いざ、文芸部へ!②
黒眼鏡の男子は、美羽に近づいて口を開いた。
「えっと……部長の真壁悠斗だけど」
「おー、部長っぽい〜。よろしくっす!」
「あ、えと、よろしくお願いします」
悠斗はどこか申し訳なさそうな顔をした。
「その……先に説明しておきたいことがあるんだ」
「ん?」
「実は文芸部は、去年、漫研と統合されて……」
「うん」
「今年の春で最後の文芸部員が卒業した」
「うん?」
「なので現在、文芸部員は……」
一拍置いて、
「ゼロ」
「…………。」
美羽は思わず、天井を見上げた。
「えーーーっ、マジっすかぁ!?」
「ご、ごめん」
「いや、部長さんが謝ることじゃないんだけど……」
ど、どうする?
部室をぐるっと見回す。
漫画。
イラスト。
フィギュア。
たしかに、どう見てもここは漫研だ。
「文芸感、ゼロじゃん」
「ああ、返す言葉もない」
悠斗がしょんぼりする。
「あっ」
部屋の隅に積まれた段ボールが美羽の目に入った。
「ねぇ、あれって何?」
「えっと、あれは前の文芸部の本」
「本?」
「片付けようと思って、そのまま……」
美羽は近寄って箱をのぞく。
文庫本に、新書、ハードカバー。
思ったよりたくさんある。
「なんか、もったいなぁ」
「え?」
「だって、本が泣いてるじゃん」
「泣いて……るんだ?」
「うん、段ボールに閉じ込められてさー。これじゃ監禁だって」
美羽は箱をぽん、と叩く。
「せめて本棚に並べてあげなよ」
部長は段ボールと美羽を交互に見た。
「それは考えたこと、なかったな」
「……でしょ?」
美羽は笑ってバッグを肩に掛け直す。
「ほんじゃ、来週また来るわ〜」
「え?」
「その頃には本棚、ちゃんとしてると期待しとくねっ」
「いや、それは……」
悠斗が慌てる声を背中で聞きながら、美羽は手だけひらひら振る。
「部長さん、ファイトっす〜」
パタン、と扉が閉まると部室にさっきまでの静けさが戻った。
悠斗は段ボールを見つめ、小さくつぶやいた。
「本棚、これで足りる? わけないか……」




