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少女リックと月夜より現れし者  作者: はなさき
第三章 思いは心の中に
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二十話 届かない願い

 リックは涙を拭った。イアンが自我を失い、成れの果ての姿に、おまけに半ヴァンパイアを含む、数十体のヴァンパイアに囲まれた状況になってしまった。

 覚悟を決めなければ、自分がやられてしまうかもしれないと思う他なかった。彼女は深い大きな息を吐くと、周りのヴァンパイアたちをきっと睨みつけた。

「まだ立ってられるとは、やはり御前、狩る者か?」

 十分前程のイアンと全く違う姿、言葉がリックを嘲笑う。

「自分のこと覚えてないの? 私が小さい頃、世話してくれたんだよ」

「知らん」

 リックの言葉を一言で済ますイアン。そして、再び襲い掛かった。リックはなんとか避け切ろうとするが、頬に切り傷が出来たのか出血した。

 変わらない状況にリックは杖を取り出し、振るった。すると、箒が現れた。リックは直ぐに呪文のような言葉を発した。次の瞬間、徐々にリックの身体が大人のように大きく伸びた。

 少女ではなく、立派な大人の姿になった。

「変わったところで力に差はない」

「それはやってみなきゃ分からないでしょ」

 会話をした直後、二人は姿を消した。素早い動きで両者譲らない攻撃を繰り返す。だが、リックを攻撃するのはイアンだけではない。周りのヴァンパイアたちもリックを襲おうと攻撃を始めた。

 リックは怯むことなく、瞬時に対応しヴァンパイアたちを次々と倒していく。あっという間に、敵はイアンただ一人だけになった。

「所詮こんなものだ。俺はこうはいかないぞ」

「私を甘く見ないでよ!」

 二人が言葉を交わすと、同時に姿を消した。二人は瞬間移動のように動き回る。それほど二人の力が強い。一瞬でも気を抜くと攻撃に当たってしまうほど瞬発力。攻撃を止めることはない。

 その中でリックは願っていた。イアンの自我が戻って、いつものイアンの姿になることを。本当は心の何処かで信じたかったのかもしれない。それもあってか、攻撃を何とか防いで時間稼ぎをしていた。

 まだかまだかと待っていた時、イアンの力が増し始めた。それでも攻撃を食い止めた。

「イアン、お願い」

「何を願ってるか分からないが、これで終わりだ!」

 イアンは更に力を込めた。すると、リックは押し出され、投げ飛ばされた。直ぐに立ち上がり、次の攻撃をかわした。

「かわすだけじゃ何も変わらないぞ」

「そんなの分かってる」

 リックはやるしかないと思った。イアンを真っ直ぐ見つめ、目を瞑った。次の瞬間、リックは消えた。僅か数秒でイアンの前に現れ、強烈な攻撃をした。

「ごめん、イアン……」

 直後、イアンは倒れた。月明かりに照らされながら、リックは涙を流した。

次話更新は11月15日(月)の予定です。

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