十話 化け物の正体
ランスがイアンと口論して外に出て行って数十分。サンも後を追うように外に出ていったのだが、二人は一向に戻ってこない。イアンと一緒にいたリックは違和感を感じていた。それはイアンも同じだった。
「ねえ、何かおかしいよね。私、行ってくる」
リックは立ち上がり、その場から離れようとしたその時、イアンに腕を掴まれた。イアンは無言で首を横に振る。だが、リックは振り切って背を向けた。一度振り返り、イアンをじっと見た。
「イアン一人じゃ私が不安だから、見守りとしてパンプちゃん置いておくから」
いつの間にかリックは杖を持ち、軽く振ると南瓜のお化けのパンプが現れた。パンプは離れていくリックを見て笑った。
「リック、頑張るでっす」
声を掛けたパンプはリックが居なくなるまで見送った。イアンは突然の事で頭が追いついていない。口をあんぐりと開けて、パンプをじっと見る。イアンの視線に気付いたパンプは得意げに笑った。
「あの時のリックとは大違いでっす。驚くでっす」
イアンはまだパンプをじっと見ている。その視線が気になったのか、パンプは怯んだ。暫くして、沈黙が流れた。
「……ジャックだろ? 何故、こんな姿に為ってるんだ? 何時からだ?」
イアンの言葉で唐突に沈黙が解かれた。パンプはビクッと驚き、ゆっくりと視線をイアンに向けた。イアンは全てを見透かすような視線を向けたまま、動かない。実際は怪我の負傷で未だに動けない状態だった。
「な、何を言ってるんで、ですか! パンプで、です」
「パンプはいない。そもそも南瓜の化け物は存在しない」
動揺するパンプにイアンは鋭い視線を向けた。パンプは俯いた。次の瞬間、パンプは姿を変えた。南瓜のお化けから人間の姿、青年の姿に為ったのだ。イアンは驚かず落ち着いている。まるで、予想していたかのように。
「何故、分かったんですか?」
パンプ、いや、ジャックはイアンに問い詰めるように投げかけた。イアンは呆れて溜め息を吐いた。リックが小さい頃、イアンの目を盗んではジャックがリックを連れ去って遊びに行かせていた。当時はバレていないと思っていたジャックだが、見透かされているようにイアンに簡単に見つかってしまうことが多かった。
「何とか云ってくださいよ!」
無言のイアンにジャックは大きな声を上げた。呆れたように再び溜め息を吐くイアン。
「あのな、ジャックは行動が分かりやすい。あの時のままなんだ。此れでも分からないだろう?」
ジャックはきょとんとした表情でイアンを見た。まさか、自分の行動が分かりやすいとは思っていなかったのだ。あの時から。然し、よくよく考えて見ると、自分が分かりやすかったのかと思い始めた。
「それよりもリック達が気になる。俺も、行ったほうが、」
イアンは立ち上がろうとしたが、ジャックに止められた。ジャックは不機嫌な顔をした。
「駄目です。リックに怒られます。どうしてイアンを見てなかったのかって。まだ子どもでも、怒ると恐いんですよ。誰に似たんだか……」
ジャックは言葉を口にしながら、ふとイアンを見やった。イアンは自分の事だと分かっていたが、口にしなかった。
「もう暫く待っていましょう。リックなら大丈夫です。それに、あの御二方がいますから」
イアンは不安になりながらもジャックと待ち、少しばかり話をした。リックが小さい頃の話も交えて。




