黒髪ロングにメイド服①
ふみのや、を出た美羽は、買ったばかりの本を抱えながら商店街を歩いていた。
「……閉店かぁ」
同じ言葉を繰り返す。
まだ実感がなかった。
いつもそこにあった場所。
新刊が出れば真っ先に行って、
店主の藤崎さんと少し話して、
本を買って帰る。
それが普通だった。
「普通って、なくなる時に気づくんだよねぇ」
自分で言って、少し寂しくなっていた……
そんな時だった。
「これ、お願いします」
「ん?」
美羽が声の方向に視線を向けると、
そこにメイド服姿の女性が立っていた。
黒髪のロングヘア。
派手ではないけれど、妙に落ち着いた雰囲気がある。
「え……メイド?」
思わず口に出てしまった。
「はい」
「わ、即答なんだ」
「本日オープンのお店のチラシです」
「メイドカフェってこと?」
「……よく外見から間違われますが」
「え、違うの?」
「はい、大いに違います」
差し出されたチラシを受け取る。
そこに書かれていた名前に、美羽の目が止まった。
Literature Café ARCADIA
「……アルカディア?」
その下には、
【文芸カフェ アルカディア】
と書かれている。
「文芸カフェ?」
聞き慣れない言葉だった。
「はい。本を読む場所です」
「本屋さんじゃなくて?」
「カフェです」
「図書館でもなく?」
「違います」
「じゃあ説明してっ」
女性は少し考えて説明した。
「本が好きな人が好きなように過ごす空間、をコンセプトにしたカフェですね」
美羽はチラシを見る。
店内の写真。
本棚。
テーブル。
コーヒーカップ。
そして、たくさんの本。
「へぇ……」
今日、本屋がなくなる話を聞いた。
そのすぐ後に、本のための新しい場所を知るなんて……
美羽には、なんだか不思議な感じがした。




