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恋愛禁止の会社で、恋愛監査官に恋をしました。  作者: naomikoryo


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11/15

第11話「カレーライスと、危険な昼休み」

 午前十一時五十分。

 足立春樹は、パソコンの画面を見つめながら、ようやく午前中の仕事に区切りをつけた。

 来週の提案会議で使用する資料は、どうにか予定どおり仕上がりそうだった。

 売上推移のグラフも修正したし、顧客から指摘されていたシステム導入後の費用対効果についても、数字を整理しておいた。

 珍しく順調な午前中だった。

 もっとも、仕事以外の部分については、まるで順調ではなかったのだが。


(……何なんだよ、あのプリン騒動は。)


 春樹は椅子の背もたれに体を預けた。

 昨日、美紀にプリンを買ってきたことから始まった騒動は、どういうわけか今日になっても収まる気配がない。

 おまけに、昨夜コンビニで偶然会った小泉美奈のことまで、神崎勇人に知られてしまった。

 それも、どうやら話が少しおかしくなっている。

 春樹はスマートフォンを取り出し、先ほど勇人から届いたメッセージを読み返した。


『つまり、お前が小泉主任にプリンを二個買ってやったわけじゃないんだな?』

『違います。小泉さんが自分で買ったんです。』

『本当に?』

『本当です!』

『じゃあ、二人でコンビニデートしたって話は?』

『偶然会っただけです!』

『なるほど。偶然を装った出会いか。』

『もういいです!』


 春樹は画面を閉じた。


(あの人、営業の仕事でもこれくらい粘り強く聞き込みしてるのかな……。)


 いや、確かに勇人は営業成績がいい。

 だからこそ課長になったのだろう。

 しかし、部下でもない自分の恋愛事情に、そこまで熱心になる必要があるのだろうか。

 春樹がそんなことを考えていると、社内チャットの通知が表示された。

 相良美紀からだった。


『先輩! もうすぐお昼ですよ!』

『分かってるよ。』

『忘れてませんよね?』

『カレーだろ。』

『さすが! ちゃんと覚えてる!』

『俺が食べたいって言ったんだけど。』

『じゃあ、12時5分に正面玄関で待ち合わせしましょう!』

『了解。』


 春樹は返信を終えると、パソコンの画面を切り替えた。

 すると、ちょうど隣の席に座っていた同僚が声をかけてきた。


「足立さん、今日のお昼って外ですか?」

「うん。ちょっとカレー食べに。」

「相良さんと?」


 春樹はゆっくりと顔を向けた。


「……何で知ってるの?」

「いや、さっき営業部の人が話してたんで。」

「……。」

「いいですねぇ。若い女の子とランチなんて。」

「お前なぁ……。」

「大丈夫ですよ。誰にも言いませんから。」

「もう知ってるだろ、みんな!」


 春樹は思わず声を上げた。

 同僚は笑いながら肩をすくめた。


「いやぁ、社内恋愛禁止って言われると、逆にみんな敏感になるんですかね。」

「敏感っていうか、暇なんだろ。」

「まあ、そうかもしれませんね。」


 春樹はため息をついた。

 会社の中には、約三百人もの社員が働いている。

 その全員が他人の恋愛に興味を持っているわけではないだろう。

 しかし、少なくともここ数日の様子を見る限り、噂話を楽しむ社員はかなり多そうだった。


(……こんな会社で本当に社内恋愛なんかしたら、面倒くさいだろうな。)


 そう思いながら、春樹は席を立った。


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