自分の平和あっての物種でしょう?」



 私の答えに彼はホッとした様に表情を緩めたわ。

 たぶん、理不尽に自分が譲歩しなくてはいけないのかと構えたのね。その反応は無理ないものかしら。

 実際、私のいた世界の平和主義というものも、その名を借りた商売として食い物にされたりと散々な状況があったりして、額面通りの平和に必ずしもなっていないのよね。

 見えている範囲の平和の裏側で歪みとして存在する暴力があったりして、それに対してそれこそ正当防衛をしようものなら暴力反対と言って責められたりと変なことになっていたから、行き過ぎた抑制もまた危険なものなのよ。

 時には拳で分かりあう様なことも有るって思うと、なんとも複雑な話だけれど、良くも悪くも自他の距離感が大事で、前のめりでも引き過ぎてもだめって事なんでしょうけど。

 そもそもこんなことを私が話す日がくるとは思わなんだわ。



「そうなのか? 分かった。ならば従おう」

「従うって……まぁ、分かってくれたなら良いわ。この辺りで襲われる人間と言ったら村人だから、様子を見る必要も無いでしょう」

「主、我が先に向かって倒しても良いか?」



 パトラッシュが相変わらず目を輝かせているけれど、子供の体で行けるのかしら?



「貴方、その体で戦えるの?」

「大丈夫だ!問題ない!」



 やめて、昔見た某消費者金融の宣伝の犬の様な瞳を見せられると、私も心が揺れるわ。



「パトが行くならば、俺も行こう。この体を慣らすのに丁度良いからな」



 あらら、インディまで乗り気になったわ。

 まぁ、インディも一緒ならパトラッシュが無理しても大丈夫そうかしら?

 確かに彼らがどこまでやれるのかは興味もあるし、万が一面倒が起きてもGより強いってことは無さそうだからいけるかしら。



「分かったわ。貴方達に任せてみるわ。でも、派手にやってはだめよ。追い払う程度にしておきなさい」

「何故だ?」



 インディが眉根を寄せて不可解という表情をしている。

 確かにこれまで私は魔物を倒してきているから、彼がこんな顔になるのも無理ないことだけれど、それは『人がいない場所』という前提があってのことなのよね。

 今後人がいる場所で戦うとして、仮に倒すにしても常識を超えた戦いをした場合、それを見た人がどの様な印象を受けるかは……あまり考えたくない結果を招く可能性もあるのよ。


 インディの話では、この世界の人間の常識的戦闘力ってずっと低い印象なのよね。そりゃ冒険者とか言う人達の中には強い人もいるらしいけれど、一般の住人には私達の能力ですら非常識な可能性の方が大きい。そうした前提で戦ったとして、同じ非常識を見た際に敵を倒すのと追い払うのでは与える印象が随分違うと思うのよ。


 人って理不尽なもので、圧倒的な力を見て頼もしいと感じる一方で、非常識な力には恐怖も感じるものでしょう。それがもし自分にやって来るとしたらって考えた時に、相手が加減を出来る人かどうかでも随分印象が違うと思うの。それに、弱い魔物と思って侮って倒したら、恨みを買って仲間がわらわら出てくるなんてことがあったら、面倒この上ないことになるし。


 あ、でも、魔物を半殺しが必ずしも良いとは限らないから、見えないところで始末は必要かしら。ふむ、ここは思案の必要有りね。って嫌だわ、自分で言っておいて不穏よ。

 とはいえ、何事もご立派な建前は必要よ。うん。



「無用な恨みを稼ぐよりは、穏便な方が良いでしょう? 魔物にも魔物の事情があるんじゃなくて?」

「……ふむ。ゴブリン程度にその様な思考能力があるかは分からぬが、考慮しよう。パト、行くぞ!」

「応!」



 魔物を理由にしたけれど、考慮してくれるという言葉を貰えたことを喜ぶべきかしら。私達の今後と彼らと人との関係を考える上で選択肢が欲しいという私の我儘ではあるけれど、私自身手探り感が半端無いから、事前に対処できるものはしておきたいってのが本音ね。

 魔物が人間と対立するこの世界がどうしてそうなっているかなんて分からないけれど、人間にも怖い所があって扱いが難しいことは間違いない事実だから、そうした部分が悪戯に刺激される状況は避けたいの。

 あの子達が人間と共生する一つの取っ掛かりになるのかどうかまでは分からないけれど、人間に幻滅してほしくないのよね。……ここら辺は私の望みかしら。


 それにしても、二人は声を掛け合うとあっと言う間に消えたわ。

 忍者とかしゅっと消えたりする描写があるけれど、ほぼあれよね。


 何アレ。


 あの体であんなに速く動けるものなのかしら?

 魔法的な何かって雰囲気も無かったから純粋な運動能力と思うべきなんだろうけど、まるであの非常識な動き、ガリ並みじゃない。

村へ入る道を歩き始めた彼らは前方で敵の気配を察知しました。

その際のやり取りで彼らの今後を思うキョーコ。


次こそは視点が変わる……はず。

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