↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
せっかく勇者に転生したのだから、さくっと魔王を倒してあとはハーレムを作りたい  作者: naomikoryo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/65

第9話 初めての敗北

聖都ルミナスを出発した翌日だった。

空気がおかしかった。

街道を行き交う人々の表情が暗い。

荷車を引く商人も。

旅人も。

誰もが落ち着かない様子だった。

ハヤト:「なんかあったのか?」

フローネ:「私も気になっていました。」

ちょうど通りかかった騎士に声をかける。

顔なじみらしい。

フローネ:「何かありましたか?」

騎士の表情が曇った。

騎士:「前線の砦が落ちた。」

フローネ:「何ですって?」

騎士:「四天王だ。」

騎士:「剣王バルガスが現れた。」

空気が凍った。


◆◇◆


その日の夕方。

四人は王国軍の前線基地へ辿り着いた。

しかし基地は悲惨だった。

負傷者だらけだった。

担架。

治療所。

破壊された武器。

戦場の匂いが残っている。

ハヤトも流石に笑えなかった。

ハヤト:「これ全部か……。」

アスカ:「ええ。」

セレナ:「やられたわね。」

一人の騎士団長が近づいてきた。

騎士団長:「聖女殿。」

騎士団長:「勇者殿。」

騎士団長:「来てくれたか。」

その顔には疲労が色濃く刻まれていた。


◆◇◆


作戦会議が始まった。

大きな地図。

砦の位置。

敵軍の進行経路。

だが問題は一つだった。

騎士団長:「バルガスだ。」

騎士団長:「あいつがいる限り防衛線は崩壊する。」

フローネ:「それほどですか。」

騎士団長:「化け物だ。」

戦場を知る人間ほど表情が暗い。

それだけで難敵なのが分かる。

ハヤトは腕を組んだ。

ハヤト:「倒せばいいんだろ?」

全員がこちらを見る。

ハヤト:「俺がやる。」

フローネ:「勇者様。」

ハヤト:「大丈夫だ。」

ハヤト:「ドラゴンも倒した。」

ハヤト:「四天王だろうが何だろうが。」

ハヤト:「やってやる。」

フローネは少し不安そうだった。

セレナも珍しく反論しない。

だがその目はどこか厳しい。


◆◇◆


翌朝。

戦場だった。

広い平原。

向かい合う王国軍と魔王軍。

緊張感が張り詰めている。

ハヤトは剣を握る。

隣にはフローネ。

後方にはセレナとアスカ。

そして。

敵軍の中央から一人の男が歩いてきた。

身長は二メートルを超える。

異様な威圧感。

巨大な黒剣。

鋭い眼光。

その男が現れた瞬間だけ周囲の空気が変わった。

フローネの表情が硬くなる。

セレナも息を飲む。

アスカですら黙った。

男が口を開く。

バルガス:「勇者か。」

低い声だった。

バルガス:「思ったより若いな。」

ハヤト:「お前が四天王か。」

バルガス:「そうだ。」

バルガス:「剣王バルガス。」

その名だけで周囲の兵士たちが震えた。


バルガスは剣を肩に担ぐ。

まるで散歩でもしているような気軽さだった。

バルガス:「来い。」

それだけだった。

宣言も。

威嚇もない。

ただ来いと言っただけ。

ハヤトは踏み込んだ。

一瞬だった。

最高速度。

全力。

今まで誰も反応できなかった速度だった。

ハヤト:(速い。)

(勝てる。)

(いける!)

剣を振り抜く。

直撃。

そう思った瞬間だった。

ガギィィン!!

衝撃。

何かに止められた。

ハヤトの剣は。

バルガスの剣に受け止められていた。

片手で。


ハヤト:「……え?」

初めてだった。

真正面から受け止められたのは。

バルガス:「軽い。」

ハヤト:「っ!!」

次の瞬間。

凄まじい衝撃。

ハヤトの身体が吹き飛んだ。

地面を転がる。

十メートル。

二十メートル。

ようやく止まる。

ハヤトは目を見開いた。

(なんだ今。)

(全然見えなかった。)


フローネが飛び出す。

フローネ:「勇者様!」

剣撃が閃く。

美しい連撃。

騎士団最強の技。

だが。

全部弾かれた。

バルガス:「遅い。」

ガン!!

フローネの身体が吹き飛ぶ。

地面を転がる。

ハヤトの顔色が変わった。

ハヤト:「フローネ!」


セレナが魔法を放つ。

巨大な火柱。

風刃。

雷撃。

一斉攻撃。

戦場そのものを焼き尽くすほどの魔法だった。

だが。

バルガスは歩いていた。

炎の中を。

何事もないように。

セレナ:「嘘でしょう……?」

バルガス:「魔法か。」

バルガス:「つまらん。」

剣が振られる。

衝撃波。

セレナが吹き飛んだ。

結界が砕ける。

血が飛ぶ。


アスカが聖術を放つ。

光が降り注ぐ。

拘束術式。

浄化術式。

ありったけを叩き込む。

それでも。

止まらない。

バルガス:「面倒だな。」

一歩。

それだけでアスカの術式が崩壊した。

アスカ:「っ……!」

膝をつく。


絶望だった。

誰も届かない。

誰も止められない。

ハヤトは立ち上がる。

何度も。

何度も。

何度も。

それでも勝てない。

実力差がありすぎた。

バルガス:「終わりか。」

ハヤト:「……。」

バルガス:「期待外れだ。」

その言葉は。

想像以上に重かった。


やがて。

バルガスは剣を肩へ担いだ。

バルガス:「興が冷めた。」

バルガス:「今日は帰る。」

騎士団長が叫ぶ。

騎士団長:「待て!」

だが無意味だった。

魔王軍が撤退を始める。

勝ったから。

ただそれだけの理由だった。


◆◇◆


夜。

野営地。

治療を受けたフローネは眠っていた。

セレナも意識を失っている。

アスカは祈りを捧げている。

ハヤトだけが外に出ていた。

焚き火を見つめる。

誰もいない。

静かな夜だった。

ハヤト:(勝てると思った。)

拳を握る。

震えていた。

ハヤト:(勇者だから。)

ハヤト:(チートだから。)

ハヤト:(楽勝だと思ってた。)

握った拳から血が滲む。

ハヤト:(なのに。)

ハヤト:(俺は。)

ハヤト:(誰も守れなかった。)


人生で初めてだった。

心の底から負けを認めたのは。

焚き火の向こうで火が揺れる。

その赤い光を見つめながら。

勇者ハヤトは初めて自信を失うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。