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Dear 狂愛  作者: みの
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28話 女王様に跪け?


「先生のためにご飯作ってきたの。はい、あーん」

「簾穣寺ちょ待っ…むぐ……上手いな」

「ふふ、よかったあ」


 人の前でいちゃいちゃしてんなよと思いつつ、空気のように過ごしてます!


「バリッバリッ、バキバキ、しゃりしゃり」


 空気のように静かに…メキメキっと口から音がでているのは断じて私のせいではない。


 うーん、現状は私が刺されてから1年たった世界っていうのはわかったけど、どんな変化があったのかがわからない。ここは、主人公の調査をするのが一番謎が解ける気がする。


 最終の時限が終わってからこっそり、主人公のクラスに来て観察開始する。机の中の教科書を鞄に移し、席を立って扉に手をかける。扉を開けると主人公を見にやってきた他クラスの男子達にとりかこまれる。


 おいっ、このチヤホヤイベントは私のときなかったじゃない! ずるい!


 主人公は男の子たちに冷めた目を一瞬向けて口を開く。


「邪魔よ、どきなさい」


 全体が沈黙で包まれたかと思うと、ざっと人波が割れて道ができた。主人公は何事もなかったかのように歩きだす。次に向かったのは数学準備室、扉に手をかけたが鍵がかかっていたらしく無言で職員室に向かった。職員室で科学教師に声をかけている。


「ねえ、あなた、藤宮先生はいる?」

「いいえっ、し、知りません」


 生徒がタメ語で教師が敬語って駄目だろ!


 主人公は舌打ちをしてまた歩きだす。


 主人公がさった後の職員室では科学教師と国語教師が怖かったねえと怒るどころかキャピキャピと話していた。


 お前ら何歳だ! まぜろ!


主人公を再び追いかけると、下駄箱を開けるところだった。下駄箱から大量の封筒(ラブレター?)が溢れ出てくる。しかし、彼女は目にも入らないのかそれらに一切触らず、逆に踏み付けつつ颯爽と校門を出て行った。


 主人公が家に帰る途中、おじいさんがよろよろと歩いてくる。よく見ると、ノリトさんを敵対視していた何とか寺のじいさんだ。


 あのじいさん、まだ生きてたのか……


じいさんが主人公をじっと見ている。


「おっ? おおお、お前さんはいつぞやの色欲魔の知り合いじゃな! あやつがわしの目の前に姿を現さなくなって一安心じゃ。ほほほほ」


 主人公は自分に話しかけていると思わなかったのか、まったく興味がなかったのか、じいさんに目を向けない。じいさんが切れ気味に追いかけていく。


 強いなじいさん!


「待て~い! 小娘!」

「邪魔」

「邪魔じゃと! 霊験あらたかなこの男前に向かって何事じゃ!」


 主人公はじいさんの襟首を掴み、睨みつける。


「お前は誰に向かって話をしているの?」

「ぐお!」


 ぎりぎりまで首を絞めてじいさんを放り投げると、ぎゃひんと尻餅をついた。そして、締めとばかりにじいさんをヒールで……いや普通の革靴で踏み付ける。


「頭が高い、跪いて許しを請いなさい」

「ひぃ~、じょ、女王様!」


 話の長い嫌味じいさんと意見が合うのは嫌だが、確かに私も思った。女王様と……


「はあ、はあ女王様、お許しを!」


 じいさんは土下座。主人公は興味をなくしたのかまた、歩き出す。


 じいさんが顔を悶えてもっと――とか言っていたのは聞かなかったことにしよう。うん。


 次に近所の公園前で主人公を立ち止まった。彼女の視線を追うと公園の中には春君がブランコにのってしょぼくれている。


 これは! イベンツ!


 世の中に絶望した天才美少年の春君は公園で偶然出会った美少女と話をして、初めての恋心を抱く。さあ、主人公行け、行くのだ!


「……ふん」


 ああ、あああ。無視して素通りとかルール違反でしょ!


 しばらく主人公の背を見つめていたが、春君を放っておくことができず、公園による。


「……少年、どうしたの?」

「ひっ、と、トワさん」


 声をかけると肩を震わせ、怯えた目で見られたが、私の顔をみて表情を和らげる。


「なんかあったの?」

「……」

「私が何かできるとか傲慢なことは言わないけどさ、話を聞くことはできるよ」

「トワさん……」

「ねえ、春君。とりあえずその“トワさん”っていう他人行儀な呼び方やめようよ」


 春君の隣のブランコに座って軽く動くと、ぎいっと鉄の錆びた音がする。


「……おばさ」


 無言で握り拳をつくると、びくっと震える。


「……トワお姉ちゃん」

「なあに?」


 日は傾き、辺りは刻々と暗くなっていく。



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