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少女リックと月夜より現れし者  作者: はなさき
第三章 思いは心の中に
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二十二話 帰還

「そろそろだよ、イアン……」

 リックは背負っているイアンの遺体に声を掛けた。あれから、休みをとりながら、本部に向かい続けていた。たった独りで。幸い、他の敵に出くわすことなく、順調に進んでいるが、時々孤独感が襲ってくる。その度にリックは声を掛けている。

 それでも目が潤んでいる。身も心もぼろぼろになりながら、ただただ進んだ。

 本部まで残り数キロの所まで来ていることは確かだった。リックは決して諦めなかった。


 暫くすると、リックの視界に街の門番が見えた。先を急ぐと、聞き慣れた声が聞こえてきた。

「リック! おーい、こっちだぞ!」

 サンが大きな声で呼び掛けていた。よく見ると、ランスとジャックもいる。三人は街に帰ると、起こったことを報告したが、リックとイアンのことは報告しなかった。それでも二人のことが心配で、門番を申し出たのだ。

「兄さ、」

 ランスはリックの背にいるイアンに声を掛けようとした。だが、何かがおかしいと思い、表情を歪ませた。その様子をサンは感じ取った。

「ごめんなさい。イアンを助けられなかった。いや、本当は……」

「大丈夫。兄さんはリックに悲しんでほしくないと思う。ほら、」

 ランスはリックの様子を見て、直ぐに察した。イアンを降ろすように手を差し伸べた。リックは涙を拭うと、イアンを降ろし、大人から普段の少女の姿に戻った。

 ランスは兄の遺体を背負う。それから、その場にいるサン、ジャック、リックとともに門をくぐった。


「リック、生きていたのか!」

「リックちゃん!」

 街の皆がリックを見て驚いた。彼らには彼女はいなくなり、生きていないだろうと知らされていた。知っているのはランス、サン、ジャックの三人だけだ。

 リックの姿を見ると、喜んだ。リックは苦笑いしながら手を振って応えた。リックたちはそのまま本部の招集場所へと足を運んだ。


 本部に着くと、リックの帰還を知らされたのか、部隊が集まっていた。彼らは二人・・を見て、驚いた。

 リックは長い道のりからの帰還で疲れていたため、代わりにランスが事情を話した。

 司令官のゼウが目を丸くして驚いていた。

「予想していたが、まさか、イアンが半ヴァンパイアになっていたとはな」

「私が、イアンを……」

 ゼウがリックの頭を優しく撫でる。部隊の一員であるが、まだ十代の少女に無理をさせてしまったとゼウは思った。

「辛かっただろ。イアンの葬儀が始まったら呼ぶから少し休んどけ。サン、リックを頼む」

「はい」

 だが、リックは首を横に振ってその場から離れようとしない。一緒にいたいのが本音だった。

「ほら、休んどかないと、イアンが悲しむぞ。ランス、あとは宜しく頼む」

「は、はい」

 ゼウはリックを軽々と担ぎ、ランスに言葉を残して出て行ってしまった。

「やだやだやだ!」

 リックは駄々をこねるようにゼウの上で喚くが、ゼウは動じなかった。それもそのはず。まず体格差が大いにあった。リックの気持ちを知っている三人はどうすることも出来ず、連れていかれるリックを見送った。


 辺りが静まると、ランスが辺りにいる部隊を見渡す。

「これからのことを話し合おう。まずは兄さんの葬儀の準備をしなくては」

 ランスは真剣な表情で話を切り出した。

次話更新は11月22日(月)の予定です。

次話で完結です。宜しくお願いします。

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