↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかく勇者に転生したのだから、さくっと魔王を倒してあとはハーレムを作りたい  作者: naomikoryo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/65

第49話 反転

世界樹の深部。

原初の王が放つ白い光によって、黒きものの動きはかろうじて止められていた。

だが、長くは持たない。

白い光には少しずつ亀裂が入り、その隙間から黒い霧が漏れ始めている。


原初の王:「急げ。」

ハヤト:「分かってる!」


セレナとアスカは、巨大な魔法陣の前に膝をついていた。

導師が作り上げた術式は複雑だった。

世界樹から魔力を吸い上げ、黒い魔石を通して変質させ、その力を封印の深部へ送り込む仕組みになっている。

今度は、その流れを完全に逆転させなければならない。


セレナ:「アスカ、そっちは?」

アスカ:「三つ目まで解除しました。」

アスカ:「ですが、まだ七つ残っています。」

セレナ:「多すぎるわよ!」

導師:「十二だ。」

セレナ:「何?」

導師:「制御術式は十二ある。」

セレナ:「七つじゃないの!?」

導師:「隠蔽した術式が五つある。」

セレナ:「なんでそんな面倒な作りにしたのよ!」

導師:「他者に利用されないためだ。」

ハヤト:「お前が一番利用してるだろ!」

導師:「否定はしない。」

ハヤト:「そこで素直になるな!」


黒きものが大きく震えた。

原初の王の白い光が軋む。


原初の王:「残り時間は少ない。」

セレナ:「分かってるわよ!」


導師はセレナの隣へ座る。


導師:「私が隠蔽術式を解除する。」

セレナ:「信用していいの?」

導師:「信用する必要はない。」

セレナ:「またそれ?」

導師:「監視していろ。」

セレナ:「言われなくてもそうするわ。」


二人は同時に術式へ手を伸ばした。

敵同士だったはずの二人が、一つの魔法陣を書き換え始める。


ハヤト:「なんか変な光景だな。」

ヴェルミナ:「あなたが言う?」

ハヤト:「何で?」

ヴェルミナ:「魔族の私と普通に旅してる勇者が。」

ハヤト:「もう慣れた。」

ヴェルミナ:「少しは意識しなさいよ!」

ハヤト:「何を!?」

ヴェルミナ:「何でもない!」


フローネは二人のやり取りを聞きながら、少しだけ眉をひそめた。

だが今はそれどころではなかった。


◆◇◆


ヴェルミナは世界樹へ突き刺さった黒い魔石の前に立つ。

全部で十二本。

導師が術式を安定させるために配置したものだった。


ヴェルミナ:「これを全部繋げればいいのね?」

アスカ:「はい。」

アスカ:「ただし、直接魔力を流さないでください。」

ヴェルミナ:「どうして?」

アスカ:「黒い魔石に吸収されます。」

ヴェルミナ:「面倒ね。」

アスカ:「お願いします。」

ヴェルミナ:「分かったわ。」


ヴェルミナは両手を広げる。

十二の紫色の魔法陣が同時に現れた。


ハヤト:「多っ!」

ヴェルミナ:「黙って見てなさい。」

ハヤト:「はい。」


紫色の光が糸のように伸びる。

一本目。

二本目。

三本目。

黒い魔石同士が次々と繋がっていく。

だが六本目まで繋いだところでヴェルミナの身体がふらついた。


ハヤト:「おい!」

ヴェルミナ:「大丈夫よ。」

ハヤト:「大丈夫じゃないだろ!」

ヴェルミナ:「集中が切れるから黙ってて!」

ハヤト:「でも。」

ヴェルミナ:「ハヤト。」


珍しく名前だけだった。

ハヤトは言葉を止める。


ヴェルミナ:「お願い。」

ヴェルミナ:「今だけは任せて。」

ハヤト:「……分かった。」


ヴェルミナは再び術式に集中する。

七本目。

八本目。

生命共有術で消耗した身体には、明らかに負担が大きかった。

額から汗が流れる。

九本目。

十本目。


ヴェルミナ:(まだ。)

ヴェルミナ:(あと二本。)


十一本目。

そして十二本目。

全ての黒い魔石が、紫色の光で繋がった。


ヴェルミナ:「できた……!」

ハヤト:「よし!」


次の瞬間。

ヴェルミナの膝から力が抜けた。


ハヤト:「危ない!」


ハヤトが咄嗟に抱き止める。


ヴェルミナ:「……。」

ハヤト:「無茶しないんじゃなかったのかよ。」

ヴェルミナ:「誰かさんに言われたくないわ。」

ハヤト:「それはそうだけど。」

ヴェルミナはハヤトの腕の中で、小さく息を吐いた。

ヴェルミナ:「できたんだからいいでしょ。」

ハヤト:「よくない。」

ヴェルミナ:「え?」

ハヤト:「倒れるまでやるなよ。」

ヴェルミナ:「……。」

ハヤト:「俺が言うのも何だけどさ。」

ヴェルミナ:「本当に何なのよ。」

ハヤト:「でも、心配するだろ。」


ヴェルミナは何も言えなかった。

ハヤトは深い意味など考えていない。

それくらい分かっている。

それでも胸の奥が熱くなる。


ヴェルミナ:(ずるい。)

ヴェルミナ:(こういうところが、本当にずるい。)


フローネは少し離れた場所から二人を見ていた。

ハヤトがヴェルミナを抱き止めている。

必要なことだと分かっている。

それなのに胸の奥が落ち着かない。


フローネ:(またです。)

フローネ:(私は、どうして……。)


その感情をもう知らないふりはできなくなり始めていた。


◆◇◆


導師:「解除した。」

セレナ:「こっちも終わった!」

アスカ:「術式を反転させます!」


アスカが両手を魔法陣へつく。

金色の光が広がる。

セレナも魔力を流し込む。

魔法陣の線が一本ずつ逆方向へ光り始めた。


導師:「反転開始。」


黒い魔石が震える。

それまで世界樹から黒きものへ流れていた魔力が止まった。

そして逆流する。

黒きものが激しく揺れた。


ガルデ:「効いてるぞ!」


黒い霧が周囲から吸い戻されていく。

世界樹の壁を侵食していた黒い筋も、ゆっくりと薄くなり始めた。


アスカ:「成功です!」

セレナ:「まだよ!」


黒い力が十二本の魔石へ集まっていく。

そして紫色の光を通して、一つの場所へ送られる。


原初の王:「来るぞ。」


原初の王は両手を前へ出した。

集められた黒い力が。

一気に原初の王へ流れ込む。


原初の王:「ぐっ……!」


白い光が黒く染まり始める。


ハヤト:「おい!」

原初の王:「問題ない。」

ハヤト:「絶対問題ある顔してるぞ!」

原初の王:「顔で判断するな。」

ハヤト:「今まで会った奴、みんなそう言うんだよ!」

原初の王:「勇者。」

原初の王:「準備しろ。」

ハヤト:「何を?」

原初の王:「お前の力を寄越せ。」

ハヤト:「言い方!」

セレナ:「今は気にしてる場合じゃないでしょ!」

ハヤト:「分かってる!」


ハヤトは原初の王の前へ立つ。

剣を地面へ突き立てる。


ハヤト:「どうすればいい?」

原初の王:「私に触れろ。」

ハヤト:「それだけ?」

原初の王:「後は私がやる。」

ハヤト:「本当に?」

原初の王:「お前は疑い深いのか、疑わないのか、どちらなんだ?」

ハヤト:「相手による。」

原初の王:「そうか。」


ハヤトは原初の王の肩へ手を置いた。

その瞬間身体の奥から何かが引き出される。


ハヤト:「うおっ!?」


金色の光がハヤトの身体から溢れた。

原初の王の白い光と混ざる。

黒。

白。

金。

三つの光がぶつかり合う。

世界樹全体が震えた。


ハヤト:「これ、どれくらい続ければいい!?」

原初の王:「黒き力が消えるまでだ。」

ハヤト:「長かったら?」

原初の王:「耐えろ。」

ハヤト:「雑!」

ガルデ:「お前に合ってるじゃねぇか!」

ハヤト:「どこがだよ!」


黒きものが暴れる。

術式から逃れようと無数の触手を伸ばす。


ガルデ:「来るぞ!」

フローネ:「勇者様たちを守ります!」

ガルデ:「おう!」


フローネとガルデが前へ出る。

飛んでくる触手を次々と叩き落としていく。


セレナ:「術式は私たちが維持する!」

アスカ:「絶対に切らせません!」


ヴェルミナも立ち上がろうとした。

だが身体が動かない。


ヴェルミナ:「くっ……。」

ハヤト:「ヴェルミナ!」

ヴェルミナ:「何よ!」

ハヤト:「そこで休んでろ!」

ヴェルミナ:「命令しないで!」

ハヤト:「お願いだから休んでてくれ!」

ヴェルミナ:「……。」

ハヤト:「また倒れたら心配する!」

ヴェルミナ:「……分かったわよ。」


小さな声だった。


ガルデ:「素直だな。」

ヴェルミナ:「うるさい!」


◆◇◆


黒きものが少しずつ小さくなっていく。

世界樹を侵食していた黒い筋も消えていく。

だが原初の王の顔色は悪くなっていた。


ハヤト:「おい。」

原初の王:「続けろ。」

ハヤト:「お前、大丈夫なのか?」

原初の王:「問題ない。」

ハヤト:「それ信用できない言葉らしいぞ。」

フローネ:「勇者様!」

ハヤト:「今言われて分かった!」


原初の王は僅かに笑う。


原初の王:「心配するな。」

原初の王:「千年前とは違う。」

ハヤト:「何が?」

原初の王:「今度は。」

原初の王:「私は一人ではない。」


ハヤトは一瞬だけ黙った。

そして笑う。


ハヤト:「そうだな。」


一人ではない。

人間がいる。

魔族がいる。

原初の王がいる。

そして導師までいる。

全員が同じものを止めようとしている。

千年前に壊れたものが偶然かもしれないが。

もう一度だけここに揃っていた。


ハヤト:「行くぞ!」

原初の王:「ああ!」


金色の光が強くなる。

白い光もそれに応えるように輝く。

黒きものが最後の抵抗を見せる。

世界樹全体が大きく揺れた。

そして黒い光が一気に原初の王へ吸い込まれた。

静寂。

黒い霧が消えた。

触手も消えた。

世界樹を侵食していた黒い筋も完全に消えている。


ハヤト:「やった……?」

セレナ:「たぶん。」

ガルデ:「終わったのか?」


アスカは周囲の魔力を確認する。

しばらくしてゆっくり頷いた。


アスカ:「黒い魔力を感じません。」

フローネ:「では。」

アスカ:「成功です。」


全員の身体から力が抜ける。


ハヤト:「終わったぁ……。」


ハヤトはその場に座り込んだ。


フローネ:「勇者様!」

ハヤト:「休んでるだけ!」

フローネ:「それならいいです。」

ハヤト:「信用されてないなぁ。」


原初の王も静かに息を吐いた。

黒い力は完全に消えている。

だがその時だった。


導師:「違う。」


全員が導師を見る。


ハヤト:「何が?」


導師は世界樹の床を見ていた。


導師:「量が合わない。」

セレナ:「何?」

導師:「千年前から封じられていた力が。」

導師:「これだけのはずがない。」


原初の王の表情が変わる。


原初の王:「まさか。」

ハヤト:「何だよ?」


原初の王は自分の胸へ手を当てた。


原初の王:「本体がいない。」


一瞬誰も意味を理解できなかった。


セレナ:「本体?」

原初の王:「今浄化したのは。」

原初の王:「封印から漏れ出した一部に過ぎない。」

ハヤト:「じゃあ。」

ハヤト:「本物はどこだ?」


答えは導師が持っていた。

導師の胸元、服の内側から黒い光が漏れていた。


導師:「……。」

ハヤト:「お前。」


導師はゆっくり自分の胸を見る。

黒い紋様が首元へ広がっていた。


導師:「いつからだ?」

原初の王:「離れろ!」


遅かった。

導師の身体から黒い光が爆発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。