第13話 王女救出
魔獣討伐の翌日。
勇者パーティは獣王国の王都へ正式に招かれていた。
内戦は激しさを増している。
魔王軍の影も確認されている。
状況は決して良くない。
だが。
ハヤトは朝から上機嫌だった。
ハヤト:「獣人国いいなぁ。」
ハヤト:「飯うまいし。」
ハヤト:「美人多いし。」
ガルデ:「このエロガキが!」
バシィッ!
背中を叩かれた。
ハヤト:「痛い!」
ガルデ:「朝からそれか!」
ハヤト:「事実だろ!」
ガルデ:「事実でも言うな!」
フローネが深いため息を吐いた。
セレナは笑いを堪えている。
アスカは呆れ顔だった。
◆◇◆
獣王城。
会議室。
獣王の前には多くの将軍と貴族が集まっていた。
しかし空気は最悪だった。
貴族A:「反乱軍は即時討伐すべきです!」
将軍B:「そんな余裕はありません!」
貴族C:「なら王位を譲るべきだ!」
ガルデ:「てめぇら黙れ!!」
ドン!!
机が砕けた。
全員が静かになった。
ハヤト:(怖っ。)
(ガルデ怒るとめちゃくちゃ怖いな。)
ガルデ:「今は内輪揉めしてる場合じゃねぇ!」
ガルデ:「魔王軍まで絡んでんだぞ!」
正論だった。
だが。
それでも会議はまとまらない。
ハヤトは何となく嫌な予感を覚えた。
◆◇◆
その夜だった。
王都の外れ。
ハヤトたちは宿で休んでいた。
すると。
突然大きな爆発音が響く。
ドォォォォン!!
窓ガラスが震える。
ハヤト:「何だ!?」
フローネ:「外へ!」
全員が飛び出す。
王都の方角から黒煙が上がっていた。
◆◇◆
現場は大混乱だった。
炎。
悲鳴。
逃げ惑う人々。
そして。
黒装束の集団。
兵士A:「反乱軍だ!」
兵士B:「王城が襲撃された!」
ガルデの目付きが変わる。
ガルデ:「チッ!」
ガルデ:「狙いは王族か!」
ハヤト:「王族!?」
ガルデ:「王女だ!」
◆◇◆
王城へ向かう。
街のあちこちで戦闘が起きていた。
魔物まで混ざっている。
ハヤト:「これ反乱軍だけじゃないだろ!」
セレナ:「間違いなく魔王軍が絡んでる!」
アスカ:「魔族の気配があります!」
フローネ:「急ぎます!」
王城内部。
そこはすでに戦場だった。
倒れた兵士。
破壊された壁。
血の跡。
そして奥から女性の悲鳴が聞こえる。
女性:「誰か!!」
ガルデ:「あっちだ!」
全員が走る。
大広間。
そこで一人の少女が追い詰められていた。
栗色の髪。
獣耳。
凛とした顔立ち。
美少女だった。
周囲を五人以上の刺客に囲まれている。
ハヤト:(美少女だ。)
(めちゃくちゃ美少女だ。)
フローネ:「勇者様!!」
ハヤト:「分かってる!」
危険な状況だった。
だが。
ハヤトは一歩踏み出す。
剣を抜く。
ハヤト:「そこの美少女!」
王女:「え?」
ハヤト:「安心しろ!」
ハヤト:「勇者様が来た!」
王女:「勇者……?」
次の瞬間。
ハヤトが消えた。
◆◇◆
一閃。
二閃。
三閃。
反乱兵が吹き飛ぶ。
さらに魔物も斬り捨てる。
あっという間だった。
気付けば敵は誰一人立っていない。
沈黙。
王女も唖然としている。
ガルデが苦笑した。
ガルデ:「相変わらず強ぇな。」
ハヤト:「だろ?」
ハヤトは得意げだった。
そして王女へ振り返る。
ハヤト:「怪我はないか?」
王女は呆けた顔のまま頷く。
王女:「あ……。」
王女:「ありがとうございます。」
ハヤト:「礼には及ばない。」
ハヤト:「勇者だからな!」
決まった。
本人はそう思った。
しかし。
次の瞬間。
壁が吹き飛んだ。
ドォォォォン!!
土煙。
轟音。
全員が振り返る。
そこに立っていたのは巨大な獣人だった。
全身を黒い鎧で覆っている。
異常な威圧感。
ガルデの顔色が変わる。
ガルデ:「お前か……!」
獣人:「久しぶりだな。」
獣人:「ガルデ。」
ハヤト:「知り合いか?」
ガルデ:「反乱軍の将軍だ。」
ガルデ:「獣将ゼルグ。」
敵だった。
しかも。
かなり強そうだった。
ゼルグが王女を見る。
王女も睨み返した。
王女:「今さら何の用です!」
ゼルグ:「決まっている。」
ゼルグ:「王家は終わりだ。」
魔力が膨れ上がる。
空気が重い。
周囲の兵士たちも後退した。
ガルデが戦斧を構える。
ハヤトも剣を握る。
フローネも前へ出る。
戦いが始まる。
その時だった。
ゼルグの背後。
割れた窓の向こう。
屋根の上に誰かが座っていた。
紫髪。
妖艶な笑み。
ハヤトの顔が固まる。
ハヤト:「あ。」
セレナ:「どうしたの?」
ハヤト:「美人。」
セレナ:「は?」
ハヤト:「あの美人。」
アスカ:「魔族ですね。」
フローネ:「完全に敵です。」
屋根の上の女性。
ヴェルミナが楽しそうに笑う。
ヴェルミナ:「また会ったわね♡」
ハヤト:「いたぁぁぁぁぁ!!」
戦場には似つかわしくない叫びが響いた。
◆◇◆
次回。
ガルデVSゼルグ。
そして。
勇者ハヤトとヴェルミナの三度目の遭遇。
内戦の裏で動く魔王軍の陰謀が、ついに姿を現し始める。




