↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかく勇者に転生したのだから、さくっと魔王を倒してあとはハーレムを作りたい  作者: naomikoryo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/65

第27話 獣王の咆哮

三日後。

北の断崖。

雪が降っていた。

空は灰色。

吹雪も近い。

そんな場所に勇者パーティは立っていた。

誰も軽口を叩かない。

いつもなら騒がしいハヤトでさえ静かだった。


◆◇◆


ガルデだけが前を見ている。

断崖の向こう。

そこに一人の男が立っていた。

グラヴ。

獣王四天王。

そして。

かつての英雄。


グラヴ:「来たか。」

ガルデ:「来た。」

静かな声だった。

兄妹の再会。

だが。

もう昔みたいな笑顔は無い。


ハヤトは周囲を見回した。

ハヤト:「一人か。」

セレナ:「魔王軍の姿もない。」

アスカ:「罠ではなさそうです。」

フローネも頷く。

だが。

安心はできない。

目の前にいる男だけで国家級の脅威なのだから。


グラヴはゆっくり戦斧を肩へ担ぐ。

グラヴ:「聞きたいことがあるんだろ。」

ガルデ:「ある。」

グラヴ:「言え。」

ガルデは拳を握った。

そして。

ずっと聞きたかったことを口にする。


ガルデ:「なんでだ。」

ガルデ:「なんで魔王軍なんかに行った。」

風が吹いた。

雪が舞う。

グラヴは少しだけ空を見上げる。


グラヴ:「失望したからだ。」

ガルデ:「何に。」

グラヴ:「全部だ。」


グラヴの目は真っ直ぐだった。

怒りもない。

狂気もない。

ただ。

強い諦めだけがあった。


グラヴ:「獣人は弱い。」

グラヴ:「人間も弱い。」

グラヴ:「王も。」

グラヴ:「貴族も。」

グラヴ:「政治家も。」

グラヴ:「全部弱い。」

ハヤトが眉をひそめる。

グラヴは続けた。


グラヴ:「弱い奴が上に立つ。」

グラヴ:「力を持つ奴が潰される。」

グラヴ:「正しい奴が損をする。」

グラヴ:「そんな世界だ。」

グラヴ:「だから壊す。」


ガルデが叫ぶ。

ガルデ:「だから魔王軍か!?」

グラヴ:「そうだ。」

ガルデ:「馬鹿か!!」

グラヴ:「そうかもな。」


空気が震えた。

グラヴから魔力が溢れる。

雪が吹き飛ぶ。

地面が軋む。

四天王。

その名に相応しい圧力だった。


グラヴ:「だが。」

グラヴ:「今日は説得されに来た訳じゃない。」

ガルデ:「……。」

グラヴ:「見せてみろ。」

グラヴ:「お前達の正義とやらを。」


◆◇◆


戦闘開始。

最初に飛び出したのはガルデだった。

ガルデ:「うおおおおおお!!」

戦斧が唸る。

轟音。

地面が砕ける。

だが。

グラヴは受け止めた。

片手で。


ガルデ:「なっ……!?」

グラヴ:「軽い。」

ガルデの身体が吹き飛ぶ。

岩壁へ激突。

雪崩が起こる。


ハヤトが飛び出す。

今度は最初から全力。

前回のバルガス戦よりも速い。

強い。

成長した。

確実に。


ハヤト:「うおおおお!!」

グラヴ:「いい目だ。」

ガガガガガァァァン!!

剣と戦斧。

衝撃波。

空気が裂ける。


だが。

届かない。

押し切れない。

グラヴは笑っていた。

楽しそうに。


セレナの魔法。

アスカの支援。

フローネの援護。

全員が連携する。

それでも。

少しずつ押されていく。


グラヴ:「その程度か。」

ハヤト:「くっ……!」

グラヴ:「悪くない。」

グラヴ:「だが弱い。」


次の瞬間。

戦斧が振り下ろされた。

ドォォォォォォン!!

大地が裂ける。

全員吹き飛ばされる。

フローネが転がる。

アスカも倒れる。

ガルデが膝をつく。


ハヤトだけが立っていた。

息が荒い。

腕が震える。

それでも剣は離さない。


グラヴはそんなハヤトを見る。

そして。

少しだけ笑った。


グラヴ:「いい。」

グラヴ:「お前は嫌いじゃない。」

ハヤト:「嬉しくねぇよ。」

グラヴ:「そうか。」


その時だった。

吹雪が強くなる。

視界が真っ白になる。

そして。

雪の向こうから。

新たな魔力が現れた。


セレナが顔色を変える。

アスカも固まる。

フローネが息を呑む。


そこにいたのは。

紫髪の魔族。

ヴェルミナだった。


ヴェルミナ:「やりすぎよ。」

グラヴ:「来たか。」

ヴェルミナ:「それ以上やると。」

ヴェルミナ:「本気で怒られるわよ。」

グラヴが笑う。


ハヤトは首を傾げた。

ハヤト:「誰に?」

ヴェルミナは答えない。

ただ。

少し困ったように笑う。


ヴェルミナ:「魔王様に。」


沈黙。

雪だけが降っていた。

そして。

勇者達はまだ知らない。

魔王軍の中ですら一枚岩ではないこと。

ヴェルミナが魔王直属に近い立場であること。

そして。

近い未来。

この魔族の女を巡って大事件が起きることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。