ロヴァーナの聖獣
リンファは妹に宿るモノの正体を知った。
「・・・聖獣」
それはリンファにとって、未知の存在。本来ならば、出会う事は無かった。
だが、運命という物は優しくは無い。
リンファは出会うのだ。大いなる神秘の存在と。それは必然となってしまった。
(私には、何が出来る?)
出来る事など有るのだろうか。何の力も無い彼女に出来る事は・・・
リンファはロヴァーナを連れてミリアム王国に帰る事を決めた。それは、最善でもなければ、最悪でもない選択。それ以外に選択肢を見出せなかったリンファの苦渋の選択であった。解決出来ない道である。
しかし、ロヴァーナの中に居る召喚獣は異質だったのだ。まだ誕生していない。それは、タマゴだった。
召喚獣というものは必ず成体で召喚される。そういう存在だった筈である。
(だが、ロヴァーナのはタマゴだ)
だからこそ、どうするか悩んだのだった。誰が召喚したかも分からない、異質な存在。そんな物を抱えるロヴァーナをセイラムは受け入れないだろう。そして、野放しにも出来ない筈だ。
ロヴァーナの未来は暗い。だからこそ、リンファは迷っている。
(ロヴァーナをこのまま連れて帰れば、セイラムはどうする?)
分かり切っていた。厄介な存在を抱えるロヴァーナは不要だ。必ず、彼女を葬りに来るだろう。
それが彼らの当り前なのだから。リンファはどうしようもない感情に振り回される。
(なぜ、ロヴァーナなんだ?)
リンファの疑問に応える者は無かった。彼女に中に疑問が降り積もる。
ただ、消えずに残るだけ。
それは、不安に姿を変えていく。
ミリアムへの帰路の中、シューの様子が変だった。イオンの肩の上で明らかにロヴァーナを気にしている。まさに、警戒。こんな成りでも、シューは確かに召喚獣なのだ。リンファは苦笑を漏らす。
(信じてない訳では無いが・・・そうだと思い起こさせる事をされると、やはり驚いてしまうな)
だが、警戒している様子には威厳など無かった。元々毛玉であるシューが更に毛玉らしくなっている。毛を逆立てているが、怖くは無いのだ。
リンファは愛らしいシューに僅かながら余裕を取り戻した。
イオンは威嚇している自身の召喚獣をたまに撫でている。その時だけはシューも威嚇を止めた。
(可愛いものだな。召喚獣は恐ろしい存在だと聞いた事があるが・・・やはり個体差はあるのか)
一見すると小動物だ。しかし、実際には普通の人間では扱えない生き物である。
彼女の中で召喚獣の輪郭が変化した。今までは大いなる力を持った、魔法を使えない者には縁の無い存在だった。だが、その認識はもう彼女の中には無い。




