十一話 新たな敵、現る
リックはイアンの場所から離れて、サンとランスの場所へと足早に向かっていた。そう遠くない場所に二人はいるはずだと思いながら辺りを見渡し急いだ。然し、まるで姿を消してしまったかのような静けさだ。リックは一度立ち止まり、目を閉じ耳を澄ましてみる。僅かだが、声が聞こえた。リックはこっちだ、と独り言を呟いて走り出した。
数分後、リックはある場所に着いた。其処は物陰で遠くじゃ分からない場所だった。サンとランスがある男と闘っていた。
「よう、あの時の餓鬼じゃねえか。イアンは何処だ? あの程度でやられるわけねえよな。あ?」
男はイアンを攻撃したアレクだった。アレクはリックに問い掛けると、強く睨みつけた。リックは怯むことなく、睨み返す。それから、周りの状況を見渡す。所々に血痕があるが、誰のかはまだ分かりにくかった。
「おい、余所見してんじゃねえよ! おっと」
アレクはリックに突っかかろうと姿を一瞬消した。リックの目の前に来ると思ったが、ランスが反応しリックを守った。
「敵は此奴だけだ。此奴が兄さんを攻撃したのか?」
「あ? イアンの弟か? なら、始末しねえとな」
ランスの問い掛けに答えたのはリックではなく、アレクだ。アレクはランスがイアンの兄弟だと知ると、形相を変えて再び突っかかろうとした。次の瞬間、リックの目の前のアレクとランスから血がぽたぽたと飛び散った。リックは声を上げそうになるが、よく見れば気付いた。
「やるじゃねえか。流石、イアンの弟だけあるぜ」
血が流れているのはアレクだけだった。ランスからは血が垂れていない。それが兄よりも強い事を物語っていた。不意にリックの前にサンが現れた。サンはリックが怪我をしていないかを確かめた。
「おい、其奴は御前に任せる。俺は他に敵が来た時の為にリックを守る」
「了解」
それを合図にランスは動き出した。アレクは一瞬驚くが、止まることなく動きに追いついていく。ランスは笑っていた。
「おいおい、笑ってるのも今のうちだぜ!」
アレクは一撃を振るう。だが、ランスは撃ち流す。まるで、何処に攻撃が来るのか分かっているように。
「兄さんと同じだと思わないでもらいたいね!」
今度はランスが攻撃を繰り出した。攻撃はアレクに命中した。アレクは倒れ込んだ。
「やったか?」
誰もがそう思った。直後、アレクは立ち上がった。確かにランスの攻撃は当たった。ランスは眉を吊り上げ、守りの体勢に入った。
「まだまだ、だ」
次の瞬間、アレクの身体から血飛沫が散った。誰もが時が止まったかのように驚いた。アレクは直ぐに吐血し、倒れた。何が起こったのか、直ぐに分かった。アレクの背後から人影が現れた。
「イアンを捕まえるのにどれだけ時間が掛かってる! 御前はもう用済みだ」
男が放った言葉はアレクに届くことはなかった。それを見ていた三人は身構えた。だが、男は三人をじっと見るだけでその場を去っていった。サンとランスは男が去った後も体勢を崩さない。一方、リックは足が竦んで地面に座り込んでしまった。
「あの男はいったい誰だ? 俺たちだけじゃやられてたかもな」
男が戻ってこないと分かると、サンが第一声を発した。その声は若干震えていた。強いサンでさえも、恐怖を感じるほど男はオーラを纏っていた。
それから三人はイアンの元に戻る為、慎重に歩を進めた。




