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少女リックと月夜より現れし者  作者: はなさき
第三章 思いは心の中に
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十九話 覚悟を決める時

 リックとイアンが目的地に向かってから数時間。突然、イアンは抱えていたリックを降ろした。リックはイアンの様子を見て心配する。

「大丈夫?」

 イアンはとても辛そうに息を荒げていた。急いでいたのもあるが、どうもそれだけではないらしい。

 不意にリックはイアンの背中に手を伸ばし、摩ろうとした。瞬間、イアンがリックの手を払い除けた。彼女はびくっと驚いた。

「俺に、触らないで、くれ」

 イアンの眼は紅くなっていた。だが、自我はまだ保っているようだった。リックは願いは届かなかったかと思い、悲しい顔を浮かべた。

「悪い。限界が来そうなんだ。俺から、離れてくれないかい?」

 言葉を口にするイアンの変化は徐々に表れていった。鋭い牙が口元から見え始めている。それでも、リックは離れようとしない。

「お願いだ。また、リックを、襲うかも、しれないんだ」

「でも……」

 イアンの言葉にリックは戸惑った。ここを離れてしまったら、と考えてしまう彼女だが、何もできないのが事実だった。

「そういえば、云って、なかった。俺が、目指していた、場所は、着いた。リックは、ここから、離れたほうが、いい」

 イアンは言葉を発すると、空を見上げた。暗闇に浮かぶ月がくっきりと見え、光を照らしている。目の前には広い湖が広がっている。今は夜のため、暗いが昼間は明るい場所。此処は珍しく太陽の光が強く当たる場所。

 はるか昔、伝えられていた。月が水面を照らし、太陽がまぶしく照らす場所が有る、と。それが此処だと二人は知っていた。

「やっぱり、此処だったんだね。もしかして、イアンここで、」

「分かって、いるなら、俺の気持ちも、分かって、くれるかい?」

 リックは首を横に振る。頭で分かっていても、言う通りには従いたくなかった。此処はヴァンパイアが求めている場所であり、彼らが恐れられている場所でもあるからだ。それは、半ヴァンパイアでも同じだった。

 今の時間帯から、ヴァンパイアが好む場所。イアンは一人で此処に来る半ヴァンパイアを含め、ヴァンパイアを殲滅(せんめつ)しようと考えていた。それは何を意味するのか。半ヴァンパイアであるイアンもまたその影響を受けることになる。それまで分かっているリックはイアンから離れたくなかった。


「リック、これは、命令だ。行ってくれ、ないかい?」

 それでも、リックは首を横に振る。リックの目から自然と涙が零れる。イアンはリックを睨んだ。

「行け!」

「嫌だ!」

 二人は大声を張り上げた。その間にもイアンの変化は増していく。尖った耳、声に掠れまでも。

「俺を、殺める、覚悟が、ないだろ?」

 イアンの息は依然として荒い。リックに問い掛けるも途切れ途切れになってしまっている。

「イアン……」

 リックは目に涙を浮かべた顔で思わず声を漏らす。

「早く、行って、くれ。うっ、」

 リックに訴えるように声を震わせた直後、苦しむように突然胸を抑えたイアン。リックは直ぐに苦しむイアンに近寄るが、再びイアンに振り払われてしまう。イアンは唸り出し、紅い眼でリックを強く睨みつけた。

 瞬間、リックに襲い掛かった。リックは避け切った。

「イアン、目を覚まして!」

 大きな声で叫ぶが、イアンは上体を揺すぶって笑っている。そんな姿を見たことがないリックは退いてしまうほど驚いた。


「御前は誰だ? 取り敢えず、旨そうだな」

 突如、イアンが放った言葉は今まで聞いたこともない口調、声を発した。辺りを見渡したリックが異様な空気を感じた。今まで存在しなかった半ヴァンパイアを含む、ヴァンパイアが現れたのだ。その数、数十体ほどだ。

 リックは人間、当然囲まれてしまう。一変した状況にリックは固唾を呑んだ。次の瞬間、イアンを含む数十体がリックに襲い掛かった。

次話更新は11月12日(金)の予定です。

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