第12話 獣人国の内戦
獣王国ガルムへ向かう旅は順調だった。
順調すぎると言ってもいい。
魔物も少ない。
盗賊も出ない。
宿にも困らない。
勇者パーティは平和そのものだった。
ハヤト:「暇だ。」
フローネ:「平和で良いことです。」
ハヤト:「イベントがない。」
セレナ:「その言い方やめなさい。」
アスカ:「嫌な予感しかしません。」
ハヤトは木陰で寝転がる。
青空を見上げる。
ハヤト:(獣人かぁ。)
(どんな人たちなんだろ。)
(可愛い子いるかな。)
アスカ:「います。」
ハヤト:「聞いてない!」
アスカ:「思考が垂れ流しです。」
ハヤト:「その能力ずるいだろ!」
◆◇◆
数日後。
一行は獣王国との国境へ到着した。
巨大な城壁。
高い見張り台。
独特な木造建築。
人間の国とはかなり雰囲気が違う。
そして何より。
行き交う人々に獣の耳や尻尾が生えている。
ハヤト:「おおおおお!」
ハヤト:「本当にいる!」
フローネ:「勇者様。」
ハヤト:「耳だ!」
ハヤト:「尻尾だ!」
セレナ:「子供ね。」
ハヤト:「触りたい。」
アスカ:「最低です。」
ハヤト:「なんで!?」
◆◇◆
入国手続きの最中。
周囲の様子が妙なことに気付く。
兵士たちの空気が険しい。
街もどこか緊張感が漂っている。
フローネも同じことを感じたらしい。
フローネ:「随分物々しいですね。」
兵士:「今は内戦中だからな。」
ハヤト:「本当にやってるんだ。」
兵士は苦笑した。
兵士:「南部の反乱軍と王国軍が睨み合ってる。」
兵士:「今日明日で戦争が始まってもおかしくねぇ。」
セレナ:「予想以上ね。」
◆◇◆
獣王国の首都へ到着したのは夕方だった。
王城へ案内される四人。
だが。
謁見の途中で外が騒がしくなる。
兵士が飛び込んできた。
兵士:「大変です!」
兵士:「反乱軍が進軍開始!」
獣王:「なんだと!?」
兵士:「北の砦が陥落しました!」
会議室の空気が一変する。
ハヤトたちも顔を見合わせた。
リーフィアから聞いていた以上に状況は悪いらしい。
◆◇◆
翌朝。
王都近郊の前線へ向かうことになった。
勇者パーティは戦況確認のため同行する。
その道中だった。
前方から大きな爆発音が響いた。
ドォォォォン!!
地面が震える。
煙が上がる。
兵士たちが慌てて動き始める。
兵士:「敵襲だ!」
兵士:「反乱軍だ!」
ハヤト:「もう来たのか!?」
フローネ:「構えてください!」
戦場は混乱していた。
獣人兵。
人間兵。
入り乱れる。
その中心で暴れている影があった。
巨大だった。
身長は二メートルを超える。
褐色の肌。
銀灰色の獣耳。
長い尻尾。
巨大な戦斧を片手で振り回している。
そして。
とんでもない美人だった。
ハヤトの思考が止まる。
ハヤト:(でっかい。)
(美人だ。)
(でっかい。)
(美人だ。)
(しかも強い。)
セレナ:「勇者。」
ハヤト:「はい。」
セレナ:「顔が気持ち悪い。」
ハヤト:「ひどい。」
獣人の女性が戦斧を振るう。
敵兵がまとめて吹き飛んだ。
完全に人型の台風だった。
兵士たちが叫ぶ。
兵士A:「ガルデ隊長だ!」
兵士B:「押し返せ!」
ハヤト:「ガルデ?」
フローネ:「まさか。」
その女性がこちらへ走ってくる。
速い。
巨体なのに異常な速度だった。
ガルデ:「おい!」
ガルデ:「人間の勇者ってのはお前か!?」
ハヤト:「そうだ!」
ガルデが豪快に笑う。
ガルデ:「思ったよりチビだな!」
ハヤト:「初対面で!?」
ガルデ:「ははははは!」
笑い方まで豪快だった。
その直後。
戦場の奥から巨大な魔物が現れた。
黒い毛並み。
三つの頭。
狼型の魔獣。
兵士たちの顔色が変わる。
兵士:「魔王軍だ!」
兵士:「また来やがった!」
ガルデが舌打ちした。
ガルデ:「面倒だな。」
ハヤトは剣を抜く。
ハヤト:「あれ倒せばいいんだろ?」
ガルデ:「簡単に言うな。」
ハヤト:「できるし。」
ガルデ:「面白いじゃねぇか。」
ニヤリと笑う。
その笑顔は戦士そのものだった。
次の瞬間。
ハヤトとガルデが同時に飛び出した。
ハヤトの剣が閃く。
ガルデの戦斧が唸る。
ドガァァァン!!
魔獣の一つ目の首が吹き飛んだ。
続いてガルデの一撃。
二つ目の首が砕ける。
最後の首は二人同時だった。
轟音。
爆風。
そして。
巨大な魔獣が崩れ落ちた。
沈黙。
戦場全体が静まり返る。
ガルデが目を丸くしていた。
ガルデ:「おいおい。」
ガルデ:「本当に強ぇじゃねぇか。」
ハヤト:「だろ?」
ガルデ:「さっきまでチビだと思ってた。」
ハヤト:「さっきまで!?」
ガルデが豪快に笑う。
ガルデ:「気に入った!」
そう言って。
思いっきりハヤトの頭を掴んだ。
わしゃわしゃと撫で回す。
ハヤト:「やめろ!」
ガルデ:「ははは!」
ガルデ:「このエロガキが!」
ハヤト:「初対面でなんで知ってるんだよ!?」
セレナとアスカが同時にため息をつく。
フローネが額を押さえる。
こうして。
勇者ハヤトは第五の仲間候補。
獣人戦士ガルデと出会ったのだった。




