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メドゥーサ(ナーガ)を倒したら二人の子どもができました④

途中で視点が切り替わりますのでご承知おきください。


 周囲を見回すと、親メドゥーサのいたところに二人の子どもが横たわっているのを発見しました。先ほどまではいなかったはずです。


「大丈夫ですか」


 近付き軽く肩をゆすってみます。


「んん」


 オレンジ色の髪の毛をした少女らしき子どもがゆっくりと目を開け、


「おばさんだあれ?」

「お姉さんです」

「ご、ごべんなひゃい」


 まったく失礼ですね。年齢はともかく、見た目は二十代半ば、いえ前半と言ってもいいはずです。


 素直に謝罪したことに免じて、引っ張り伸ばした両頬を離してあげました。


「ん」


 どうやら今のでもう一人の子も目を覚ましたみたいです。


「あ! アンちゃんおはよう!」


「メイちゃん、お、おはよぅ」


 どうやらオレンジ髪の方がメイ、今しがた目を覚ました藍色の髪の方がアンという名前らしいです。


 はて。名前があるということは、どこぞの天使なのでしょうか。


「おーい」


 遠くの方からメスガキが駆け寄ってきました。


「お前どこ行ってたんだよ。探しても見つからなかったし」


「あら心配してくれたんですか?」


「ち、ちげーし」


「それとも一人で不安だったとか?」


「んなわけ。って、なにこいつら」


 気付くのが遅いですね。節穴なのは目だけにしておきなさい。


「私も知りません」


「はあ?」


 訝しむ視線が送られてきますが、気付いたらそこにいたのですから仕方がないでしょう。実際、私とて混乱しているのです。


「少し、失礼します」


 こういう時は魂の履歴書を確認するのが手っ取り早いというもの。


 早速、一応の断りをいれつつ、二人の髪の毛を一本ずつ取って履歴書を作成しました。


「これは……」


「なんだよ」


「白紙です」


「そんなわけ……、マジか」


 大マジです。白紙、なんてあり得るんですか?


 いえ目の前にこうしてある以上、存在していることは間違いないのですが。


 もしかして私のやり方が間違えていたり、あるいはなんらかの制約によって履歴書の作成ができないとか?


 二人の方を見ると、きょとんとした顔をしていて、目が合うと小さく笑みを返してきました。ネネと違って可愛いですね。思わず頭を撫でてしまいました。


「ルメル様に指示を仰ぎましょう」


「ま、そうだな」


 このまま勝手に魂葬してしまうわけにもいきませんし、かといってここに置いていくわけにもいきません。


 私に判断できない案件であるならば、上司に丸投げしてしまえばいいのです。


 ということで、さっさと転移して事務所に帰りましょうか。


 ふと左手の人差し指を見ると、代行章の指輪がはまってありました。


 不思議ですね。これだけで心が安らぐのですから。


 そうして私は二人の手を取り、事務所へと転移しました。


 以上が、事のあらましです。




◇ルメル視点◇




「という感じです」


「なるほどね」


 なるほどね、じゃないんだが?


 アルカが戦ったメドゥーサはおそらく、土地や環境系のレギオンなのだろう。


 土地の魂は往々にして生物のそれより自我はかなり希薄でレギオン化するのは珍しい部類だが、ありえない話ではない。


 内部に別の魂の自我を核として持つことで、相互認知による存在の固定と維持が可能になる。今回はメドゥーサがその役割を担っていたと解釈できる。


 話を聞く限り、メドゥーサではなくナーガだと思うけどね。


 とまあ、そんなことは置いといて。


 臭うなぁ。厄介事の臭いがぷんぷんする。


 なんだよ。魂葬したら子どもが二人でてきましたって。


 俺、結構長いこと天使やってるけどさ、見たことも聞いたこともないよ?


 やだなぁ。


 面倒くさいなぁ。


 絶対に関わりたくないなぁ。


 だがしかし、目の前にはその当事者たちがいて、あまつさえ拾ってきてしまったというのだから、消極的であっても腹をくくるしかない。


 ああもうほら、なんかアルカの後ろから顔だけ出して興味あり気にこちらをじっと見ている。


 ゆるいウェーブのかかったオレンジ髪の方と目が合って、ニコリと微笑まれた。ぱっつん前髪で目を隠した藍色の髪の方は、おどおどしている。


 はぁ。まずは現状確認からか。


「とりあえず髪の毛一本ちょうだい」


「どうぞ」


 手際よく二人から髪の毛を抜いたアルカが俺に手渡した。


「ラベルテ」


 唱えて作った魂の履歴書はやはり、先ほどの説明にあった通り白紙である。


 やはり、と思わず天を仰いでしまう。


「あの」


 アルカが表情に浅く影を落として尋ねてきた。


「ルメル様は白紙になってる理由を知っているんですか?」


「知ってるよ」


「できれば教えていただきたいのですが」


「そうだね。別に隠してるわけじゃないし」


 魂の履歴書が白紙というのは、簡単に言うと、作られたあるいは生み出されたばかりの無垢な魂ということだ。


 ほとんどの魂は現界と天界を行き来する過程で、徐々にその格を上げていくわけだが、当然ながら生まれたばかりの魂というのも存在している。


 この無垢な魂は神によってのみ作成され、また輪廻を辿ることなく、神によってのみ直接的に現界へと送られるのだ。


 もちろん世界に存在する魂の量は厳密にコントロールされているため、むやみやたらに新たな魂が作られるなんてことは普通ない。


 つまり何が言いたいかって?


 あの自己中心的な神どもが、またぞろ何かやらかしているらしいということがこれで確定したわけである。


 そしてその渦中に俺たちが入ってしまった。


 いやもしかしたら、ここが中心なのかもしれない。


 あーやだやだ。見なかったことに、ああそう、なりませんか。


「そういうことですか。それで、その」


「うん?」


「この子たちはどうなるのでしょうか」


「あー、んー、どうしようね」


 実際問題、対応が難しいんだよなぁ。


 一番無難なのがその辺に捨てて放置することなんだけど。


 すでに関わってしまった以上、その選択は取りづらいし。


 実質的には取れる選択肢って一つしかないんだよね。


「もしかして、地獄に落とすんですか」


「しないよそんな意味ないこと」


「意味がない?」


「地獄って別にゴミ箱なわけじゃないから」


 何か勘違いしているかもしれないが、地獄の役割は魂の漂白にある。


 現界や天界で培い溜めてきた経験や履歴、記録や記憶などを強制的に剥奪し、それを糧として無垢なる魂に近しい状態に昇華させる場所なのだ。


 まあ、昇華するに至るだけの糧がないと自我のない魂になるんだけどね。


 そんなわけで、地獄とはむしろイメージとしては洗濯機に近かったりする。


「では」


「うちで面倒見るしかないね」


「そうですか」


 アルカは平静を装っているが、声色には若干の安堵が滲んでいた。


 そんなに子ども好きだったっけ?


 とまれ面倒を見ると決めた以上はできる限りのことをしないとね。


 ひとまずは見習い天使として働いてもらのがいいかな。


 魂の格は二人ともネネより高いし、そこだけで比較するなら即戦力だ。


 ……でもまあ一応、形式的にではあるけれど、本人の意思も確認しておくか。


「あー、メイとアンだっけ」


「はい! メイです!」


「……はぃ」


「うちで働いてもらいたいんだけど、どうする?」


「なにをすればいいの?」


「業務内容はそこの秘書メイドとメスガキに聞いて」


「はーい! よろしくね、ひしょメイドにメスガキ」


「アルカさんと呼ぶように」


「先輩をつけろでこすけ」


「えへへ、はーい!」


 元気があっていいね。もう一人の方は挙動不審だけど、まあ頑張れ。


 同意も得たので履歴書に天使として雇用する判を押し、それらを燃やした。


「じゃあ二人の面倒を見るの頼んだよ」


「おまかせください」


 アンから消え入りそうな声で「よろしくおねがいします」と聞こえてきた。


 さて、お世話と業務は任せるとして、ちょっと調べものをしないとな。


 気乗りはしないけど、久しぶりにあいつを呼び出すか。


~~~~~テンプレート~~~~~

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