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社畜天使長ルメルの審判  作者: 三色団子
第一章

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19/22

神様の影法師③

短め


 俺には分かる。


 ルチアは今、極めて冷静に周囲の状況を観察することに努めているが、それは表面上の話であって、実際はすぐにでも戦闘を始めようとしている。


 ルチアとは浅からぬ関係だ。性格はそこそこ理解しているつもりである。


 返答次第では最悪、俺とルチアが戦うことになる。


 まあ、それはそれで別に構わないわけだけど。


「どういう状況かって聞いてんだけど?」


 誰も何も答えようとしないことを察してか、明らかに俺の方を見て問う。


「さあ? 俺も知らん」


 悲しいかな、これが事実であり真実だった。


 俺とて説明できるならしている。


 だがしかし、説明できる内容としては「いきなり召喚されてそこのフードちゃんに襲い掛かられたから撃退した」以上のことがない。


 つまり何も知らないのと同じだ。


 ルチアが求めているのは状況説明と同時に、なぜそそのような状況になったのかということだろう。それは俺も知らないし知りたい。


 というかルチアは関係者っぽいし、むしろフードちゃんに直接訊いてみて欲しいのだが。


 あ、俺が串刺しにしてるから話せそうにないのかな?


「僭越ながら、私の方からご説明申し上げてもよろしいでしょうか」


 アルカがすかさず手を挙げ言葉を発した。


 うんうん、こういう時に物怖じしない性格は頼りになるね。


 でも君、さっき俺が聞いたときは分かりませんって言ってなかった?


「起こった出来事の説明でよければ私にも可能です」


「……あんた心読まれてるわよ」


「いいよ心くらい。鍵とかかかってないし」


「鍵どころか扉が取れてるじゃない」


「誰かさんがよく壊しにくるからね」


「まあいいわ。あなた名前は」


「アルカと申します」


「アルカ、発言を許可するわ。説明なさい」


 許可が下りて、アルカが口を開いた。


 でもなんだってルチアの許可がいるんだろうね。


 ともあれ、アルカの説明の内容は次の通りだった。



・魂葬業務について新人に教えるために外回りをしていた。


・区画境界付近にてレギオンが吹き飛んできた。


・こちら側で警報は鳴っておらず、他区画からの侵入と推定。


・放置するわけにもいかないので魂葬するべく戦闘を開始。


・直後、フードちゃんが乱入してくる。


・フードちゃんがレギオンへ攻撃、捕食(魂葬?)する。


・フードちゃんがこちらにも攻撃してくる。


・応戦するもネネが拘束され、止むおえず俺が召喚される。


・俺がフードちゃんをボコボコにする。



 ふーん。これ、フードちゃんが全面的に悪くね?


 あ、ルチアの額に青筋が立ってる。


 無造作にフードちゃんの背から大剣が引き抜かれた。切っ先をこちらに向けて投げ返され、大剣をキャッチし消滅させる。


 あっぶねぇ。お前それ、やって良いことと悪いことがあるだろ。


 ルチアはなおも無言でフードちゃんの拘束を引きちぎり、首根っこを掴みながら乱暴に起立させた。


「クレア。何か申し開きがあるなら聞くわよ」


 睨みながら低く平淡な声で告げるルチアの問いに、フードちゃんもといクレアは目を泳がせた。


 何が恥ずかしいのか頬を赤らめ、伏し目がちにルチアの耳元へ顔を近づけると、俺たちにはほとんど聞こえないくらいの声で一言「おいしかった」と言った。


 うん。聞き間違いかな。おいしかった。美味しかった?


「アルカ」


「私にもそう聞こえましたよ」


「ライム読みは禁止だぜ」


「ライムを絞ればさっぱりとしたお味に?」


「知らないよ。食べたことないし」


 俺たちでさえ呆気に取られて現実逃避的な会話をしてしまう。


 別にライム読みでもなんでもないしね。


 ましてルチアなんかは、あまりの衝撃に天を仰いでいた。


「あなたはもう帰りなさい。これは『命令』よ」


 聞き分けが良いやら悪いやら。クレアはこくりと頷くと、コートの上にそれぞれ白と黒の翼を生やして、ものすごい勢いで飛び去って行った。


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