第17話 反乱の裏側
獣王国王都。
反乱軍事件が解決してから数日が経った。
王都はようやく平穏を取り戻し始めている。
だが。
勇者パーティには休みがなかった。
◆◇◆
王城会議室。
机の上には大量の資料が積まれていた。
ハヤトは開始五分で死んでいた。
ハヤト:「帰りたい。」
リーフィア:「まだ始まったばかりですわ。」
ハヤト:「頭使うの苦手なんだよ。」
リーフィア:「知っています。」
フローネ:「知っています。」
セレナ:「知ってるわ。」
アスカ:「知っています。」
ガルデ:「知ってる。」
ハヤト:「なんで全員言うの!?」
会議の内容は重要だった。
反乱軍が所持していた魔石。
魔王軍との接触記録。
各地に残された足跡。
調査の結果。
奇妙な事実が浮かび上がっていた。
王女:「反乱軍の幹部たちは、皆同じ人物と接触していました。」
リーフィア:「こちらでも確認しています。」
フローネ:「やはり魔王軍。」
王女は首を横に振った。
王女:「違います。」
全員が顔を上げた。
王女:「四天王ではありません。」
王女:「魔王でもありません。」
セレナが眉をひそめる。
セレナ:「じゃあ誰?」
王女は資料を一枚めくった。
そこに描かれていたのは仮面の男だった。
王女:「名乗った名前は。」
王女:「『導師』。」
その場に重苦しい空気が流れる。
しかし。
ハヤトだけは別方向だった。
資料を見ながら首を傾げる。
ハヤト:「なんかラスボスの部下っぽい名前だな。」
リーフィア:「感想が軽いですわね。」
ハヤト:「いや導師って。」
ハヤト:「絶対黒幕だろ。」
セレナ:「否定できないのが腹立つわね。」
会議終了後。
勇者パーティは王都を出る準備を進めていた。
次の目的地は北方地方。
黒い魔石の出所があるらしい。
ハヤトは荷造りをしながらため息を吐く。
ハヤト:「また旅かぁ。」
ガルデ:「嫌なのか?」
ハヤト:「いや。」
ハヤト:「嫌じゃない。」
ハヤト:「ただ。」
ハヤト:「もっと王都観光したかった。」
ガルデ:「観光?」
ハヤト:「可愛い獣人の女の子多いし。」
ガルデ:「このエロガキが!!」
ゴンッ!
頭を叩かれた。
◆◇◆
出発前日。
ハヤトは市場を歩いていた。
一人である。
本当にたまたまである。
別に女性を眺めていたわけではない。
断じて。
ハヤト:(市場っていいよな。)
(活気あるし。)
(美人も多いし。)
やっぱり見ていた。
その時だった。
女性:「勇者様。」
ハヤト:「ん?」
振り返る。
誰もいない。
ハヤト:「空耳か?」
女性:「上よ。」
聞き覚えのある声だった。
屋根の上。
ヴェルミナが座っていた。
紫髪を揺らしながら笑っている。
ハヤト:「またお前か!」
ヴェルミナ:「また私よ♡」
ハヤト:「暇なのか?」
ヴェルミナ:「失礼ね。」
ヴェルミナ:「忙しいわよ?」
ハヤト:「どう見ても暇そうだけど。」
ヴェルミナは楽しそうだった。
本当に。
ヴェルミナは軽やかに飛び降りる。
距離が近い。
妙に近い。
ハヤトは少し後ずさった。
ヴェルミナ:「逃げるの?」
ハヤト:「逃げてない。」
ヴェルミナ:「照れてる?」
ハヤト:「照れてない。」
ヴェルミナ:「可愛い。」
ハヤト:「うるさい。」
顔が熱い。
だが本人は認めない。
ヴェルミナはそんな様子を見て笑う。
そして。
珍しく真面目な顔になった。
ヴェルミナ:「忠告しておくわ。」
ハヤト:「へ?」
ヴェルミナ:「北へ行くんでしょう?」
ハヤト:「なんで知ってる。」
ヴェルミナ:「知ってるの。」
ハヤト:「便利だな。」
ヴェルミナ:「あそこは危険よ。」
ハヤトは眉をひそめた。
冗談を言っている顔ではない。
ヴェルミナ:「黒い魔石。」
ヴェルミナ:「あれを作ってる連中がいる。」
ハヤト:「四天王か?」
ヴェルミナ:「違う。」
ハヤト:「魔王か?」
ヴェルミナ:「違う。」
ハヤト:「じゃあ誰だよ。」
ヴェルミナは少しだけ黙った。
そして。
ヴェルミナ:「知らない方が幸せかもね。」
ハヤト:「それ答えになってない。」
不意に風が吹く。
紫髪が揺れる。
ヴェルミナは空を見上げた。
その横顔は少しだけ寂しそうだった。
ハヤト:(なんだ?)
(今日のこいつ変だな。)
ヴェルミナ:「勇者。」
ハヤト:「なんだ。」
ヴェルミナ:「死なないでね。」
ハヤトは少し驚いた。
冗談だと思った。
だが。
彼女は笑っていなかった。
◆◇◆
次の瞬間。
転移魔法陣が現れる。
ヴェルミナの身体が光に包まれる。
ハヤト:「待て!」
ヴェルミナ:「また今度♡」
いつもの笑顔が戻る。
そして消えた。
市場に一人残されたハヤトは頭を掻いた。
ハヤト:「なんなんだあいつ。」
意味が分からない。
敵なのか。
味方なのか。
それすら分からない。
ただ一つ。
確かなことがあった。
次の旅は。
今まで以上に危険になる。
勇者の勘がそう告げていた。
そしてその予感は。
残念ながら外れない。
北へ向かった先で。
勇者パーティは再び四天王と相対することになるのだから。




